09:メルトインミッドナイト
「うわーべったべた……ロードから貰った服なのに」
「派手に殺りすぎなんだよ、は」
宿に戻ってすぐ。
部屋に入るなり、ケープを脱いだが一言。
あれだけ派手に殺せば返り血は嫌でもつくだろう。
ケープで隠れていなかったスカートには、べったりと返り血が付着している。
「……お風呂入ってくる。」
「ハイハイ」
いくらか不機嫌になりながら、カバンから着替え--寝巻き代わりのシンプルな前開きのワンピース--を取り出した。
部屋に備えつけられているバスタオルとハンドタオルを片手に、バスルームへと向かう。
扉を開く寸前、何か考え付いたように足を止めて。
「……覗いちゃやーよ」
「覗かねぇよ」
ふー、と紫煙を吐きながら言うティキをジト目で見ながら、はバスルームに入っていった。
***
「………なんだかなぁー」
白い肌に戻ったはバスタブに身を沈めながら先程の事を反芻していた。
そういえば、列車の中でティキに言われたっけな、と記憶を辿りながら。
『オレらノアの一族はさ、本能でイノセンスとエクソシストを嫌ってる』
『だから、“白い”時はまだしも、“黒い”時に会っちまうと抑えが効かねぇ』
『はまだ“覚醒”したばっかりだからまだそういうのはねェと思うけど』
『“それ”は遺伝子に刻まれたノアの記憶だから』
「……それで、さっきのアレか」
過去のイザコザで人間不信気味ではあったが、あそこまで躊躇なく殺すことが出来たのは何故か。
自分の中のノアの遺伝子がそうさせていたのだろうか。
手に目を落とす。指の間からぱしゃぱしゃと音を立てて流れていく水は透明。
けれど自分の体にまとわりついていた不快感は紅く粘り気のある液体で。
シャワーで流したその紅は、何か未練を残したようにタイルにこびりついている。
「……人間、なんて」
遺産の為だけに自分を引き取った親戚
身寄りのない15歳の自分を引き取って育ててやってるという大義名分を掲げて虐待する愚かな大人
家を追い出されたくなければ言う事を聞け、と自分を弄んだ叔父。
結局自分の価値は両親が遺した多額の遺産だけだったと気付いた。
逃げ出した後、何度も連れ戻されてその度に何度も何度も牢獄の様な家を飛び出して
「……汚くて、醜くて」
18歳になるまでの3年間その繰り返しで味方なんていなかった
多額の遺産があると判れば掌を返したように親切になる滑稽な大人も
金目当てで近寄ってくる男も
身寄りのないを気遣うフリをして自分を引き立てている女も
「……大嫌い」
褐色に染まった肌を、水滴がいくつも流れ落ちていった。
***
「上がったよ」
「おぅ。」
バスルームを出ると、入れ替わりでティキがバスルームへ向かう。
はベッドに腰掛けて、ぼんやりと天窓から見える夜空を見上げていた。
(……私の生きるべき世界は此処だ)
此処には“家族”がいるのだから。
血よりも濃い絆で結ばれた、本当の“家族”が。
仕事も、平穏な毎日も、何もかも…全てを捨ててティキを選んだ。
間違っているとは思わない。あんな世界に未練もない。
ただ信じるべきは“家族”であり“愛する人”だ。
(…ティキがいるなら、私は何処でも生きていける)
「?上がったぞ?」
「…あ、早かったね」
「オレ早風呂なの。白い時のクセ」
「へぇ」
15分もしないうちに風呂から上がったティキは隣に腰を降ろす。
洗いざらしの髪はまだ濡れていて、水滴がシャツを濡らしていた。
「何考えてたんだ?」
「んー?別に?」
「……って顔してねぇけど」
「はは。ティキには判っちゃうか。」
は苦笑いを零してまた夜空に視線を投げた。
誰に言うでもなく、ゆっくりと口を開く。
「さっきの事、考えてた。
私は“ノア”で、“エクソシスト”は私たちの敵で
遺伝子に刻まれた憎悪だって言ってたの、よく判った」
「そっか」
「うん」
さらり、とティキの指がの髪を撫でる。
その感触にティキを振り向けば、何時もとは違う真剣な眼差しで。
は戸惑いながらティキの名を呼ぶが、その声はティキに飲み込まれて。
「ん……ティ、キ…?」
「………なぁ、」
ティキの真摯な眼差しがを射抜く。
