「トリックオアトリート!」

……今オレの目の前にいるのは誰だ。
そう聞きたくなったオレの心境を誰か察してくれ。いつもならばタークスの制服である真っ黒なスーツをきちんと律儀に着こなしているはずのは、何故か今日は全身フェイクファーで誂えられたそれなりに露出度が高いツーピースを着ていた。頭には黒猫の耳、そして尻尾がの背後で揺れていた。

「……何、のつもりだ?
「セフィロスさん今日はハロウィンですよ。お菓子下さい。くれないとイタズラぶっこきます」
「…お前一体いくつだ?年齢を考えろみっともない」
「…相変わらずノリ悪いですねぇセフィロスさん……」

はふぅとため息を吐く。オレにどうしろというんだ。第一オレは甘いものを好まないので菓子なんて持ち合わせがないのだからやろうにもやれないのだ。ただオレの目の前で期待と羨望に満ち満ちた目でオレを見上げるは愛用のマテリアに手を掛けてオレの返答を待っている。いくらオレとはいえ、全力で魔法を撃ち込まれてはたまったものではないのだが、何度も言う様にオレは菓子なんぞ持ち歩かない。ザックスやジェネシスあたりの所に行ったほうがよかったのではないかと思えば既に行った後らしい。が手に提げているカボチャの形をした小さなバッグは菓子で埋め尽くされていた。

「…オレのところに来るのが間違いだろう。オレは菓子なんて持っていないぞ」
「そうですか…持ってないんですか……」
「あぁ、持っていないな」

「判りました。じゃあセフィロスさんはイタズラご希望と言う事で」

「待てお前何だそのマテリアは」
「何ってルーファウス副社長から頂いたてきのわざマテリアです。仕事の合間に色々ラーニングしてきたんですよ私だっていつまでもへっぽこじゃありませんからね……という訳で“かえるのうた”っ!」

かーえーるーのーうーたーがー♪
そんな歌が聞こえてきたのは空耳だと思いたかった。社内にいるからと油断して全ての装備を外していた事をオレは物凄く後悔した。煙に包まれたと思えば目の前にいたはずのが巨大化していた。…否、オレがかえるになってしまったらしい。装備を外していたとはいえ如きにトードを掛けられてしまうとは情けない、と思った時にはもう遅く、はオレを見下ろして大爆笑していた。

「あはははははセフィロスさんがかえるになった!あはははははは!」
「ゲロゲーロ!ゲロッゲロゲーロ!(!貴様ふざけるな今すぐ戻せ!)」
「何言ってるのかわかりませーん♪」
「ゲッゲロゲーロゲロッゲロゲローゲロ!(正宗の錆にするぞ貴様今すぐ戻せ!)」
「あはははははは!よーしザックス呼んでこよっと!」
「ゲロッ?!ゲッゲローゲーロ!(何っ?!戻せ!今すぐ戻せーー!)」

はかえるになったままのオレをブリーフィングルームに放置したままあろう事かドアを丁寧にロックまでして出て行ってしまった。…頼むからザックスが来る前にアンジールかジェネシスが戻ってきてくれと思いながらオレは机の下に潜り込んで、人間に戻ったらあの莫迦猫を正宗の錆にしてやろうかと憎しみを募らせつつ、あの猫かぶりも甚だしい黒猫を拾ってしまったことを少しばかり後悔した。























(或いは黒猫の逆襲)