『姉さん』 そう言って笑う君が好きでした。そう、君がこの世界から消えてしまって、心を壊し言葉を失くす程深く深く。決して言えはしなかったけれど、それでも私は、私を姉と呼び慕い、縋る君を確かに 愛して いました。 『僕は、僕はね。たとえ姉さんが僕を嫌いでも、僕は姉さんだけを、この世界の誰よりも愛しているよ』 そう言って私を抱き締めた君の腕は、思念体だなんて思えない程とても暖かかったのを覚えています。そうして私をその腕に閉じ込めたまま、まるで壊れたテープレコーダーのように何度も何度も愛を囁く君が、いつの間にか他の何にも代え難い存在になっていたと、君という存在の全てが、私がこの世界に在り続ける意義であり意味であったという事に気付いたのは、君がほしに還ってしまった後だったけれど。 『姉さん、』 ねぇカダージュ。君は今の私を見たら悲しんでくれるでしょうか。私の為に、その綺麗な翠色の双眸から涙を流して、悲しんでくれるでしょうか。 『だから姉さん、姉さんも僕をあいしてよ』 カダージュ。叶うのならもう一度、たった一瞬だけでもいいから、君に 逢いたい です。 「…は相変わらず、か」 「……えぇ。」 「…オレは間違っていたのかな」 「…クラウド…」 「にはいつも笑っていて欲しかったんだ。オレはの笑顔が好きだった。護りたかった。それなのに、オレは…っ」 は今日も、窓辺に置かれた椅子に座ったまま灰色の空を眺めていた。今こうしてオレの目の前で空を見上げるが、オレ達みんなが好きだったあの向日葵のような明るい笑顔を浮かべて綺麗なソプラノを響かせる事はもうないのだろうか。何度後悔したってしきれない。オレはかつての仲間の想い人を、この手にかけたんだ。 「……クラウド、クラウドは、悪くないよ」 「でもティファ、オレは…っオレはから、言葉も感情も奪ったんだ。カダージュをこの手に掛けて、オレはから全てを奪ってしまった。セフィロスがオレ達からエアリスを奪ったように、オレはからカダージュを、」 「クラウド」 「…っなぁ、オレはどうしたらいい?どうしたらはまた笑ってくれる?どうしたらまた、あの綺麗な声を聞かせてくれる?」 「…私達には、待つことしか出来ないよ…ねぇクラウド、ライフストリームの中にはエアリスもいるわ。だからきっと大丈夫、エアリスはきっと、ライフストリームの中からを見てる」 「……ッ」 エアリス。もしも君が、星を巡るライフストリームの中からオレ達を見守ってくれているというのなら、どうか。どうかお願いだ。の笑顔を、声を、感情を、どうか戻してやってくれ。が愛したあの男を、どうかもう一度彼女の許へ戻してくれ。の笑顔を、声を、感情を、戻してやってくれ。 「エアリス、」 君を母と呼び、を姉と呼んだ、オレの弟を。どうかどうか、もう一度だけ。 「そうよ、きっとエアリスは、を助けてくれる。私は、そう信じてる」 彼女の許へと、還してやってくれ。 (泡のように消えないで) |
言わないで。