ティキは髪を撫でていた手を頬へとやり、の感触を確かめるように何度も優しく撫でた。
「ティキ?」
「オレ、そろそろ限界」
「え?」
が間抜けな返事を返したのが早いか、の体がベッドに沈む。
両手首は柔らかな力でベッドに繋がれて、を見下ろすティキの目は切なく歪んでいた。
「ティ…キ…?」
「抱きたい」
「………ティキ」
真摯な眼差しは緩めないまま、ティキはを見下ろして言う。
率直に告げられたその言葉は、一時の劣情から来る物ではないという事がよく判る程真剣で
はティキを見上げ、戸惑いまじりの視線を投げる。
「が、欲しいんだ」
有無を言わせないような、強いティキのその言葉には小さく頷く。
頷いたを見て、ティキは柔らかな笑みを浮かべた。
「……」
「ん…ぅ…っ」
重なる唇は段々と深く繋がり、舌の絡まる水音が小さく響く。
の手首を繋いでいた手は外され、の頬を優しく撫でていた。
「ティキ……っ」
「もっと呼んで……」
ティキは耳元でそう言いながら、耳から首、首から鎖骨へと無数にキスを落としていく。
時折吸い上げられる甘い痛みには肩を震わせて。
そんなの姿に、ティキは嬉しそうに笑みを零す。
「や…っん…」
「いー声……なぁもっと聞かせてよ」
するっ、と襟の間からティキの手がの胸に触れる。
風呂上りで体温の上がったティキの肌は、夜風に晒されていたの体温にじんわりと馴染んで
は肌を伝うその感触に小さく嬌声を上げた。
「って着やせすんのな。予想してたよりでけぇ」
「ば……っ何言、って…っふぁ…ぅ…」
ぷちぷちと片手だけで器用にボタンを外していくティキはさらっとそんな事を口にして。
その言葉に顔を真っ赤にしたは腕で顔を隠す。
「ほら、隠さないの。」
「やぁ---っ」
ティキはその腕を優しくどけると、また両手首を柔らかな力でベッドに縫いつける。
そのまま、焦らすようにキスだけの愛撫を繰り返して。
段々との息が上がり、嬌声は甘さを増す。
「……ってけっこー敏感なのな。もう立ってる」
「ッぁ--!」
胸の突起を舌先で舐め上げて、口に含む。
びくん、との背が跳ね、詰まったような嬌声が上がる。
ティキはその反応にくく、と喉で笑うと、の両手を放した。
「気持ちい?」
「ぅん……ッティキぃ…ッ」
両手で胸を包みながら、舌先で突起を刺激する。
もう片方は指で潰す様に撫でれば、それに合わせてが甘い嬌声を紡ぐ。
「柔らかいし、感度も良好…ね」
「ん……ッぅぁんっ」
下腹部を焦らすように撫でると、はその刺激にも背を震わせて。
ティキは口元に笑みを浮かべたまま、のワンピースの全てのボタンを外す。
は小さく抵抗はしたものの、到底ティキの腕を跳ね除けられる力にはならず
ティキはボタンを外し終わると、露になった下腹部に指を滑らせた。
「やぁん…ッ!」
「お、イイ反応」
「ばかぁ……っ」
ティキは嬉しそうな笑顔を浮かべたまま、何度もの下腹部に指を滑らせる。
その度には腰を浮かせて足をすり合わせ、ティキはのその仕草に笑みを一層深くして。
体を僅かに離してシャツを脱ぐと、ティキはの太ももを撫で上げた。
「こっちは?」
「やぁ…ッ!!!」
下着の間から指を滑り込ませたそこはもう湿り気を帯びていた。
ティキはわざと音を立てて、焦らすように撫で上げる。
「ティキ…ッそこ、やぁ…っ!」
「嫌とか言ってる割に濡れてっけどな」
「ひゃあん…ッ!」
くちゅくちゅと淫猥な水音が小さく響く。
ティキは下着を素早く剥ぎ取ると、の足の間に体を滑り込ませた。
「ティキ……っ」
「…ちゃんと慣らそうな」
くぷん、と小さく音を立てて、のそこはティキの指を飲み込んだ。
はその違和感に眉を顰め、ティキの腕に縋る。
体を強張らせて縋るに、ティキは脳裏を掠めた疑問を率直に投げかけた。
「……初めて?」
「……じゃ、ない…けど……ッ」
「けど?」
「……っ合意の、上で……するのは、初めて……っ」
「………そっか」
のその言葉の裏に隠された真実を汲み取ったティキは一瞬悲しそうに眉を顰めた。
の額を優しく撫でると、触れるだけのキスを何度も落とす。
「……ティキ……?」
「オレが消してあげる」
「……うん……」
「大丈夫だから、」
の全部、オレに頂戴?
