ExtraPart18:天国は地に堕ちた 










「出口ならあるよ、少年」


ティキは白いまま--ビン底メガネをかけたままで--、いつか汽車の中で会った白髪のエクソシスト、アレン・ウォーカーに声をかけた。
私はといえばティキの背にもたれて立っている。大して興味もないし、あのときの決着付けたくなっちゃうから。


「「「ビン底!!!」」」


と、ティキを見た眼帯と吸血鬼と白髪(名前は面倒だからもう忘れた)が一斉に叫んで、私は思わず噴き出した。
だってまさか私以外にもそうやって呼ぶヤツがいるなんて。エクソシストだっていうのが少しだけ不本意だけれども。


「……ビ、ビン底…っ敵にまで、言わ、れ……っだ、ださっ!ぷっ」

「おいお前さりげなく失礼だぞ」

「だ、ってビン底って…うちら以外にまで…っあはははっ」


ティキはなんだか不機嫌そうな顔で私を振り返る。
当然、エクソシストたちも私の存在に気付いて、最初に反応したのは赤毛の眼帯だった。


「あー!あん時の…えっと、?!え、ウソだ!ノア?!」

「気安く呼び捨てにすんじゃないわよ年上は敬いなさい今度こそぶっ殺すわよ眼帯」

「……相変わらずきっついさー……」


へこんだ眼帯をベリーショートの女の子が慰めていた。
っていうかあんな子までエクソシストなのかな。確かあの子、ティキがさっき可愛いとか言ってた子だわ。
この浮気者。いくら快楽のノアだからって何もこんな若い子にまで食指を伸ばすつもりだったのかこいつは。
あぁなんかムカついてきちゃったな。とりあえず殴っとこう。うん。


「ねぇちょっとちゃん何してんの痛いんすけどやめてくんね?ねぇちょっと」

「うるさい浮気者。知らないとでも思ったか。アクマからちゃんと聞いてんだからね。
 あっこのベリーショートの子、可愛いとか言ってたんだってねこの浮気者。
 いっぺん死ね。地獄に落ちろ。んで二度と転生してくんな。変態。浮浪者。学ナシ。エロ魔人。」

「え、ちょ、それどのアク「うるさい黙れ浮気者。死ね。」


(なぁって結構怖いな?)
(っていうかあの二人ってやっぱりそういう関係だったんですね)
(…それにしても言う事が的を得ているであるな)
(ねぇもしかしてアレって私のせい?)
(リナリーのせいじゃねーだろ、悪いのはビン底さぁー)
(……下らねぇ)


「ねぇちょっとそこの少年たち助けてくんね?マジ死にそうなんだけど!」

「敵を助けてやる義理はありませんよ。自業自得でしょう」

「え、ちょっと酷くねぇ?!」

「つーかどっちかってーとの味方したくなるさな?リナリー」

「……え、そ、そうね。浮気は、よくないと思うわ」

「下らねぇ痴話げんかなら他所でやれようざってぇ」


エクソシストたちに助けを求めるのってどうかと思う。
っていうか間違いなくこれはティキの自業自得であって
私はティキの彼女なんだからこれは当然というか正当な行動な訳であって。
敵にまで助けを求めるティキに私はいよいよキレかけた。うん。
だってこれから殺し合おうってヤツらに助け求めてどうするのよ。


「……ティキ?敵に助けを求めてどうするの?そんぐらいで私に勝てるとでも?
 っていうかさ、自分で言った事忘れてるよね?浮気はしないって誓ったのどこのどなたでしたっけ。
 自分で言ったこと忘れるくらい頭悪かったの?」

「……げ、ちょ、マジごめん頼むからそれ戻してそんなん撃ったら箱舟ごと跡形もなくなっちゃうから!な?!」


ロケットランチャー(中身はクラスターボム)をティキに向けて構えたらいよいよあわてだした。
心なしかエクソシストたちも冷や汗をかいていた。


(え、ちょぉの能力ってアレなん?すごくね?)
(あんなの見たことありませんよ?!)
(…アレンくんの銃火器型に似てるけど…それよりすごそう)
(というか箱舟ごと跡形もなくとは……)
(どんだけだよ)


