「ティ キ、ねぇ、ティキ、」

夢だ。これは悪い夢なんだ。だってそうでしょう?全てを拒絶できる快楽のノアであり私の半身でもあるあなたが、どうして血まみれで倒れているの?ねぇ、どうして?私以外のものならば何だって通過できるんじゃ、なかったの?ねぇティキ、あなたはどうして、どうしてそんな血だまりの中に倒れているの?ねぇ、ティキ

「……、」
「ティキ!」
「悪 い、イノ セン、ス、に、」
「ま、って、今、」

抱き起こしたティキの体はとてもとても冷たくて、でもティキの体にまとわり付く紅はそれに比例するかのように生ぬるくてそれはいつも私が戦場で浴びるあの紅と同じ物。彼の紅だけは見たくないと思っていたのにそれがまさかこんな形で現実になるなんて。

「や くそく、守ってやれな、っ悪ィ、お れは、」
「てぃき、だめ、しゃべっちゃだめよ、おねがいだからしゃべらないで」
「はなせ、よ、ドレス、台  無し、だ、ぞ」
「そんなのどうでもいいよ、てぃき、てぃき、ねぇやだよしなないでよなんできょうなのよ、ねぇ」

私はティキのために真っ白なドレスを着て、今日というこの日からティキだけを愛するとノアの神様の前で誓って私達は夫婦になるはずだったのよ、それなのにどうして、どうしてティキがこんな、こんな。紅に沈んで冷たくなっていかなきゃいけないの、私達は二人で生きてく事すらできないの?ねぇ、どうして?どうして、どうして、

、きれいだよ、世界 で、一番の、はなよめ、だ」
「ティ、キ…っ」
「ごめん、な、」
「な、で…っ謝…っ」
「また、会え る、から、だか ら、」

泣くな、そう言ったきり、ティキは言葉を紡ぐ事はしなかった。どんどん冷たくなっていくティキの体を抱き締めたまま、私は血だまりの中でただ泣いた。真っ白だったドレスはティキの紅に染まってもとの色は判らなくなって私の手も足もぜんぶぜんぶティキの紅に染まって、

「ティキ」

ぽつりと一滴、冷たくなったティキの頬に雫が落ちた。




「……?時間だぞ…っておい、お前何泣いてんの」
「てぃ、き?生きてる?ティキよね?いきて、る?」
「は?お前何……」

ティキはそこまで言って悲しそうに眉をひそめて私を抱き締めた。ティキの体温は私よりも少しだけ高くてまっしろな彼のウェディングスーツに私の視界は奪われた。

「…あん時のこと、思い出してた?」
「……も、いやだ、よ、私の前から、消えない、で」
「消えないよ。オレはを置いて逝ったりしないよ。ずっとずっと一緒。死ぬときも一緒。だろ?」
「ティキ…っ」

ヴェール越しに髪を撫でるティキの手は暖かくって耳に届くハイバリトンが心地よくて、あぁティキはここにいる、ティキはここでいきている今私は彼に抱き締められているって安心できて、

「7000年、離れてた分を埋めてこう?これから二人で、ずっと」
「うん……っ」
「ほら、泣くなって。綺麗な化粧が台無しだぞ」

これからずっと、死ぬまで彼と歩いていけるんだって、そんな確信が私に芽生えて、

「……ティキ」
「さ、行こう?」
「……うん」

貴方の手を取って、私はしっかりと歩き出す。











(7000年の時を越えて、)


















DMD提出!
いつになくかっこよいティキが書けて満足(最初死んでるけどね/言うな




2007/07/04