ExtraPart14:恐怖の王様ゲーム
「第一回王様ゲーム大会ぃ〜!」
そんなロードの掛け声に私達は揃って間抜けな顔を返す。
千年公から呼び出しがかかったから仕事を中断して帰ってきてみれば、何故か家族が勢ぞろいしていて
私にティキ、ジャスデビにスキン、ロードと千年公。これが今の面子。
現在地はとリビングで、馬鹿でかい円卓を囲んでみんなで紅茶を飲んでいたところ。
ロードは棒(多分割り箸)を片手に、それはそれは楽しそうな笑顔で右手を上げてそう言った。
「え、ちょぉ待ってオレら呼ばれたのってその為?」
「そぉだよぉー?いいじゃんたまには家族みんなで遊ぼぉー?」
遊ぼぉ、じゃなくって私達がロードに遊ばれるんじゃ。そんな事言ったらきっとロードの餌食になるから言えはしない。
王様ゲームなんてこの時代にもあったんだ、なんてどうでもいい事を考えてしまうあたり相当混乱してるのかもしれない。
嫌な予感は拭い切れない。ロードと千年公が絡むと何かしらトラブルが起こるのは判りきった事だ。
「……別にいいけど、何で王様ゲームなの?」
「え?だって楽しそうじゃん?」
そう言って笑うロードの顔は絶対何かをたくらんでる顔だ。私には判る。何度も身をもって思い知ってるんだから。
かといって此処で拒否れば千年公からものすごい量の仕事を押し付けられる事も判っている。逃げるに逃げられないそんな状況。
「って訳でぇ〜ルール説明するねぇ」
「え、ちょっと待てよボクら参加するなんて一言も「やりますよネ?ジャスデビv」………ハイ」
拒否ろうとしたジャスデビは千年公の恐怖の笑顔で却下され強制参加決定。
千年公のあの表情を見るにきっと千年公も楽しんでる。逃げられない。絶対逃げられない。
覚悟決めてやるしかない。簡単な事よ、王様引けばいいんだもん。それにいくらなんでも私にそこまで酷いお題は出さないはず。
……っていうかそう信じさせてマジで千年公とロードの笑顔が怖いの。
「えっとねぇ〜。この棒の先っちょに番号書いてあるのねぇ〜。
でぇ。王様って書いてあるの引いた人が命令出せるのぉー。1番と2番が僕の宿題、とかねぇ?」
「テメェそれが目的か!」
「やだなぁ〜違うよデビットぉ」
あぁ、ロードはきっと溜まりに溜まった宿題を誰かに押し付ける為にこんなゲームを提案したんだ。
ロードのあの笑顔はどこか図星を着かれたような笑顔だったしまず間違いない。っていうかそんなことやらせんな千年公。
「簡単でしょぉー?あとねぇ、引いた番号は黙っててねぇ。王様はちゃぁんと王様って言わないとダメだからぁ」
「………要は王様引きゃいいんだろ」
「……頑張ろ、ティキ」
結局千年公の笑顔のあまりの迫力に誰も拒否する事なんて出来るわけもなく、全員強制参加決定。
あぁ、本当に私今すぐ此処から逃げ出したい。能力使えば逃げられるけどそんなことしたら後が怖い。
「はいじゃあ皆引いてぇ〜」
ロードのその掛け声にみんなが一斉にロードの手から割り箸を抜き取る。
私が引いた番号は2。王様は最悪なことにロードだった。何か仕組んでるんじゃないかと思ったけどそんな事怖くて言えない。
「やった、僕王様ぁ〜♪」
「げ」
「ヒィッ!」
悪い予感は的中。ロードは何かたくらんだ笑顔で私達をぐるっと見回した。
ジャスデビは冷や汗流して固まってる。この子は本当に無邪気すぎるから逆に怖いんだ。子供って残酷ってよく言うけどさ。
あぁ、うん、なんかロードの笑顔がいつにも増して怖いなぁ。子供の無邪気さって時として残酷。
「じゃあねぇ〜……3番がぁ」
「え゛」
顎に指を当てて嬉しそうな声色で言ったロードに露骨に反応したのはティキだった。
よかった、助かった。まぁティキがちょっと可哀想だとは思うけど此処は犠牲になってもらおう。
それで私の身の安全が保障されるなら安い物でしょ?悪女とか言わないでよぶっ飛ばすわよデビット。
「ティッキーかぁ〜……じゃぁねぇ、3番女装ぉ〜」
「は?!」
けろっと言い放ったロードにティキは立ち上がり冷や汗を流しながら叫び他の皆は放心してる。
気持ちは判らなくもない。私だってティキの女装姿なんて見たくないし見た日にはきっと百年の恋だって冷めてしまう。
だけども王様の命令は絶対で、しかも今の王様はロードな訳で逆らってしまえばもっと酷い目に合うことも目に見えている。
あぁ、ごめんティキせめて私が貴方を嫌いにならないことを祈って犠牲になって、なんて呟けば今度はスキンが悪女とか言った。
「げろ。ボクらホームレスの女装姿なんて見たくねぇよロード」
