「…なんでロードまで着いて来るんだよ」
「だっての服買いに行くんだろぉ?女の子居た方がいいってぇ」
「いいじゃない、ロードちゃんも居た方が楽しいわよ」
「……はぁ」

そんで次の日。朝早くから出かけようとしたらロードに見つかった。適当に誤魔化してと二人で行こうとか思ったらがロードに服買いに行くんだよとか言うもんだから、学校が休みで暇してたロードまで着いてくるハメになった。……一応デートのつもりだったのに台無しだ。











「…まずは服、だな」
「だねぇー。僕がいつも行ってるお店行こぉー?」
「ロードちゃんの?そういう服売ってるとこ?」
「そぉそぉ。、きっと似合うよぉ」

あぁ、ほら。だからロードに来て欲しくなかったんだ。そりゃ確かにロードが着てるような服だって似合うだろうけど、オレはにドレスを買ってやりたかったのに。しかもロードも自分の服買う気マンマンだからオレ今日は一日荷物持ち決定。アクマの一匹でも連れてくりゃよかった。

「ティッキぃーアイス売ってるよぉ」
「…だから何だよ」
「食べたいなぁー?も食べたいよねぇー?」
「…う、うん?」
「決まりぃー。2人分よろしくねぇ。僕バニラぁ」
「じゃ、じゃあ私ストロベリーがいいな?」
「……はいはい」

もう何も言うまい。ロードがいるんなら食い物関係の出費は避けられないのは身に沁みてよく判ってる。アイスにクッキーにキャンディにと際限ない上、自分の小遣いじゃねぇもんだから遠慮ってもんをしねぇ。少しはを見習えよと思ったが後が怖いので言わないでおいた。結局、ロードが言う店に着くまでにアイスとキャンディを買わされた上に腹が減ったからとケーキまで奢らされた。人の金だと思って3つも食いやがって。


「…な、なんかずいぶん高級そうなお店なんだけど…」
「ヘーキヘーキぃ。」
「ねぇほんとにいいの?」
「いいっていいって。遠慮すんなつったでしょ」

店に着いたらは店を見上げて固まった。…まぁそりゃそうだろうな…貴族御用達の店だし。固まるを横目にロードはさっさと店に入って店主を呼び出した。の手を引いて店に入ればは物珍しげにきょろきょろと辺りを見回していた。

「これはこれは。ミック卿もご一緒で」
「えぇ……」
ー!こっちこっちぃ」
「あ、うん」

ロードに呼ばれては店の奥に歩いてった。…まぁオレが選ぶよりロードが選んでやった方がいいだろう。同じ女なんだし、ロードもあれで中々いい趣味してっからな。

「ミック卿、あちらのお嬢様は?」
「あぁ…千年公が養女にと引き取りましてね」
「左様で御座いますか」

ほんとは養女じゃねーんだけど。どうせブローカーだしそう言っとけば変な気は起こさねぇだろ。…しかし、まぁ。いつ来ても不気味な店だよなぁ此処。壁紙は黒一色だし、カーペットは深紅、照明は少しの蝋燭で薄暗いし棺やらガーゴイルやらの置物がそこかしこにあるし。…つーかもなんで普通にしてんだ、オレ初めて来た時すっげぇ落ち着かなかったんだけどなぁ。

「あ、このワンピース可愛い」
「んー…には白より黒ってイメージだなぁ」
「そう?」
「うん。あ、でもこの深紅のも可愛いかもぉ」
「ほんとだ…でもそれだと中にシャツ着ないと」
「んーじゃあこのシャツどぉ?」

……長い。何だって女の買い物ってのはこんな長いんだ。懐中時計を見たら店に入ってもう2時間は経つっていうのにロードとは飽きる事なく店の中をうろうろしてる。カウンターには選んだ服が小さい山を作ってる。…いくらなんでも買いすぎだろ。

「今ので7着くらい?」
「8着目だよぉ」
「じゃあこのぐらいでいいかな…」
「だねぇ。ティッキー、おまたせぇ」
「はいはい……」

結局2時間半待たされてようやく決めたらしかった。服が8着と靴が2足、靴下とかアクセサリー色々。ついでにロードの服も6着くらい。…これ、マジでオレ一人で持つのか?絶対持ち切れねぇぞ。

「お代は千年伯爵様より頂いておりますので。」
「マジでぇ?千年公ナイスぅー」
「伯爵様によろしくお伝え下さい。」
「…伝えておきます。」
「お荷物は今日中にお屋敷へ届けさせていただきますので」
「えぇ、お願いします」

いつの間にあの人金払いに来たんだ、とか疑問は残ったが深くは追求しないでおいた。荷物も帰る頃には屋敷についているだろうし、これでオレの荷物持ちはなくなった訳だ。店を出た後は前にを連れてった仕立て屋に行ってドレスを5着注文。デザインを決めたりするのにロードがいちいち口を出すもんだから、昼過ぎに店に入って出たのは夕暮れ時だった。もいずれドレスを着てオレらと一緒に社交界に出る様になるんだろう。ロードと並んで歩くを見ながら、宝石とドレスで着飾ったはさぞかし綺麗なんだろうなぁなんて少し邪なことを考えながら帰路に着いた。







(それはそう遠くない、未来の話)