「………うそぉ」

ラビは一人驚きの声を上げていた。暇つぶしに本を読もうと入った資料室。
滅多に人の立ち入らない其処埃臭く、古めかしい本がそこかしこに並んでいる。
ブックマン見習いであるラビにとってはまさに天国。
そんな資料室の人目に付かない一角、見慣れた二人の姿があった。


『ユウ、足痛いからもうちょっとずれて』

『あぁ?ったくそんぐらい我慢しろよ、俺は任務帰りで疲れてんだ……』


に膝枕をされて日光浴している神田の姿。
会話は日本語なのだろう、ラビには理解できなかったが二人を包む空気はとても甘かった。
ラビは見てはいけない物を見たと踵を返したが、その直後聞こえてきたのはの甘い声。


『ん…ッちょっとユウ、ここ資料室…っ』

『知るか。誰も入ってこねぇよ』

『や、だってばぁ…ッ』


ラビとて健全な18歳の青年。
そういう事には興味がありすぎるお年頃だ。
こっそりと覗き見てみれば、の首筋に顔を埋める神田が見えた。


(あの二人こんなトコで何してんさー?!)


叫びだしたいのを必死に堪えて口を押さえる。
ラビは高鳴る鼓動を抑えてこっそりと二人を覗き見ていた(犯罪一歩手前なのはこの際置いておくとして)。


『…ユ、ウ…ッや……』

『1週間出来なかっただろーが。いい加減限界だ馬鹿』

『だからってこんなとこで…ッひゃぁっ』


の抵抗も意味を成さず、結局は床に二人もつれて倒れこむ。
ラビはこれ以上見てはいけない、でも見たい!でもユウもも怖いからあぁどうしよう!
と一人悩んでいた。


『ユウ…ッせめて部屋戻ってから…っ』

『くどい。限界だっつってんだろーが大人しくしとけ』

『やん…ッ!』

『…嫌だっつってる割に感じてんじゃねぇか?

『や、ぁっ…ゆう…っ!』


(わーまずいってまずいってマジでこれ以上見てたらオレ絶対殺されるさ!)


ラビは理性と葛藤していた。18歳、青春真っ盛り。
お年頃のラビには刺激が強すぎる。なんとか理性が打ち勝って、慌てて踵を返した。


(やべ…っ!)


が、その勢いで本棚の横に積まれていた本にぶつかり、バサバサと大きな音を立てて本が崩れる。
当然、二人もそれに気付く訳で。
途中で邪魔をされた神田は不機嫌に六幻を手に取り、音のした方向へと向かってくる。
コツン、と足音が止まったかと思えば殺気を纏った神田がゆっくりと視界に入る。


「……………テメェ」

「ユ、ユウ……」

「覗きとはいい度胸じゃねーかこのクソ兎ッ!」

「だぁあ!助けてさー!!」

「ラビ………」


叫ぶが早いか、神田は六幻を発動させラビに斬りかかる。
ラビは這いずるようにしてそれを避け、に助けを求めるが
で顔を真っ赤にしてイノセンスを発動していて。
見上げたの団服は肌蹴ていて、胸元を右手で押さえながら左手で弓を握り締めている。


、さん……?(これはもしかしてもしかするとオレってばピンチ?!)」


にっこりと浮かべた満面の笑顔の裏にどす黒いオーラと羅刹が見えたのは決して気のせいではない。
ラビは冷や汗が滲んでくるのをリアルに感じ取った。


「天誅ッ!!!!!」


はそのままラビに向かって思い切りイノセンスを振り降ろした。
能力を使わなかったのはせめてもの彼女の情けだろう。
それにしても本来の用途から大幅にズレてはいるが。
兎に角 ゴギャ という聞こえてはいけない鈍い音を立ててラビの頭にそれは直撃した。
はその後気絶したラビの首に

“覗き魔ラビ。変態警報発令中!お仕置き中につき降ろさないこと。&神田”

と書かれたプレートを下げると、エントランスホールのシャンデリアに吊るした。
最後に書かれたと神田の名前の効果もあって、ラビは翌日の夜中まで其処で晒し者にされるのだった。

















(だから頼むから降ろしてさ!)





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携帯サイト「まぼろしらんぷ」開設記念・フリリク企画作品。
もこ様へ献上した作品です





2007/05/17 カルア