耳元で言われたその言葉には頬を紅く染め、返事の代わりにティキの首に腕を絡める。
ティキは縋るの背を優しく抱き止めると、その体を優しくベッドに沈めた。
「……力抜いてろな」
「ん……っ」
胎内に感じる異物感にはまた眉を顰め、シーツを強く握る。
それを宥めるようにティキはに何度もキスを落とし、の手を首に絡めると攪拌する指の動きを段々と早めていく。
「あ…ッふゃ…あぁッ」
「…」
「ティ、キぃ…ッ」
攪拌する指を増やし、ゆっくりと動きを強めて。
その動きに合わせて撥ねるの華奢な身体と上がる嬌声はティキの理性を揺さぶっていく。
「すっげ……なぁ、音わかる?」
「し、らないぃ…ッひぁっ」
「のここ、ぐっちゃぐちゃ。」
の羞恥を煽るように、艶の篭った声で囁くティキ。
その声に、は息を詰まらせてティキの肩に顔を埋める。
そんなの仕草にティキは笑みを漏らすと、埋めていた指をゆっくりと引き抜いた。
「ぁ……?ティキ……?」
焦点の定まらない瞳でティキを見上げる。
力なくベッドに投げ出された肢体が月の光を受けて淡く照らされる。
ティキはの姿を満足げに眺めると、の服を素早く剥ぎ取る。
そうして自分も纏っていた服を全て脱ぎ、の額を優しく撫でた。
「……ごめんな、もっと時間かけて慣らしてやりてぇけど、情けない事にオレ余裕ねーんだわ」
「……ん……へーき、だよ……?」
力なく笑うの額を撫でながら前髪をかき上げて、小さくキスを落とす。
は目を閉じて、ティキの首に腕を絡める。
「……辛かったら爪立ててもいいから」
「ん………」
ぎゅ、と首に絡むの腕に力が篭ったのを確認すると、ティキはの髪を撫でてその身体を優しくシーツに沈める。
それでも首に絡むの腕は緩む事はなく、ティキは小さく笑みを零すとの足に手をかけた。
「……ティキぃ……っ」
「力、抜いてろな」
宥める様に言いながら、宛がった自身をゆっくりと沈めて行く。
はその異物感と痛みに身体を強張らせ、うわ言の様にティキの名を繰り返し呼んでいた。
ゆっくりと時間を掛けての身体を貫いていくティキの熱。
「ぅ…ッあぁぁああ……ッ」
「もーちょっと、な……」
「やぁ…っむ、りぃ……っ」
は力なく首を振る。色素の薄い茶色い髪が、ティキの肩にぱさぱさと当たっては落ちた。
ティキは背を抱く手に力を込め、腰をゆるゆると撫で上げる。
力が抜けた隙を縫って、少しずつ、少しずつその熱をの胎内へと収めた。
「っは……ぁ……っ」
「ん…ほら、入った」
く、っと腰を動かせば途端に撥ねるの背。
虚ろな瞳は劣情に塗れ、半開きの口からは熱の篭った吐息と艶のある嬌声が漏れる。
縋る腕は力なく、ただティキの首に掛けられている。
「……動いてい?」
「…いー、よ……?」
「…手加減できねーから、先に言っとく。マジで加減効きそうにねェ」
「……全部、消してくれる…んでしょ……?いい、よ……」
の途切れ途切れのその言葉に、ティキは笑みを一層深くして。
額に張り付く前髪をかきあげながら、小さくキスを落としながら、律動を開始した。
「や……ッ!!!あぁぁあッ!!!ティ、キぃ…ッ!!!」
「ん…すっげ……っは…熱ィ……」
「ティキ…ッティキぃ…ッ」
繋がり合った其処から上がる水音は段々と大きくなり
二人の吐息と絡んで部屋に響く。
はティキから与えられる快楽に、ただティキの背にしがみ付いて嬌声を上げていた。
ティキは律動を辞めぬままの背をしっかりと抱くと、宥めるように撫でて耳元で愛を囁く。
「…お前ん中、すげぇ絡んで来る…最ッ高…!」
「ティ、キ……ッや…ッおっき、ぃい…ッ!!!!」
「…っマジ止まれなくなっから…んな事言うなって……!」
熱に浮かされティキを見上げるの焦点の合わない瞳。
半開きの口からひっきりなしに漏れる嬌声と、伝う唾液はティキの劣情を更に煽って。
「あ…ッぅ、あッ…ぁぁあぁあッ!!!」
「…ッここ、だな…っ?」
ある一点を突き上げた瞬間、が甲高く啼いた。
