EX01:春は曙、変態の季節





「この変ッ態!!!!!!」



バツィン!ゴキャッ!ドガンッ!



空高く鳥が鳴くのどかな春の朝10時。
の怒声と凄まじいまでの破壊音が邸内に響き渡った。








「……なぁあの声の声だよな」

「ヒッ!ホームレス何かしたのかな!ヒッ!」

「…ま、大方んなとこだろ」

「っていうかさぁ〜。日曜日の朝っぱらから何してんだろーねぇ、学ナシティッキーはぁ」


一方、食堂。
ジャスデビとロードは3人でトランプ中。
この後この食堂に巻き起こるであろう ハリケーン・ の襲来を今か今かと待ちわびている
そんな悪ガキ3人衆である。


「あぁああぁああ腹立つ!!!!!」


バタァン!と大きな音を立てて扉を開き、ずかずかと乱入して来たのは渦中の人物、
身に纏っているかわいらしいワンピースとは対照的な彼女らしからぬ怒りのオーラに、3人は僅かながらに引いていた。
は近くにいたメイドアクマに不機嫌極まりない声で紅茶!と言うと、どっかりと椅子に腰を降ろした。

そんなを見て、悪ガキ3人衆は顔を見合わせて頷く。


〜?どぉしたのぉ?」

「…ロードにジャスデビ…」

「随分荒れてんじゃねーか?」


を中心にして椅子に座った3人を、は見まわす。
3人が3人とも、何か楽しそうな笑顔だったのを瞬時に察知したは、溜息混じりに話し出した。


「……誰かあの馬鹿埋めてきて」

「あの馬鹿って…ホームレス?」

「以外に誰がいる訳?」


は盛大に溜息を吐くと、メイドアクマが運んできた紅茶--ロード達の分も含め4人分--を手に取る。
砂糖とレモンを適当にカップに入れると、ティースプーンで一気にかき混ぜ、飲み込んだ。

普段の彼女であれば、まず砂糖は数を確認しながら入れるし、レモンにもこだわりがあるようで輪切りを吟味してから
かき混ぜる時は香りを楽しむようにゆっくりと混ぜ、飲む前には必ず紅茶の香りを味わう。
そうしてゆっくりと、なおかつ冷めない内に飲むのが彼女のいつもの紅茶の飲み方。

だがしかし今日はどうだ。紅茶の飲み方一つ取っても、明らかには不機嫌である。


「今日は何したのぉ?ティッキー」

「……聞きたい?ロード」

「うん、すごぉくv」


はロードにげんなりとした目を向け、ティーポットから新しい紅茶をカップに注ぎつつ、口を開いた。


「あのね、私昨日まで仕事だったじゃない?しかも結構な遠出で」

「そいや1週間くらいいなかったな」

「でね?帰ってきたでしょ?とりあえず柔らかいベッドで寝ようと思うじゃない?」

「そうだよねぇ〜」

「限界眠かったから化粧だけ落として寝たのよ。帰ってきたのも遅かったし」

「ヒッ。そーいえば深夜だったねェ」

「でしょ?そしたら何よ、起きたらあんなの隣にいるなんて」


「「「あんなの?」」」


ロード達はティキを“あんなの”と形容したに揃って疑問の声を上げる。
普段のであれば、ホームレスだの学ナシだのと罵りはすれ、“あんなの”と形容した事はなかったからだ。
は3人のその言葉に頬杖を突きながら頷くと、げんなりとした表情と声で言った。


「朝起きたら隣に白い方のティキがいた。それはまぁ良くあることだからいいんだけどね?
 いくらなんでも私の洋服着て寝てられたらびっくりするよね???!!!」


「「「の服ぅ?!」」」


予想もしなかったその言葉に、3人は上ずり軽蔑の意を含んだ声を上げる。
は溜息をつきながら頷くと、また言葉を続けた。


「しかも私とティキって身長差かなりあるじゃない?裂けてるのよ服が。
 私の服だから当然サイズも私のでしょ?ぴっちぴちのぱっつぱつなの。
 しかもスカートの丈短いからパンチラまでしてるし見えちゃいけないモンまで見えてるしで殺意沸いたわ」


「「「…………げろ」」」


どうやら想像してしまったらしい3人は顔を真っ青にして心底嫌そうな声を上げた。
はふつふつと湧き上がる怒りを抑え、更に言葉を続ける。


「酒臭かったしティキ昨日は確か仕事がひと段落着いたからって白い時の仕事仲間と打ち上げだったはずなんだよね。
 でもティキってアルコール無駄に強いし飲んでも呑まれる事って滅多にないじゃん?
 それなのに何をどう間違えたら私の服着て私のベッドにいる訳?いくらなんでもサイズが小さすぎるのに気付くよね?
 それも買ったばかりで袖も通してない服に……!あれすっごく高かったのに……!!!」


の怒りのボルテージは下がる事を知らない様で、の近くにあったカップがかたかたと音を立て始めている。
感情が抑えきれなくなったのか、の背にはいつの間にか翼が生えていて。


「大体ね?私が帰ってくる日ちゃんと伝えてあるのに宴会って何な訳?
 私が何の為に仕事早く終わらせて、疲れるのに能力使って飛んで帰ってきたと思ってる訳?
 それなのにあいつまだ帰ってないって言うし、しょうがないから寝たら翌朝あんなのが隣にいるのよ?
 そりゃ幻滅もするわよね……あの服だって着るの楽しみにしてたのに……!」


尚も感情の篭らない声で言うに、3人は珍しく恐怖を抱いた(普段のはとても優しいのだ)。
なんとか話題を逸らそうと、デビットは冷や汗混じりにに言う。


「…で、さっきのすっげぇ音は何だったんだよ?」

「あぁ、ティキに思いっきり平手打ちして蹴っ飛ばした。壁にめり込んでたけど。
 何なら見てきたら?面白い格好で壁にめり込んでるティキなんて貴重よ?」


「「「(うわぁ……)」」」


壁にめりこんでいる、というティキは確実に意識を飛ばしているだろう。
しかもあの音の大きさから察するに三途の川コース確定の様だ。
いくらノアが不死に近いとはいえ、3人はこの時ばかりは本気でティキを哀れんだのだった。





















(酒に強いからこそ、酒に呑まれたティキは--色んな意味で--危ない。)





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ティキぽんは久し振りに白い時の仲間と会ってハメ外しすぎちゃって
普段は絶対に呑まれない酒に呑まれてべろべろになって帰宅して
そんでちゃんに会いたくて部屋に行ったけどちゃんは当然寝ちゃってて
なんか寂しくなってこういう血迷った行動取ってればいいと思う。

ちゃんはそんなティキを見てこの人に着いて来て本当によかったんだろうかって考え込んでればいい。
4時間程して意識を取り戻したティキは必死でちゃんのご機嫌取りしてればいい。

そんで悪ガキ3人衆に撮られてた写真で散々からかわれればいい。


私ティキ本命ですよ?好きなひとほどいじめたくなるだけです。(なお悪いわ





2007/04/21 カルア