ぴしゃり
鮮血が床に散る。
目の前の貴方は返り血にその白い肌を染めて
不敵に、笑う。
「……手応えなかたな」
「フェイが強すぎるんだよ」
世界に3冊しかないという古文書を盗みに入ったある富豪の邸宅。
はいつもの通りフェイタンと組んで、使用人も、客人も、誰区別する事無く鮮やかな手つきで殺めて行った。
その手に握られていたのは、小柄なには不釣合いな程巨大な『戦斧』。
「がそれ振り回してくれたお陰でワタシあまり出番なかたね」
「…だって最近こういう派手な仕事なかったんだもん」
彼女の念能力の一つ、『戦女神の武器倉庫(ラジカルウェポン)』。
自分の目で見て手で触れ、構造を完璧に理解した物を実体化させる、具現化系に分類される能力。
元がオーラである為、の手の内にある限り重さは一切感じない。
その為、1mはあろうかという巨大な斧をは軽々と振り回していたのだ。
その能力も手伝ってか、5分もすれば屋敷にいた者は全て息絶え、は頬に血が付いていた事に気付いた。
もちろん、彼女の血ではなく、先ほど殺めた此処の屋敷にいた誰かの物だ。
その血をゆっくりと指先でなぞりながら、具現化していた斧を消した。
血の、生ぬるく鉄臭い感触が好きなのだとは思う。
そして返り血を受ける事は、死に逝く者へのせめてもの礼儀だとも。
命を奪っておきながらなんて身勝手な、と思う事もあるが、所詮この世は弱肉強食。
殺られる前に殺れ。それがクロロとフェイタンに教えられた事だった。
「…ま、これでワタシ達の仕事は終わりね。」
「そだね」
「……また洗濯が面倒臭いな?」
「フェイタンもね」
くすくすと、まるで地獄絵図のような光景の中笑い合う。
にも、フェイタンにも、辺りに散らばる肉塊は目に入らない。
ただ、目の前に確かに存在する愛しい者をその目に映し、生きている事を喜び合う。
常に死が付きまとう非日常。
明日死ぬかもしれない。
そんな漠然とした不安ですら、フェイタンが傍に居れば拭われてしまう。
はとことんフェイタンに溺れているな、と思った。
「でも、返り血に染まるフェイタンも素敵だよ?」
「あぁ…それはも同じね」
もフェイタンも黒い衣服を好んで身に付けている。
番いの死神、という表現が一番しっくり来るのだろう。
事実、彼らの姿をその目に映して生き残れた者など居ないのだから。
「そう?」
「あぁ。の白い肌には血の紅がよく映えるね。とても綺麗よ。」
「ふふ。ありがと、フェイタン」
「それに……やはりワタシは戦てるを見てるのが好きよ」
その能力はワタシしか知らないから、ワタシだけしか見れない姿だしな。
そう付け加えて、フェイタンはの頬に付いた血を拭った。
「フェイタン」
「その能力、ワタシ以外に見せてはダメよ。」
「うん」
「それを知てるのは、ワタシだけでいいね」
「うん」
頬を撫でる感触に、は目を細めた。
「……そろそろ皆付く頃だな。移動するよ」
「ん。行こう。」
振り向く事はせず、ただ前を走る背中を見つめて。
風に乗って運ばれてくる血の匂いは貴方の香り
貴方の姿に酔いしれる
(わたしだけにみせるそのひょうじょう)
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クロロ全然書いてない…(死
大人しいヒロインよりこういう子の方が書きやすいからなんだろうか……
ごめん、団長。
2006/11/26 テトラ