ー。明日暇ぁ?』
『暇だけど、なんで?』
『みんなで買い物行くんだけど一緒にどうかと思って』
『あ、行く行く』


平和だった もう二度と帰れないあの世界

『でー。って好きな男子いないの?』
『い、いないって!バイト忙しくてそんな暇ないもん!』
『もったいないなー黙ってれば可愛いのに』
『一言余計だよ!』


何の変化もない ただ平凡すぎた日常

『うおおお安い!安いよ!』
『そりゃバーゲン最終日だしね…でもその代わりいいのが残ってないっていう』
『しょうがないよねそればっかりは』
『だねー…テストさえなきゃ初日に来たのになあ』


戦争なんて海の向こうの遠い国の出来事で 血の臭いなんて日常からは程遠くて

『ヤマ外れた…!どうしよう赤点確定なんだけど!』
『マジメに勉強しないからでしょ。』
『だって連ドラがさ!いいとこだったからさ!』
『補習がんば!』


懐かしくないと言えば嘘になるけど それでも私が選んだのは



「……何似合わねぇ表情してやがる」
「…まさむね」
「ったく…主役が途中で抜けてどうすんだよ。」
「ごめんね…探しに来てくれたの?」
「酔っ払ったから夜風に当たろうと思っただけだ」
「そっか」

それでも私が選んだのは、戦国乱世のこの世界、彼の隣だ。彼…政宗が作る平和な世界を見たくて、少しだけでも力になりたくて残る事を選んだ。初めて戦場に出た日は、血と臓物の臭いに耐え切れなくて何度も吐いた。初めて人を殺めた日は、数日間悪夢に魘された。刃が肉を切り裂く感触が何日経っても手から離れなくて、何度も何度も吐いて泣いて、それでも立ち止まる事だけはしなかった。立ち止まれば全てが終わってしまう気がしたから。例え傷ついても、それは私が奪ったいのちへの戒めだ。この痛みは、斬られた腕から流れた血は。

「……ねえ政宗」
「何だ?」
「……私の手、」

まだ、穢れてないかなあ。
月に向かって掌をかざしてそう言ったの表情はどこか遠くを見ているようだった。大方、元の世界の事を考えてるんだろうって事は安易に予想が付いた。空を見上げるの横顔は今にも消えちまいそうに儚い。いくら場数を踏んだとはいえ、コイツは元々戦になんて無縁の世界にいたんだから無理もねえ。ただ、笑顔を忘れてない事が救いだ。

「…穢れてなんかいねぇよ」
「……そ、か」
「お前が」

どれだけ返り血を浴びても、その手で人間を殺めてもな。お前が俺を否定しねぇように俺だってお前を否定したりなんかしねぇよ。だから前だけ見てりゃいい。俺の天下をその目で見やがれ。
そう言って政宗は私をその腕に閉じ込めた。今日は飲みすぎたのかもしれない。頭はくらくらするし、さっきから心臓はやけに早く鼓動を刻んでいるし頬も熱い。政宗の腕の中で身じろぎ一つ、政宗は手に力を篭めた。

「まさ「俺は」

本当ならに戦なんてさせたくねぇんだ。戦場になんて出ずに城で待っててもらいてぇんだ、本当は。血の臭いなんざ知らずに、俺の隣で笑っていて欲しかった。

「…まさ、むね」
「だがお前はそれを良しとしなかった。刀なんて持った事もねぇのに俺の為に戦って、知らなくてよかった血の臭いを知っちまった。」
「……」
「それでも、俺の隣にいてくれんならいいと思ってた」
「……政宗?」
「…っお前は莫迦だ。何で俺を庇って手傷なんて負いやがった。」

政宗の手が腕に巻かれた包帯をなぞった。深く斬られてないから大丈夫だと言えば政宗は包帯をなぞっていた手を背に回して、私はまた政宗の腕の中に閉じ込められた。

「これはね政宗、戒めなんだよ」
「…戒め?」
「わたしが、うばったいのちをね。わすれちゃいけないって、戒め」
「……」
「私も、政宗も、みんな生きて帰ってきた。生きてさえいれば傷は癒える。違う?」
「…そう、だが…、俺は、」
「どれだけ傷ついてもいいの、私は。奪った命の重さ、忘れちゃいけないから」

だから、傷ついても大丈夫。奪った命も背負って私は歩き続けるから。
そう言って微笑むの笑顔は凛として気高かった。歩き続けて、俺と一緒に世界の果てを見るのだと言う。が俺の隣に居続けてくれるのならそう遠くない未来の話なのかもしれないと漠然と思いながら、背を抱く腕に力を篭めた。

















忘却の



(二度と戻れない平和な日々にさよならを)










本編ここまで言ってないのに書いちゃったよ。
一応恋仲になってからの話ですが苦いですねー……甘い夢が書けるようになりたいよ。
名前変換少ない上伊達語がないっていう。