「えー?面白そうじゃねぇ?」
「ヒッ!夢に出てきそうだからデロは嫌だよ!」
双子が必死でロードに詰め寄るものの(これは決してティキの為じゃなくって夢に見そうなティキの女装姿を見たくないからだ)
ロードはそれをさらっと交わしてメイドアクマを呼ぶ。しかもレベル3、千年公のお気に入りだから壊すわけにも行かない
そんな八方塞がりの中ティキはメイドアクマ2体に両脇を抱えられて叫びながらリビングを後にした。
お願いだから幻滅させるような格好では帰ってこないでと祈る事くらいしか私には出来ません。ごめんティキ。
「じゃあ次ねぇ〜。気合入れてって言っといたから時間かかると思うしぃ〜」
ロードはそんなティキを笑顔で見送って、割り箸を一本減らすと私達の前に差し出す。
これはあれですか、有無を言わさずっていうか問答無用ですか?なんだか笑顔がいつにも増して怖いですロードちゃん。
「………せめてティキが夢に出る程の格好で帰ってこない事祈ろうね、みんな…」
「無駄な気ィする」「デロもそう思う〜…」「……悪夢だな」
3人が3人とも本当に嫌そうな顔をして答えたけど、私はスキンが女装するって方が悪夢だとおもう。
とか言ったらスキンに怒られそうだから言わないで割り箸を引いた。先端には王冠マーク。ってことは私王様?
「王様だぁれ〜?」
「……私」
控え目に手を上げた私に千年公とロード以外は安堵の溜息を吐く。私なら無茶なお題は出さないって思ってるんでしょ?
甘いわね。せっかくの機会だもん楽しませてもらうわそりゃもう盛大にね!
「よかった、でよかった」
「ほんとにね!ヒヒッ」
「……うむ」
ほらやっぱり。あんたら甘いのよ私だって最近仕事続きでティキとすれ違ってばっかだからストレスだって溜まるのよ?
しかもそれが殆どジャスデビがしくった仕事の後始末なんだからこの場で仕返ししないでいつするっていうの。
「……じゃあ2番と4番」
「ヒッ?!」「え、僕ぅ?」
あ、ロード4番か。デロは2番ね。先に反応したのデロだしまず間違いない。っていうかロードには何もしないでおこう。
触らぬロードにたたりなしだ。うん。4番は除外。ってことは残り1番と3番と5番のどれかがデビって事だよね?
「やっぱ2番と3番」
「…己か?」
3番はスキンか。スキンにはいつもケーキ貰ったりしてるしあんまり可哀想な事できないっていうか怒らせると怖いもんね。
「……2番と5番?」
「私ですカv?」
「………」
ってことは1番がデビか。よし。1番と2番だ。うん。千年公は怖いからやめとこ。あとで仕事押し付けられたら嫌だし。
さぁ日ごろ溜まった鬱憤晴らさせてもらうわよジャスデビ!
「……1番と2番。これ終わったらロードの宿題と私の仕事変わりにやって」
「「えぇぇええぇぇえ?!何それちょっと酷くねぇ?!(ヒィィッ!)」」
「ん?何、王様の命令に何か不満でも?」
「「………いえすいませんでしたお願いですからそれ仕舞って下さい様」」
手榴弾のピンに手を掛けて言えばジャスデビは素直に土下座した。いい気味だ。
ロードはけらけら楽しそうに宿題よろしくねぇ〜と笑っている。うん、いい気味。
「じゃあ次行こう次ぃ〜♪」
ロードは宿題をジャスデビに押し付けられる名目が出来たから嬉しそうに割り箸を差し出す。
ティキは相変わらず帰ってくる気配もない。きっと気合入れてドレスアップされてるんだうわぁ夢に出てきそう。
げんなりと引けば私の番号は4番だった。王様は誰だろうなんて思ってたら手を上げたのは千年公。
「私が王様でスねvウフフフフフ」
その笑顔はとっても黒かった。っていうか笑顔が怖いです千年公。何たくらんでるんですかあなた。
千年公は私達をぐるっと見回すと顎に人差し指を添えて首をかしげて言った。可愛いつもりですかどっちかっていうと怖いです今は。
「そうですねェ、3番が1日5番の言う事を聞くっていうのはどうですカv?」
「やった僕5番ん〜♪」
「……ヒィッ?!デ、デロは嫌だよ!!!!!」
3番はデロで5番はロードらしい。ジャスデロ、ご愁傷様。
スキンとデビと私は揃って胸を撫で下ろした。ロードが何をするかわからない上きっと酷いことをされると安易に想像できたからだ。
「じゃあデロぉ。とりあえずティッキーんとこ行ってデロも女装してきてぇ」
「ヒッ?!い、嫌だよ!」
「王様の命令は絶対、だろぉ?」
「そうそう、デロ、面白そうだからさっさと行って」
有無を言わさない笑顔でロードが言い、私が手榴弾を弾ませて言えばデロは一目散にリビングを出た。
