「カダージュの目は、綺麗だね」 姉さんが僕の髪をかき上げながら、そんな事を言った。僕は、あの人と同じこの翠色の瞳が嫌いだった。それなのに、姉さんは僕の嫌いなこの瞳の色を綺麗だと言って笑うんだ(姉さんのその笑顔の方が綺麗だと思ったけど、なんだか恥ずかしくて言えなかった) 「姉さん?」 「カダージュの目、綺麗な翠色。」 「……姉さんの目だって、綺麗じゃないか」 「私の目の色なんて、ありふれてるでしょ?カダージュの目は、綺麗な翠色ね」 僕の頬にその細くて白い指を滑らせながら笑う姉さんはとても綺麗だった(月の光を受けて姉さんの茶色い髪がきらきら光っていた)僕は、僕の基である彼と同じこの翠の瞳も、銀の髪も、あまり好きじゃない。それなのに姉さんは僕のこの瞳も髪も綺麗だと言って笑うんだ。 「髪の毛も、綺麗。こうやって月明かりの下にいると、お星様みたい」 「……姉さん、どうしたの。いつもそんな事言わないのに」 「カダージュは、カダージュだよ」 姉さんは本当に僕の事をよく判っている。僕が彼と同じこの翠の目と銀の髪を嫌いで、僕は僕として確かに今こうして姉さんの隣に存在しているのに、僕の基は彼の遺志で、僕は本当は何なんだろうっていつも思っていることも、姉さんには言ってないけど姉さんはきっとそんな事だってとっくに知っているんだ(だって姉さんは僕らのことなんて全部全部お見通しなんだから) 「…、姉 さん」 「カダージュ。私は、カダージュが好きなの。貴方達の基であるセフィロスは、きらい」 「姉さ、」 「カダージュはカダージュ。セフィロスじゃ、ない」 姉さんは強い口調と優しい声でそう言うと、僕をその細い腕の中に抱き締めた(僕が姉さんに抱き締められるのが好きで抱き締められるととても安心するというのを姉さんはよく知っている)僕は姉さんの背に手を回して、僕を抱き締める細い身体を抱き返した。姉さんはくすくすと笑っていた。 「ねえ、カダージュ。私は、カダージュが、大好きだよ」 「……うん」 「私も一人ぼっちだったから、カダージュが不安だっていうのはよく判るよ。…でも今の私にはカダージュがいる。カダージュには私がいる。それじゃだめかな?」 姉さんは僕の髪を撫でながらそう言って、また綺麗に笑った。駄目な訳がない。僕は姉さんが僕の隣にいてくれるなら他に何も望まない。 「カダージュ」 「…姉さん」 「私はね、カダージュがこうして私の隣に還ってきてくれた事が嬉しいんだよ」 「それは、僕だって同じだよ」 「カダージュが私を望んだ。それは間違いなくカダージュの意思でしょ?」 「……そうだよ。僕はずっと、姉さんを見てた。僕がいなくなって、壊れてしまった姉さんをずっとずっと、」 「貴方は自分で、自分の意思で、此処に来ることを望んだの。セフィロスの意思なんて関係ない、違う?」 「……違わ、ない。僕は、僕がこうしたかったから姉さんの隣に還ってきた、」 「ほらね。カダージュはカダージュよ。」 姉さんは綺麗に笑って、僕を僕だと言ってくれた。たとえ僕がセフィロスの遺志から生まれた思念体だとしても、姉さんが僕を僕だと言ってくれるならそれでもいい。僕にとっての全ては姉さんだから、姉さんが僕を僕だと言ってくれるのならこの世界の誰もが僕を否定したって、僕は僕でいられるような気がした。姉さんは変わらずに、優しい笑顔を浮かべて僕を見ていた。 (狂おしい程の愛を君に、) |
ずっと私を映してて