ティキはそれを見逃さず、其処だけを執拗に突き上げればはひっきりなしに嬌声を上げて。
「や…ッそこ、だめ…ッやらぁぁぁああっ!!!」
「イヤとか言って…っ締め付けて離してくんねーんだけど…っ?」
「ティ、キぃ…ッ!!!も、やぁ…っおかし、くなるぅ…ッ!!!!」
「…ッ一回イっとけ…!」
の片足を肩に掛け、最奥を抉るように突き上げてはギリギリまで引き抜いてまた奥を抉る
はその度に背を跳ね上げ、声にならない嬌声を上げた。
「や……ッイ、っちゃ…やぁぁあぁああんッ!!!!」
一段と甲高い声が上がった直後、射精感を煽るような締め付けに襲われる。
の身体からは力が抜け、ティキの首に絡めた腕は力なくシーツに沈む。
ティキは果てたの手に指を絡め、何度も触れるだけの口付けを交わす。
「……ぁ…も、むりぃ…っ」
「冗談言うなって。オレまだイってねぇのよ?」
「や……ッ待、って…ッあぁぁぁああッ!!!!」
指を絡めたまま、ティキはまた律動を開始する。
果てたばかりのの身体は敏感さを増していて、突き上げるたびにきつく締め付けられた。
「っは……やっべぇな…っ熱ィしドロドロなくせに…っ絡んで来る…ッ」
「ティ、キ…ッはぁあッ!!!!や、あッ!!!!」
「、お前ホント最高…ッ」
の足を抱え、何度も奥を抉るような律動を繰り返せばの腰は微かに揺れて。
ティキはのその細い腰をしっかりと引き寄せると、また強く腰を打ち付ける。
その度に繋がり合った部分からは淫猥な水音が漏れ、溢れた液体がシーツを濡らして。
「も、やぁ…ッ壊れ、ちゃ…ッきゃぁぅっ!!!!」
「壊してやるって……ッやべぇな、オレも…っ」
「ティキ…ッきゃ…っふぁんッ!!!!!」
「イきそ…っ、ちゃんと着いて来いよ…ッ!」
射精感に煽られる様に激しく腰を打ち付ける。
はシーツを握り締め、ただ与えられる快楽に喘ぐばかり。
ぐちゅぐちゅと漏れる水音は激しさを増し、の意識は白濁寸前。
「やぁぁあんッ!!!ティキぃ…ッ!!!!」
「……ッ、中いい……?」
「…ッん…奥、に…っいっぱい、ちょーだ…ッ!!!!」
「…っは…オッケー…!」
耳元で囁くティキの声に、は理性の飛んだ頭で答える。
ティキは口元を吊り上げるだけの笑みを浮かべると、の腰を掴んで強く打ち付ける。
「や…ッあぁぁああぁぁぁああッ!!!!!」
「……ッ!!!!!」
ティキの熱が最奥で爆ぜるのを感じながら、の意識はゆっくりとピンクアウトしていった。
掠れて行く視界に、優しい笑顔で髪を撫でるティキが見えた。
***
「………ん……ぅ?」
「お、目ぇ覚めた?身体平気か?」
「……ティキ……?」
のぼやけた視界にティキが映る。
ティキはをしっかりと抱きとめたまま、枕に凭れて横になっていた。
「そ、オレ。」
「……今、何時…?」
「んー?4時ちょい回ったとこ」
「……私、飛んでた…?」
「思いっきり。2時間くらい」
「そ、か……」
ティキはの髪に優しく指を通しながら、慈しむような声で応える。
はその感触に目を閉じ、ティキの胸に擦り寄った。
「……?」
「ティキ………」
「どした?」
ティキは擦り寄るの背に優しく手を掛け、宥めるように撫でる。
はティキの胸板に掌を滑らせながら、ティキを見上げながらぽつりと言う。
「幸せ、だなあーって思って」
「…オレも」
ふざけたように笑い合って、微睡みの中抱き合ったままシーツの海に沈んでいく。
繋いだ手は離す事なく、しっかりと繋いだまま。
「?」
「……ん……?」
「愛してるよ」
「……ぅん……私、も……」
「……おやすみ」
お互いの体温をしっかりと感じながら。
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やっちゃったよ裏夢!(ぁ
ってかティキぽんは言葉攻め好きそうなドSだと書いてて思いました(腐ってる
次回から普通に書きますよ!
2007/04/24 カルア