デンデを見ているといつも思う事があるんだ。
………それは叶う事のないただの絵空事なんだけれど。
「ピッコロさん」
「何だ」
今日も今日とて、はピッコロの許を訪れていた。
修行場で瞑想をしていたピッコロに、いつものようにが魔閃光を打ち込む。
そしてその後はにとっては「恋人同士」の
ピッコロにとっては「クソ生意気な弟子を抹殺する」鬼ごっこが幕を開ける。
これはここ最近の日常茶飯事だ。
ピッコロが落ち着く頃には辺り一面砂漠と化している。
元は大きな岩や草木が生い茂る草原が、わずか1時間たらずでそうなってしまうのだ。
そしてお互い落ち着くと(ピッコロは隙あらばの勢いだが)背と背を合わせて座り込む。
これもお決まりのパターンで。
だがしかし今日のはいくらか違っていたようで
ピッコロの背に凭れる訳でもなく、ピッコロの前に立っていた。
当のピッコロは何か嫌な予感がすると思いつつも逃げるに逃げられず(逃げたらどうなるか身にしみて判っているからだ)
仕方なく、近くの川で汲んで来た水を口にしていた。
「私、ピッコロさんの子供がほしいです」
ブッ、とピッコロが飲んでいた水を盛大に噴き出した。
いきなり何を酔狂な事を言い出すんだとでも言いたげな目でを見れば、は尚も真剣な眼差しで。
「ピッコロさんと私の。子供ほしいんです」
「莫迦も休み休み言え。オレには生殖機能はないと知ってるだろうが。」
「でも、ほしいんですよ」
「知るか」
何時もの事ながら冷たく突き放されたは、今日はいくらかへこんだ様子で。
頭2つ分は身長差があるピッコロを、涙の溜まった大きな瞳で睨みつけた。
「ピッコロさんはそれでいいかもしれませんけど」
「な、なんだ」
「私にとっては辛いんですよ。
好きになった人は宇宙人……此処までは百歩譲りましょう。
でもその人は雌雄同体で…ブルマやチチさんは宇宙人と結婚してても子供がいるのに。
私は愛した男の子供を産むどころか…体を繋げる事も出来ないなんて」
尚も涙を流しながら続けるに(もちろん演技だ)ピッコロは更に戸惑う。
そう言われてもこれは仕方のない事だ。どう足掻こうが、自分ではに子を宿す事は出来やしない。
それならばいっそ自分ではなく、他の男に惚れていればよかったのではないか。
そう思っていても、口には出せない。言ってしまえば、は更に泣くだろうから。
「………悲しいですよねぇ」
「………」
ふぅ、と溜息を吐いて青空を見上げるに、どう声を掛けていいのか判らなかった。
大体からして、男女の営みを必要とせずに繁殖する種族なのだから
彼女の言う スキ だとか アイシテル だとかの感情も判らない。
だから泣いているをどう宥めれば良いのか、ピッコロには全く判らなかった
ただ、を放って何処かへ行かない辺りは、彼なりにの事を想ってはいる様だが
(以前のピッコロであれば、さっさと帰るか目障りだと叱咤しただろうから)
「………泣くんじゃない」
「……ピッコロさんがそんな事言うなんて…明日は槍でも降りますかね…」
「…(口の減らない女だ)貴様が泣いていると気色が悪い。」
「これは半分ピッコロさんの所為でもあるんですよ……」
ぐすぐす、と鼻をすするの頭に、ピッコロの大きな手が触れる。
は顔を上げ、驚いた様な表情を浮かべてピッコロを見た。
すぐに逸らされたその顔にはいつものような険しい表情は全くなかった。
むしろ、微かではあるが赤面していたようにも見えた。
「何時ものように…笑っていろ」
顔を逸らしたままそれだけ言って、ピッコロは黙り込んだ。
の耳はそれをきっちりと拾ったようで、笑顔を浮かべて背後からピッコロに飛びついた。
何時もならば振り払われる所だが、今日はその腕はピッコロの腰に回った。
はマントごとピッコロを抱き締め、マントに顔を埋めていた。
「ピッコロさん、愛してますよ」
「……フン」
その体温に心地よさを感じながら、ピッコロは青く澄み渡った空を見上げた。
静かにじわりと沁みゆく感情
(いまはまだきづかなくても)
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王道ですよねこのネタって(笑
不完全燃焼もアレなので、以下オマケ(笑
「………さん…まさかとは思うけど」
「なぁに悟飯」
「ドラゴンボール集めて神龍にお願いする事って」
「もちろん!ピッコロさんに生殖能力を!」
「(……こりゃまた一波乱ありそうだ)」
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今度こそ終わりw
ピッコロさんは振り回されてればいいんです(笑
2006/11/03 弖虎