ExtraPart12:きみがすき








「や、んっ!ティキ、ちょ、まってってば!」

「なんで」

「って、ここ、外っ!」


外でヤんの嫌い?って聞いたら殴られた。なんで。たまには違う刺激があったっていいじゃんか。
得てして素直になれないオレの彼女は今日も全力で抵抗してきます。でもオレには結局無意味。
確かに仕事帰りで此処は森ん中だけど、こんな森の奥に誰が来るっていうんだよ。誰も来ねぇからオレだって張り切っちゃってんのに。
それなのにはいつもの如くオレの胸を押し返して顔にパンチを叩き込む。オレが通過させらんないの知っててやるからタチ悪ぃ。


「たまにはよくね?」

「よく、ないっ!外はいやって何回言えば、っ」


たまにはさ、ベッドの上じゃなくってこういう開放的な場所でしてみてぇの。
オレだって男だからそういう腐った欲求なんていくらでもあるのよ?相手がなら尚更、さ。
そんなオレの気持ちを知ってか知らずか、外でヤろうって言って押し倒すといつもこの反応。
それがまた燃えるっちゃ燃えるんだけどね。ほら、嫌も嫌よも好きのうち?って言うじゃん?それだろ?


「えーオレ覚えてねぇなぁ」

「ちょ…っこんな時だけ、ずるいっ!」


現にの首筋舐めながら腰撫で上げてやれば抵抗する腕の力なんてすぐ抜ける。
オレに敵う訳ないっしょ?だってオレ、の何処を触れば力が抜けて感じるかなんて知り尽くしてるし?
最初の頃はそりゃあ仕返しが怖くって最後までなんてできなかったけど今は違うし。
なんでってそりゃ聞くだけ野暮だろ。その度に一晩ぶっ通しで壊れるくらい抱いてっから。
鬼畜だとかなんとかは言うけどお前愛があるんだからそりゃ的外れだ。愛してるからこその行為だって何で判んねぇかなぁ。


「てぃ、きっ!」

「んー?」

「や、ぁっだぁ…!ひぃんっ!」

「やだとか言ってる割に啼いてんじゃん?」

「き、ちく…っ!さでぃすと!」

「ハイハイ何とでも言っててオレ別に気にしないから」


そう言いながらの服を脱がしにかかる。相変わらず脱がしにくい服着てっけどそれがまた燃えるよなぁ。
つっても背中はガラ空きだから問題にすらなんねぇけどな。コルセットは面倒臭ェけど。
なんてーか、プレゼントの包装剥ぐみてぇで興奮すんの。変態?んな事ねぇよオレはいたって正常だ。


「やぁんっ!」

「ほら、やだとか言っててもちゃんと反応してんじゃんお前可愛いなぁ」

「ば、かっ!しね!」

「え、それ恋人にかける言葉?酷くねぇ?」

「私は嫌だって、言ってるのにっ!こんなとこ、でっ、盛るティキが悪いの!」


涙目で見上げられても煽られるだけなんですけど判ってますかちゃん。自覚ないでしょお前。
第一さ、本気で抵抗すれば逃げられんのにしないって事はオッケーってことじゃね?
顔赤いし、ばっちり感じてるときの声だし、息荒いしさ、ねぇちゃん照れ隠しいい加減にしようよオレそろそろ限界よ?


「いーじゃん、だってばっちり感じてんだしさぁ。たまには違う刺激があってもいーじゃん」

「よくないっ!だい、たいっ!ティキはいつもそれば、っかじゃんかぁ!」

が好きなんだからしょーがねぇだろ男の生理現象なのコレは」

「…っ一年中、春爛漫だろティキの頭はぁっ!桃色花畑かっ!」


あ、ほらも言ってる事意味判んなくなってきてんじゃんそれって思考回路巧く働いてない証拠だろ?
素直になれっつってんのに結局いつもこうだもんこいつ。第一相手だから一年中春爛漫なんだっつーのに。
桃色花畑って、何?オレ恋人にどういう認識されてんの?いつものこととはいえこんなムードの中言われたら傷つくよオレ。


「何意味の判んない事言ってんの。いーから素直に抱かれとけ」

「や、だってばぁっ!ひゃぁ!どこさわってんのよばかぁっ!」

「どこって、の「いうなぁっ!」」


めきょ、って音立てての膝がオレのみぞおちに直撃。かなり痛いんですけどちゃん。ねぇちょっと。
いい加減その過激な愛情表現やめてくんないかなぁ、オレいつか死んじゃうよ?


