「、ちょっといいですカ?v」
「あ、千年公…何でしょうか?」
「私達ノアの一族についてのお話、デスv」
「……はい」
Noah's Relative
ティキが仕事だと言って朝早くから屋敷を出てしまったので、暇をもてあましていた私は部屋で本を読んでいた。メイドさんが淹れてくれた紅茶はとても美味しくて、お茶請けにと出されたマフィンもこれまた絶品で、私がいてもいいのかというくらい上流の家庭なのだという事は私にも理解できた。美味しい紅茶を堪能していたら部屋のドアがノックされて、ドアを開けて遠慮がちに顔を覗かせたのは千年公だった。
「さて…まず何から話しましょうかネェv」
「…あの、ノアの一族、って…?ここに住んでる皆、血が繋がってるんですか?」
「アァvじゃあそこから話してあげまショウv多少混乱するかも知れまセンがvノアの一族というのは“人類最古の使徒”であるノアの遺伝子を受け継いだ者の事デスv我々に血の繋がりはありまセンv」
「…人類最古の…使徒?」
「そうでスv」
困った。初っ端から話が飛躍しすぎてて判らない。つまりティキ達は血の繋がりはなくて、でもノアの遺伝子とかいうのを受け継いだ人達で…えぇと、つまりはその遺伝子を受け継いでいるのがノアの一族で、それは血縁じゃなくて遺伝子を受け継いだ人が一族に迎えられるって事で…?
「も見たでショウ?ロード達の肌の色と額の傷、あれがノアである証なんでスv」
「…灰褐色の肌と…あの7つの傷が、ですか」
「そうでスv」
「…なんか…よく判りませんけど、私ここにいていいんですか?私、そのノアの遺伝子とかいうの、持ってないんじゃあ…」
「いいんですヨvティキぽんもロードもを気に入ってるみたいですシv」
「…はぁ、」
千年公は相変わらずの笑顔で、首を傾げながらそう言った。確かにロードちゃんは素直で可愛いし、まだ会って数日だというのになんだか懐かれているというのも判る。そういえばこの間ティキに連れて行ってもらった庭園の花もいつの間にか増えていた。一応私は歓迎されているらしい。
「あの庭園、気に入ったみたいですネェ、」
「…あ、はい。ティキに連れて行ってもらって…珍しい花ばかりだったし、綺麗で」
「ティキぽんが庭園に花を増やしてくれって言ったんデスヨvが気に入ったから、ッテv」
「……ティキ、が?」
「エェv」
ちらりと窓から庭園を見たらメイドさん達が花の手入れをしているのが見えた。……私の、為に?
「…花を増やす様に言っておきマシタv後で見に行ってみるといいですヨv」
「……何で、私に良くして下さるんですか?」
「ティキぽんがを気に入ったから、ですかネェv」
「…ご迷惑じゃ、ないですか?」
「そんなことはありまセンvさえよければいつまででも居て下サイv」
千年公はそう言うと私の頭をぐりぐりと撫でた。…なんだろう。なんだか懐かしいような感じがする。なんでだか判らないけど。私はこの手を知っているような、
「…サテv私はこれから出かけなくてはいけないので失礼しますヨv」
「あ、はい……あの、有難う御座いました。」
「お礼なんていいんですヨv」
千年公はそう言って部屋を出た。また独りになった私は、テラスに出て庭園を眺めた。メイドさん達が忙しなく動き回って花の手入れをしてる。今はまだ行ったら邪魔になるだろうから、日が暮れてから行こうか。この間は昼間だったし、夜の庭園も見てみたい。ティキも今日は遅くなるみたいだから、丁度いい暇つぶしになりそうだ。
(初めて知った極彩色の世界)