『ティキ』


そう言ってオレを呼ぶ透き通る綺麗なソプラノが好きだった。
の声はいつだってオレの耳に心地よく響いてオレの心をいつも癒してくれる。
メモリーが惹き合ったからなんかじゃなくって
オレはオレとして、ノアとしてのオレでなくただ一人の男として
こいつを…を愛してる。
それだけは胸を張って言える確かな事だった。


『ティキ、』


オレを呼ぶ高く澄んだその声も、頬を滑る細くて白い指の感触も
オレに縋る細い腕も体も、オレと同じ漆黒の長くて細い綺麗な髪も
オレを見つめる綺麗な琥珀色の瞳も
みんなみんな----
の全てを、オレは愛してたんだ。


「----?」

「……ティキ、よか、っいき、て、」

「…お前何泣いてんの」

「だ、て…っティキ、あなた、ノア、ノア、がっ、」


あぁ、そうだ。オレはこいつの…
たった一人のかけがえのない女の目の前で
こいつとの唯一の絆であるノアを失ったんだ。
アレン・ウォーカーというエクソシストの手によって。
気付けばオレはの部屋のベッドにいて
は琥珀みてーに綺麗な金色の瞳からぼろぼろ涙零して大泣きしてて
泣きながらその細っこい腕でオレに縋った。
オレは白く戻った肌を他人事みてぇに眺めながら、縋るの背を抱いた。


「…でも、オレは、生きてんだろ、」

「…っティ、キ、あなた、は…っ
 わたしと、あなたの、絆は…っ」

「……消えねぇ。消させねぇさ
 たとえオレがノアじゃなくなって、を護る力をなくしても
 オレとの絆だけは消えたりしねぇよ、なぁ、お前忘れた?コレ」


手に取ったの左手は力を篭めたら折れそうな程細くて小さかった。
その薬指に小さく光るのはいつだったかオレがに贈った指輪。
もちろん、オレの左薬指にも揃いのモンがある。
…つっても、オレは孤児だからこいつに人並みの幸せをやる事なんてできねぇし
アクマだらけの日本でノアに目覚めたにももちろん戸籍なんてもんはないし身寄りもねぇ。
だからせめて形だけでもと思ってオレがこいつに作ってやったのがこの指輪だった。



「…でも、でも、ティキ、あなたはっ、あなた、はっ」

「…オレは、がいてくれるんなら他に何もいらねぇ。
 ノアとしての能力も、金も、地位も、何もかも」

「……っティキ、」

「ただ、を人間の男から護れるくらいの力がありゃあいい。」

「…ティ、キ、」

「だから泣くな。お前が泣いてるのはもう見たくねぇ」


髪を撫でた。
いつの間にか、の肌も灰褐色から--ノアの状態から--
普通の人間みてーな真っ白い肌に戻ってて、オレは少しだけ驚いた。
こいつはオレといるときに白い自分を見せるのを極端に嫌ったから。
…それが今、ノアを失ったオレの目の前で
はオレに決して見せなかった白い時の自分を見せている。


「----?」

「ノアを、すてれば、わたしは、」


ノアを捨てれば、貴方と同じただの人間になれば、私はティキと歩いていける?
何の枷も背負わずに、ただ二人で手を取っていつまでも歩いていける?

はそう言ってまた涙を流した。
オレは初めて見るのその表情に目を見開いて、多分間抜けな顔で硬直してた。
それでもは笑ってオレの頬を撫で続けてて、その笑顔はいつもみたいに優しかった。
----なぁ、こんな弱くなっちまったオレでもお前は変わらず愛してくれるのか?
ノアをなくして、よりも弱くなっちまったオレでも、おまえは。


「……お前がノアでも、ノアでなくても、オレは、」


その笑顔はとてもとても儚くて、でも気高さと美しさは変わらないままで
ただ頬を伝う涙だけがいつもと違った。
、こんなオレの為なんかに泣かないでくれ。
なぁ、オレはお前の涙が苦手なんだよ、知ってるだろ?
お前にはいつも笑ってて欲しかったから、オレは、


「……オレはがオレを愛してくれる限り変わらずにを愛してるよ。
 がオレを捨てたってそれは変わらない。オレにはもうだけだ」

「……ありがとう」


オレはこの笑顔を護る為に、ただの人間になっちまったけど
それでもこの笑顔を消してしまいたくはないから
の為にもう少しだけ生きてみようと思った。
----そしてこいつの腕の中で死ねりゃ幸せだ。
それ以上のことは望まないから、だから。


「…もう少しだけ、足掻いてみるさ」

「…ティキ、」


どうかの笑顔までは奪わないでくれ、オレらノアの神様よ。













(君が愛してくれるというのなら、オレは)





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