「ティキの、ばかっ!わた、私は嫌だ、って、言ってるのにっ!」

「……?」

「シたくない気分の時だって、あるのっ!わたしはっ、ティキの性欲処理機なんかじゃないよ!ばか!」


両手放した隙にオレの下から抜け出したは木に凭れて肌蹴た服を引っ張り寄せて泣いてた。涙ぼろぼろ流して、大泣き。
あぁ、オレ忘れてた。最近すれ違いばっかで会えなかったから、気持ちばっか先走ってこいつのトラウマ忘れてた。
がこういう事にトラウマ持ってるってオレちゃんと知ってたのに、無視してオレだけ暴走してた。




「ティキはっ、違う、でしょ?!わたしを、ちゃんとっ」

「ごめん、、ごめん」

「“わたし”を、みて、あいして、くれるのに……っ今日のティキ、いや、こわいよ、やだ、」

、お願いだからオレを見て。謝るから、二度としないから」


伸ばした手は何度も払われて、でも此処で引いたらオレとは終わってしまう気がして、何度も何度もに手を伸ばして
触れた頬は涙でいっぱいで、拭っても拭っても涙は次から次へと流れてきてオレの手じゃ拭いきれなくって
あぁオレまたを泣かせてる。泣かせないって誓ったのに、オレの莫迦な欲求のせいでまた泣かせてる。


「ティキが、すきなのっ!だから、だからぁっ」

「ごめん、なぁ、お願いだから泣き止んでよオレもうの泣き顔見たくねぇよ」

「っティキが泣かせた、くせにっ」

「オレが泣かせたな、ごめんな。もう絶対しねぇから泣き止んで、いつもみてェに笑ってくれ」

「ティキ、」


の頬を撫でて拭いきれない涙は舐め取った。の全部はオレの物だから涙の一滴だってオレのもの。
なぁどうしたら泣き止んでくれる?どうしたらいつもみたいな笑顔見せてくれる?なぁ、オレ莫迦だから判んねぇよ
こーやって、お前の事抱き締めて背中撫でてやるくらいしか出来ねぇよ。なぁ。


「トラウマ抉って、悪かった。」

「………てぃ、き?」

「もうしねぇから、笑って」


オレの腕の中でオレを見上げたの大きな目は相変わらず涙が溜まってて、でも流れる事はなかった。
はオレの手を取って頬を摺り寄せて、は目を閉じながら、口を開く


「わたしね、ティキの手が大好き」

?」

「マメのつぶれた痕とかあって、ごつごつしてる手が、すき」

?」

「鉱山で頑張って働いて、苦労してる綺麗な手が大好きなの、ティキ」


頬にオレの手を摺り寄せたままが言う。オレは混乱してる。だってこんな事言われた事がねぇ。
の目は閉じられてて、でももう涙は流れてないからもう泣き止んでるんだって事くらいしか把握できない。
がこんな事言い出した意図がオレには全くわからなかった。


「なんで」

「ティキの手は、ちがうの。私を傷つける手じゃ、ないの」

「………」

「私を愛してくれる、優しい手だよ」

「…

「だから、こわくないよ。そんな顔しないで、ティキこそ笑ってよ」


はオレの頬を撫でる。オレ、そんな変な顔してる?そう聞けばは泣きそうな顔してる、って言った。
頬を撫でるの手は小さくてすべすべで暖かい。オレだっての手が好きだよ。
なぁオレやっぱに依存してる。の一言で、のちょっとした行動で、オレはおかしくなりそうだよ。


「………も笑えよ」

「うん、ティキが笑ってくれるなら、」


そう言っては笑顔を浮かべた。オレが大好きな、向日葵みたいな明るい笑顔。
きっとオレもに釣られて笑ってる。


「ティキ、私のせかいはあなただよ」

「あぁ」

「だから、ティキも笑ってて」

「あぁ」

「私はティキの笑顔が大好きなの。優しい笑顔が、大好き」


そう言って抱きついてくるの背に手を回す。相変わらずの身体はちっさくて、オレの腕にすっぽり収まる。
オレよりも高いの体温がオレの身体に移るみたいな、不思議な感覚。オレはこの感覚が好きで堪らない。


「………オレもだよ、


身体を繋げなくても、ただ傍にいるだけでよかったんだな。オレは何を一人で暴走してたんだか。
いつもが傍にいて、ただそれだけで幸せで、身体の繋がりなんて二の次で。
の体温がオレの身体にゆっくりと伝わってくのと同時に、オレの莫迦みたいな欲求も消えてった。


「ティキ、かえろう?」


オレを見上げて、オレのシャツを掴んでが言う。オレは何も言わずに頷いた。
もうちょっとだけこうしていたかったけど、がオレの胸に顔を埋めたまま呟いた一言でそうもいかなくなった。


(帰ったら、ティキの部屋で、いっぱいいっぱい愛してね)


そんなこと言われちゃったら、男として応えない訳にいかないっしょ。













Eu te amo,Meu Querido!








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あれ、ギャグで終わらせるつもりだったのになんでかシリアスだな(ぉ
タイトルの意味はアイラブユー、マイハニー!ポルトガル語ですよ!





2007/05/10 カルア