「…独りで逝かせたり、しないからね…?大丈夫、一緒にいるわ、ティキ…」

私たちがいるこの塔も、あと30分ともたず崩れて時空の狭間に消えていくだろう。瓦礫が降り注ぎ砂塵が舞うこの塔の中、ティキと二人で逝けるのならそれでもいいかもしれない。私はあの時、彼と一緒に生きて彼と一緒に死のうと決めた。この世界に一歩足を踏み入れたあの時から、私の世界は彼の全てだったのだから。撫でた頬は温かかったし触れた癖毛も普段と何ら変わりない、ただ彼の意識だけは闇の底深く沈んでしまって私では掬い上げる事ができないだけで、彼の心臓は鼓動を刻み肺は空気を取り込み続けている。これが最期になるのなら、言葉を交わす事が出来ない事だけが心残りだった。

タマ!そんなこと言っちゃ駄目レロ!もうすぐ伯爵タマが来てくれるレロよ!」
「レロ……」
「諦めちゃ駄目レロ!」
「……いいの、わたしのせかいは、もう、ないから……」
タマ……でも、でも!」
「ティキは私の全てだった。私の世界は、もう何処にもないんだよ、レロ」

私たちはどれだけ輪廻を超えて出会っても幸せにはなれないんだろうか。私のノアが覚えている最期の記憶は紅に染まり私に手を伸ばすティキの姿、その直後に私の記憶は途切れて闇に沈んだ。前世でも、今世でも、私たちはイノセンスがあるから幸せにはなれなくて、それでもノアを捨てる事は出来なくて、それなら世界を終わらせれば私たちは幸せになれるのかなってずっとずっと思ってて、

「……ティキだけが、私の全てだった……」

だから、私は私の望む未来の為に、この手を紅に染める事を選んだ。ティキと一緒にいる為に、今度こそ幸せになる為に。

「ティキがいれば、他になにもいらなかった……」

他には何も、望まなかった。ティキが私の隣にいてさえくれれば、それ以外は何も望まなかった。

「……なにも、いらなかったの……」

ただ、しあわせになりたかっただけだった。
あなたと、ふたりで。
ずっとずっと、いっしょに、あるいていきたかった
ただ、それだけしか、のぞまなかった、のに。

ちいさな、ささやかなしあわせが、ほしかった。


「……ティキ……っ」

ただそれだけだったのに。











(私はまだ、思い出していなかった。彼の本当の能力、私を護る騎士だったあの頃を)










この先書きたいけどどうしよう、みたいな……
このまま続けるとルルさんと一緒に教団に乗り込みそうな勢いだよレンちゃん