私はあなたが好きだから、あなたの為にならなんだってするよ。
だって私の世界はあなただから、あなたしかいないから。
それは私が命を賭けてあなたを護るってことなのよ、ティキ。
あなたが死ぬときはね、私の腕の中じゃなきゃ赦さない。
私の全て、魂までがあなたの物であるように、あなたの全ても私の物だから。わかる?

そう言いながら、オレの姫君はオレを抱き締めた。
オレはただ、呆然と姫に抱き締められるだけだ。
オレのなかのノアが死んで、オレはただの人間になっちまって
それでも姫はオレを離そうとはしなかった。
今のオレは姫を護る騎士になんかなれやしないのに
それでも姫はオレを離さないと言うんだ。


「姫、オレは」

「ティキ、何も言わないでいい」

「姫は、ただの人間になっちまったオレでも愛してくれるのか」

「……ばかね、何を弱気になってるの。
 私が貴方を嫌いになるなんてありえないわ」

「だって姫、オレはもう」


姫はその白く細い指でオレの唇に触れて声を制すと
ただ微笑んでオレの髪を撫でた。
今のオレには姫のそばにいる資格なんてないのに
それでも姫はオレを愛していると言う。
姫、姫、あなたは、


「…私はね、ティキ」


たとえあなたがただの人間に戻ってしまったとしても
私はあなただけを愛して生きるのよ。
誓ったじゃない、私はあなたを、あなたは私を捜すって。
沢山の人間の中からあなたは私をみつけてくれたわ
家族としてでなく、騎士としての義務でもなく
ただ私だけをみつめたその瞳でみつけてくれた。


「……ひ、め」

「ティキ、ノアを失っても私の騎士は貴方だけよ」

「…ひめ、おれは」

「……ティキ、私の名前を呼んでよ、私はもう姫なんかじゃないわ」

「……ひめ、だめだ、オレは貴女を護る騎士でいなきゃいけなかった、」

「……ティキ、私は姫なんかじゃないよ、ねぇ」

「…それでも、おれは…っ」


貴女を、貴女だけを護る騎士でいたかったんだ、姫。
名前を忘れた訳じゃない
口にしてしまったら誓いが崩れてしまいそうで怖かっただけなんだ。
なぁ姫、姫はこんなオレでも愛してくれるのか?


「ばかね、私には7000年前からずっとティキだけだったわ」

「…姫、」

「名前、呼んで?ティキ」


「……、」


姫の耳許で、実に7000年振りに姫の名前を呼んだ。
愛してると言ったオレには微笑ってオレを強く強く抱き締めた。
あぁ、そうか。オレは、ただ。
姫としてのじゃなくて、ただのひとりの女としてのを護りたかったんだ。
そう気付いたってオレのノアはもういないけれど、それでもは笑うから、


「ティキ、私も愛してるわ」

「あぁ、」


だからオレは、もう少しだけ彼女の為に足掻いてみようと思ったんだ。
















(枷を壊して、二人で手を取り歩き出す)










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デスペラードマイダーリン用書き下ろし夢
前世でノア一族の姫君だったさんと
姫を守る騎士だったティキの関係を勝手に捏造ぶっこいたブツ

シリアスになりきれてない感が否めない、117夜のちょこっと後のハナシ