12:dolce vita



















「……ティキ、真昼間っから酒はやめとこうよ」

「なんで?イタリアつったらワインだろ」

「いやさ、せめて夜まで待とう?この後情報収集でしょ?」

「ダイジョーブ、オレ酒には強いから」


とティキは大きな食堂で食事を取っていた。
はペスカトーレ、ティキはペッパローニのピザとカルパッチョ、そして赤ワインのボトルを。
真昼間から酒を飲み始めたティキに、は溜息混じりに言うがさらっと交わされてしまう。
はまた溜息を吐き、せめて目の前のこの男が酔っ払わないようにしようと決めるのだった。


「ってかさ、カードに大体の場所って書いてない訳?」

「あー書いてねぇな。世界中飛び回ってやがるから特定できねぇの」

「面倒だね……色んな国に行けるから楽しいと言えば楽しいけど」

「確かに面倒だな。ま、いんじゃねーの?」

「楽天的だよねティキって……」


結局ティキは一人でワインのボトルを空けたものの、強いと言うだけあって酔った素振りは見せなかった。
二人は食堂を出ると、街をぶらつく。
長閑な雰囲気漂う港町は居心地がよかった。















***

















「お前それ何個目だよ」

「ん?多分20個くらい」

「……食いすぎ」


大通りを歩いていた所の目に留まった菓子屋。
迷わずはその菓子屋へ入り、ティキはまたかといった表情でを追う。
暫く菓子を吟味していたは、ビスコッティを大量に--曰く量り売りだったからキリのいいとこで500グラム--購入した。
上機嫌で店を出て、大通りを歩きながらビスコッティを口に運ぶ。
そんなを横目に、ティキはこいつ本当に成人してんのか、と尤もな疑問を浮かべていた。


「だって美味しいよこれ。」

「はいはい。あんまり食うと太るぞ」

「こないだからそればっかだねティキ」


文句を言いながらも食べる手は止めないにティキは小さく溜息一つ。
はそれに気付く事なく、6軒程先の雑貨屋へと小走りに向かう。
相変わらずマイペースなを見失わない様にティキは慌ててを追った。


「……さてねぇ…見かけた事ないねぇ」

「そうですか……」

「力になってやれなくてごめんよ?」

「いえ、こちらの情報が少なすぎるのも悪いんで……あ、おいくらですか?」

「えーと…ちょっと待っておくれよ」


ティキが店に入れば、はレジカウンターで店の主人であろう女性と会話をしていた。
はティキを見つけると小さく手を振り、ティキは苦笑い交じりに近づいた。


「全部で1シリングと3ペンスだね……ってそちらはお連れさんかい?」

「あ、はい。」


計算をしていた主人が顔を上げ、の隣にいたティキに気付く。
は財布から代金を出しながら、頷く。


「何買ったの」

「んー?ピアスー」

「へぇ」


主人はティキとを交互に見つめ、にこそっと耳打ちをする。


「恋人かい?」

「…そうです」

「そうかい。これ、彼にかい?」

「……内緒ですよ」


嬉しそうな表情の二人にティキは疑問を持ったが、追求するのはやめておいた。
は代金を支払い品物を受け取ると、主人に笑顔で挨拶をしてティキの手を取った。
主人は笑顔で二人を見送り、代金をレジに納めているのが窓越しに見えた。


「……なぁ何買ったの」

「内緒。」

「……ま、いいけど。なんか情報聞けた?」

「んー…見かけたことないってさ。ここらへんの人も多分そうだろうって」

「参ったな、ハズレか」

「みたいだねぇ……」


ふぅ、と溜息を吐きながら、二人は一度宿へ戻った。











***











「……どうする?もうちょっと滞在してみる?」

「まぁまだこの町全部見て回ってねぇしな…あと2,3日は…」

「そーだね。大通り沿いしか行ってないもんね。
 裏通りに酒場とかあるって聞いたし、明日はそっち行ってみようよ」

「酒場ってなら夜だな……、明日は気をつけろよ」

「あはは。胆に命じておきます」


先日の騒動がティキの頭を過ぎり、ティキはに釘を差す。
は苦笑い交じりに返すと、思い出した様にカバンから小袋を取り出した。
それは先程雑貨屋で購入した物で、ティキは小袋との顔を交互に見つめ疑問の表情を浮かべた。


「これ、ティキにあげる。」

「オレに?何?」

「開けてみて?」


渡された小袋を開けると、中には小さな紅い石があしらわれたスタッドピアスが一組入っていた。
出してみればその石は室内の照明に照らされて、まるで血の色のように鮮やかになった。


「ピアス?」

「そ。似合うかなと思って。」


ちなみにお揃いね、と言いながらは髪をかき上げる。
の両耳にはティキの掌に乗っているピアスと同じ物が輝いていた。


「マジか」

「うん。」

「……オレが先に何かプレゼントしてやりたかったんだけど」

「先手必勝?」

「いや意味違ぇから」


ティキは笑いながらに貰ったピアスを耳に通す。
今まで着けていたピアスをどうしようか、と掌に乗せて眺めていたら、がそれを手に取った。


「これ貰ってもいい?」

「そんなんでいいのか?」

「何が」

「いや、にも何か買ってやろうかなって」

「ティキが着けてたこれがいいの。」


はそう言いながらピアスを耳に通す。
今までピアスをつけていなかっただけで、の耳には4つのピアスホールがあった。
面倒臭いという理由でピアスをつけないまま放置していた為、いくつかはふさがってしまったようだが。


「…お前いくつ開けてんの?」

「んー?前は10個。でもめんどいからピアス着けないで放置してたら6個塞がった」

「……マゾ?」

「違ぇよ馬鹿ティキ。」


真顔で聞いてきたティキの頭には拳を落とす。
ティキは頭を押さえて唸りながらも内心は上機嫌。


「ありがとな、

「どーいたしまして」


にっこりと満面の笑顔で言うに釣られて、ティキも笑った。















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ティキのピアスは蒼だったらいいと思う(アニメでもはっきり確認できず)








2007/04/24 カルア