「……大丈夫よ手加減はするから。ティキが死んで箱舟が壊れる事はあっても私は無事だわ」

「いやいやいやいや!マジごめんって“戦女神”モードになんないでってば!」

「そうさせたのは誰かしらね?浮気者のホームレスさん?」


(イシュタル…?)
(メソポタミア神話の戦の女神さ。性愛の女神でもあっけど)
(…どういう意味かしら?)
(……という事はノアの中でもかなり強敵と言う事になるであるな?)
(フン。)


「あんなの浮気の内に入んねぇだろ?!頼むから落ち着けって!な?!愛してっから!」

「……私だけしかいらないつったのどこのどなたでしたっけ。
 この状況で愛してるなんて言われたって命乞いにしか聞こえないわ」

「だあああああああ!マジだって!な?!」

「…判った。ロード達もいるしランチャーは勘弁してあげる」

「よかっ「でも浮気は許せないのよね。」


安堵のため息を付いて胸を撫で下ろすティキに向かって手榴弾を20個くらい投げてみた。
見事に命中。あたりは土煙に包まれて、ティキの気配は消えかけた。


(うわあ…手加減ないですね彼女)
(なんかオレ少しだけビン底に同情したくなってきた)
(テメェの場合は明日のわが身だからだろ)
(でも浮気が許せないっていうのは判るわ)
(……それにしても少しばかりやりすぎであるぞ…)


「……あーすっきりした。あ、そうだ。これあげるわ」

「?カギ?」


ぽんとほっぽった鍵を受け取ったのはパッツンだった。
ティキの気配は相変わらず消える寸前だったけど自業自得だからこの際無視する事にした。
酷い事したかなぁ、とか思わないよ?だって悪いのはティキだもん。


「そ。ロードの能力なら出口作れるのよね。その扉に通じる3つの鍵と、此処から出るための扉の鍵。」

「こんなん渡していいんか?」

「扉は箱舟の一番高いとこ…あの塔の上に置いてある。辿り着けたら君らの勝ち、っていうのはどう?汽車のリベンジ。」

「………いいですよ、受けて立ちます」

「今度はイカサマなしで、ね。私らは出口、君らは命懸けて」

「…ノアは不死だって聞いてますけど」

「あれ。そうじゃないんだけどなぁ。私らだって人間だし、死ぬ時は死ぬよ?」

「……あんだけ食らってビン底まだ生きてっけど?」

「あぁティキは例外よ。ゴキブリ並に生命力強いからね。」

「…ゴキブリって…」

「ま、頑張って辿り着いてね」


ティキの生命力ならここが崩れる前に逃げられるだろうと勝手に自己完結して私は踵を返した(死んだら死んだで自業自得だ)。
喉渇いたから早く戻ってお茶が飲みたい。ロードとスキンに茶菓子食い尽くされる前に戻らなきゃ。

















(タイムリミットまで180分!)








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ティキはヘタレてればいいとおもいます!
そういえばチャオジーとレロ出してないな(ぉぃ)
というわけで恒例(?)オマケ。






「……おーい生きてっかー?ビン底ー?」

「…う……」

「…ほんとに生きてる……」

「お前大変だなあ色々と」

「……?は…?」

「帰ったさ」

「は?!マジ?!」

「マジ。っつーかよくあんな子と付き合ってられんな?」

「いやあれ愛情の裏返しだから。オレって愛されてんよなぁ」

「……その割に浮気性みたいですけど?」

「え、だって可愛い子見たら可愛いって言いたくなんね?」

「……なんだか私あの子に少し同情したくなってきたわ……」

「気が合いますねリナリー。僕もです」

「えぇええええ。酷くねぇ?」

「そうさな。可愛い子口説きたくなるんは男としてしゃーないさな」

「……ラビ、その発言はどうかと思うであるぞ」

「こいつも見境ねぇからな。女と見たら見境ナシだ」


「「え、ちょっと待って何その軽蔑に満ちた視線」」


「「「「自分の胸に手を当てて考えてみなさい(みるである)(みやがれ)」」」」


「「えええええええええ……」」







(女ったらし同盟結成/笑)










2007/05/29 カルア