ちょっと可哀想だったけど面白そうだし、まぁいいとしよう。うん。
って事で第3回戦。
「わお、また僕王様ぁ〜♪」
「え、またロード?」
もしかしてロード何か仕組んでるんじゃないかな、って思ったけどやっぱりロードの笑顔と千年公が怖いから言えません。
だって千年公が怒ると本気で怖いのよ、そりゃもう1週間徹夜くらいの勢いで仕事押し付けてきたりするんだもの(経験済み)。
だからしょうがないの、うん。大丈夫よデビもスキンも千年公もいるんだし確率は4分の1。うん大丈夫よ私は大丈夫。
なんて考えてたら、ノックの音。ノックなんてするのはメイドアクマくらいだ。
お茶でも持ってきてくれたのかな、なんて思ってたらドアの一番近くに居たデビが扉を開けた。
開けたんだけど。
「げぇっ!!」
バダン、ってそりゃもう扉が壊れそうな勢いで半開きだったドアを閉めた。なんでか顔が青ざめてる。
どうしたのデビ、って聞いたらデビはドアを指差して震えてる。え、ドアの外に何があるの?
「、開けちゃだめだつーか絶対開けんなマジで悪夢だから頼むからあけないでお願いします!!!」
あけようと思ってドアに手を掛けたらデビに後ろから抱きつかれて拒否られた。
………えっと、これは、もしかしなくても、えっと、まさか、ドアの外にいるのは………
「ばけもの!ばけものがいっから開けるな!は今すぐどっか行ったほうがいい!マジ悪夢!」
………ティキ、なのね?涙目になってるあたり、本気で気持ち悪いんだろうなきっと。
私だって見たくないけど、開けるなって言われたら開けたくなるのは人間心理としてしょうがない。
ちらりと背後を振り返ったらロードは何処から出したのかカメラを構えているし、千年公は楽しそうに笑ってる。
スキンとデビは冷や汗流して固まってたけど、私だってロードのあんな楽しそうな笑顔見ちゃったら開けない訳にいかない。
私だって恋人が女装した姿なんて見たくないけど、それ以上にロードの笑顔が怖いんだよごめんねデビ。
がちゃり
前を見ないようにしてドアを開けた。目に入ったのはメイドアクマのメイド服の裾と靴。その後ろにピンク色のドレスが見えた。
「ぎゃははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」
「ぎゃああぁぁああ開けるなっつったのにのボケーーーーーーー!!!!!!!!!」
後ろから聞こえたロードの大爆笑とデビットの叫び声。
ぼしゅ、って音を立てて何回もフラッシュが焚かれてるあたり、ロードは写真を撮ってるらしかった。
でも私、本当に怖くて顔上げられないんだけどどうしたらいいのかな。今顔上げちゃったら私ティキの事嫌いになりそう。
っていうか、堪えられずに噴き出しそうなんだもの。
「ティッキーマジキモい!!!!!ぎゃはははははははははは!!!!!!!!」
「………、頼むから顔上げないでお願いだから今のオレを見ないで」
そんなティキの悲しそうな声に条件反射で顔を上げてしまった(気付いた時にはもう遅かった)。
瞬間、目に入ったのはばっちり姫メイクでピンクのふりふりドレスを着てピンクのレースふりふりボンネットを被ったティキ。
(っていうかよくこんなサイズのドレス持ってたねロードもしかしてこの為に用意させたとかないよね?)
その後ろに白いドレスで髪を縦巻きロールにされたデロが見えた。
「…………………………」
「……ちゃん?」
あぁ、ごめんティキ、見ないでって言われたら見たくなっちゃう人間心理を判って。
ってか、ごめん、そんな顔して見つめないで私なんかティキの事嫌いになっちゃいそう。
「………っ」
「あ、おい?!」
余りのショックな光景に私の意識は綺麗に途切れた。
ロードの笑い声と、デビとスキンとデロの叫び声が聞こえる中、私を支えたのは認めたくないけどティキだった。
「………きしょ、い……」
あれ、私今何かとんでもない事言った気がするよなんでティキ泣きそうなのっていうかその格好でそんな顔しないでマジキモいから
なんて事を考えながら私の意識はぷつんと途切れた。
私に触らないで!
きらいになんてなりたくないの、おねがいだから!
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もう何も言いたくないですやりすぎましたすいません
私こんなの書いてますけどティキ本命ですってことだけ言わせて下さい。
2007/05/10 カルア