「…政宗様」
「……あ、あぁ」
「…見事、ですな」
「………」

政宗はの破天荒極まりない戦いっぷりを目の当たりにして放心状態だった。つい先日まできらびやかな着物で着飾っていた娘が鎧も兜も、身を護る防具を一切身に付けずに一番槍という大役を見事に果たしてしまったのだから無理もない。小十郎はあっけに取られる主君の横顔を見て思わず笑いを溢す。遠く、敵陣より見事一番槍を務め挙げたが鈍器を肩に担ぎ上げ手を振るのが見えた。

「ままむねー!こじゅー!」

その肩に鈍器を担いでいなければ、纏う着物が血にまみれていなければ、村娘と言って差し支えない。戦場には凡そ似合わぬの背後に残党が刀を構えている姿が小十郎の目に入り慌ててに向かい叫ぼうとした瞬間、は背後を振り向かないままに担いだ鈍器で残党を薙ぎ払う。兜が見事に砕け力なくその場に倒れた残党を遠目に見た小十郎は安堵の溜め息を吐いた。いらぬ心配だったようだ。

「It's Crazy…ありえねぇ」

敵陣の惨状を目の当たりにした政宗がぽつりと呟く。彼の視界には満面の笑みでこちらに駆け寄るの姿が映る。その笑顔は今しがた大量虐殺といって差し支えない戦いっぷりを見せた者と同一人物とは到底思えない程、無邪気でまた明るかった(それが余計に政宗を憔悴させていた。まさか鎧兜を身に付けず此処までやり遂げるとは思っていなかったからだ)

「ままむね!どうよ!」
「…あ、あぁ…Very、niceだ」
「っしゃ!」

鈍器を下ろし政宗の隣に腰を下ろすを見た小十郎は、初めて見る主君の間抜けた表情に僅かばかりの笑みを浮かべ二人を見る。独眼竜に、鬼神と呼ぶに相応しい破天荒極まりない娘。なかなか似合いではないか、と。

殿」
「お、こじゅー!私、!見事一番槍を果たして参りましたっ!」
「ええ、お見事でした」
「へへへ」

照れたように笑みを浮かべ政宗を見上げる。政宗はたった今目の当たりにしたの暴れっぷりにいくらか驚きつつ、を見る。

「ままむね?」
「…、お前確かにLadyなんて柄じゃあねぇな」
「何よ唐突にそんな失礼な…」
「ま、強ぇ女は嫌いじゃねぇ。」
「……あ、っそ」

お互い頬を僅かに赤く染めそっぽを向く。小十郎は微笑ましい二人を見て伊達の将来はどうやら安泰のようだと心の中で頷いた(確かに伊達の将来は安泰であろうが政宗の将来は些か不安ではある。何せあの破天荒ぶり、恐妻になることは目に見えて明らかだ)










初恋ボンジュール


(否定はされたが、間違いない。)










なんかもう色々とお世話になりすぎているので続編をまたも勝手に捧げました