「アンジールさんジェネシスさんトリックオアトリートです!お菓子くれないといたずらしますよー!」

そんなことを言いながらブリーフィングルームに乱入してきたのは最近セフィロスがスラムで拾ってきたという名前の新人タークスだった。いつもと違う所といえばタークスの制服ではなくやけに肌を露出した服(恐らく黒猫の仮装だと思う)を着て耳と尻尾をつけている事くらいだろうか。ついでに言えばのその手にはジャックオーランタンを模した手提げが下げられていた。

「……そうか今日はハロウィンか」
「はい」
「来ると思っていたよ。ほら、オレとアンジールから」
「わーさすがジェネシスさん!有難う御座います!」

さりげなくオレの名前も付け足して、ジェネシスは何処に隠していたんだか両手一杯の菓子をが持っていた手提げに入れた。今日は10月31日、オレに馴染みはなかったがハロウィンという祭りらしい。ジェネシスが言うには子供が仮装をして大人のところを回り菓子を貰う祭りだという。…は確か19歳じゃなかったかと思ったが言ってしまえばを怒らせるハメになるので言えなかった。以前にサンダーを落とされたザックスが再起不能に近い状態になってしまったのを思い出したからだ。

のことだからきっと来るだろうと思ってたよ」
「ふふふふふ、判ってますねぇジェネシスさん」
「君は面白い子だね。オレを唸らせるくらい鋭い考察をするかと思えばこんなもので喜ぶ幼い一面もある」
「それって褒めてるんですか貶してるんですか?」
「褒めているつもりなんだが」

とジェネシスはLOVELESS好きという共通点があるので二人はよく休憩室やここブリーフィングルームで考察話をしている。その時の二人はとても真剣でLOVELESSを読んだ事がないオレにはさっぱり理解できないが、LOVELESSを読んだ事があるセフィロス曰くとても難しい内容の解釈を話し合っているらしい。

「アンジールさんも有難う御座いました、これで暫くおやつには困りません」
「そ、そうか。よかったな」
「はい!あ、それはそうとセフィロスさんは今どこに?」
「セフィロスなら今総括に呼ばれてるから戻るまで暫くかかると思うが」
「そうですか…じゃあまた後で来る事にします。」
「あぁ、そうしてくれ」

は手提げにたっぷりと入った菓子を上機嫌で眺めると鼻歌を歌いながらブリーフィングルームを出た。後に残されたオレはセフィロスはまさか菓子なんて用意していないだろうと思いこの後親友の身に起こるであろう災難を察しつつもの背を見送る事しか出来なかった(あんなに生き生きとした表情のを見たのはこれが初めてだったからだ)

「…セフィロスには言わないでおこうか」
「何をだ」
「今日がハロウィンでが菓子を貰って歩いている事をだ」
「………ジェネシス、お前楽しんでいないか」
「今日くらいはいいだろ。さっきがかえるのうたを練習しているのを見かけたんだ」
「……ジェネシス、」
「セフィロスの事だから菓子なんて用意していないだろうし、は菓子をくれなければきっとセフィロスに向かってかえるのうたを歌うと思うんだが、アンジールはどう思う?」
「……オレも同じ考えだ」

そしてオレの隣で楽しそうに黒い笑みを浮かべる親友を止められないと悟ったオレはもう一人の親友に向かって心の中で謝罪した。














猫の悪














便


(お菓子くれなきゃかえるにするぞ!)