ねぇティキ、わたしは貴方に会えてよかったと思うわ。
----もうお別れだけど、私後悔はしていないから。
今オレの目の前にいる女はそう言って悲しそうな顔で笑った。
オレがノアだって事を言うべきか言わざるべきか迷ってたんだ、本当は。
オレがこいつの…のキレイな髪にイノセンスを見つけたのはもうだいぶ前の事だった。
その頃はまだはあいつらに見つかってなんかいなくて
でもイノセンスを壊してしまえばまでぶっ壊れてしまうワケで
オレはどうしてものイノセンスを壊すなんて事はできなかった。
それぐらい愛してたんだ。ノアの殺人衝動を押さえ込めるくらい。
「……行っちまうのか」
「うん。なんかね、拒否はできないんだって。
なんだっけな、神に選ばれた存在、なんだって」
「…だからって、、」
「だってさ、私があそこに行けば母さんは助かるのよ」
の母親は重い病気を抱えてた。
こんな辺鄙な貧しい村で治療なんてできやしないくらいの重い病を。
は母親の為に必死で働いて、それでも病気はよくならなくて
薬代としての借金だけがどんどん増えてって。
オレがなんとかしてやれりゃあ一番よかったんだろうけど
黒いオレに気付いて欲しくはなかったんだ。
オレがノアだってこと、一般人のこいつは知らなくていいって思ってた。
そう、こいつはまだイノセンスの存在には気付いてなくて
もちろん使う事なんて出来やしなかったからオレはどこかで安心していたのかもしれない。
----あいつらに見つかる事はねぇだろうって。
「……そう、か」
「私が、黒の教団にエクソシストとして行けば、母さんの病気は治るの」
「…それでいいのか、」
「…そうでもしなきゃ、母さんは死んじゃうもの」
なんて卑怯なんだ、あいつらは。
金を、の母親の命を盾にして
あいつらはの平凡な人生を奪おうとしてる。
そりゃあその原因を作ってるのはオレらな訳だから
オレがどうこう言える立場でもないんだけど
それでもやっぱりやり方が汚すぎる。
命を盾に、エゴに満ちた戦争に引きずり込もうだなんて。
こんな…虫の一匹も殺せないような優しいを。
「……なぁ、オレは」
「うん、私も。離れてたって変わらない。
私はティキが好きだし、エクソシストになってもそれは、」
「……違うんだ、違うんだよ、オレは、おれは」
「?ティキ?」
オレは、お前の、敵なんだ。
次にお前と会う時は、オレはきっとお前を殺さなきゃいけないんだ、。
そうやって言ってしまえればいくらか楽になるんだろうけど
オレの口からは言えなかった
言えばきっとは泣くだろうから
オレはの泣き顔を見たくなくて、言わなかった。
----は不思議そうな顔でオレを見て、そして笑った。
オレが大好きな、向日葵みたいな明るい笑顔で。
……あぁ、、オレは、おれは。
「……、好きだよ」
「………うん、わたしも」
「……死ぬ、な、よ」
「…死なないよ。ティキが待っててくれるなら」
「……おれは、オレは…っ」
は小さくて白くて少しだけ荒れた手でオレの頬を撫でた。
あぁ、オレ泣いてんのか。
はオレの涙をぬぐって、少しだけ笑顔を曇らせた。
----いつも笑ってて欲しいと思ってたの笑顔を曇らせてるのはオレなのか?
それとも、母親なのか、あいつらなのか、オレはばかだから判らない。
でも頬を撫でるの手は暖かかったから、オレはそれに少しだけ救われたのかもしれない。
「…ティキ、心配しないで。」
「…、、おれは、」
「……もう、行くね?私、絶対生きて帰ってくるから」
「、」
「……そのときは、やくそく、まもってね」
は悲しそうな顔で笑って、小さな小さなかばんを持ってオレに背を向けた。
荷物なんてほとんどない、その身ひとつでは今戦争に飛び込もうとしてる。
今この場で止めなければ、はオレの敵になってしまう。
----オレが、を、殺さなければならなくなってしまうかもしれない。
なぁ、行くなよ、オレはお前を殺せないんだ、。
「……っ、おれは、」
「ティキ、また、ね」
は泣きながら笑ってオレに手を振った。
村の入り口で、見慣れた白い服の男達がを待ってた。
オレはただ、黙っての背を見送る事しかできなかった。
----もしものイノセンスが体内に宿っていなければ
あいつらが言うところの装備型だったなら
迷わずぶっ壊してオレらのところへ連れて帰っただろう。
でものイノセンスはの体内にあって
あいつらがいうところの寄生型とかいうやつで、
イノセンスをぶっ壊しちまえばまでぶっ壊れてしまうから
オレはのイノセンスを壊すなんてできなかった。
もしもイノセンスがある場所が手や足なら、迷わずぶっ壊してた。
たとえ四肢が欠けてもはだし、不完全な彼女は逆に美しく見えるだろう。
でものイノセンスはたぶん彼女の脳にあって
それはつまりイノセンスをぶっ壊せば自身もぶっ壊れてしまうって事で
オレは壊す事ができなくて、結果と敵対する事になってしまって
それはつまり、オレがを殺さなければいけないってことで、
「……、おれはおまえをころすなんてできないよ、」
それでも、アクマや他のノアの手にかかってなんて死んで欲しくはないから
それならせめて、せめて、
「……、おれは…っ」
せめて守り通した君への嘘を抱えて
君が黒いオレに気付かない事を祈って、
「……おれはおまえを、あいしてたんだ、……っ」
せめて、せめて最期はオレの腕の中で終わらせてくれ
守り通した君への嘘
(あぁ、君が神の使徒でなかったらきっとおれは、)
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デスペラードマイダーリン用書き下ろし!
一応補足
白ティキ夢でした。というか灰色?(謎)
要は、白ティキが恋した女の子がじつはイノセンスの適合者で
そのイノセンスはちゃんの脳にあって
イノセンスを壊しちゃえばちゃんまで壊れちゃうから
ティキはちゃんのイノセンスを壊せなかったんですね。
裏設定として
脳に寄生したイノセンスで髪の毛を武器に戦う女の子
って設定があります。
判りやすいたとえで言うと
烈火の炎のメノウちゃんみたいな(わかりづらいです)。
で、最終的にティキはぶっこわれます(おまえ!)。
他の家族やアクマの手に掛かって死ぬくらいなら自分の手で殺すって決心して
続くか続かないか微妙なとこでおわりますね!
もしかしたら続編書くかもしれません。なんか消化不良だ。
シリアスだとどうしても狂愛に傾くうちのティキ…
どうしたらいいかな(しねばいいとおもいます)