「うわ臭ッ何この臭い」
「あらティキ珍しいわねこんな朝早くにどうしたの」

そう言ってオレに背を向けたままはなにやらツボをかき混ぜていて、キッチン中に漂う異臭は間違いなくが手を突っ込んでぐちゃらぐちゃらとかき混ぜている謎の物体から出ている。恐る恐る覗き込んでみればは長袖をひじの上までめくって、異臭を放つ茶色の物体をかき混ぜていた。何してんのこのこ。

「いやなんか変な臭いがしたから…ってかお前何してんのそれ何よ」
「これ?これはね糠床って言って、ティキがよくビールのつまみに食べてるジャパニーズピクルスはこれに漬け込んで作るのよ知らなかった?」
「ヌカドコ……ってか何、お前オレにそんな得体の知れないモンで作った食い物食わせてた訳?」
「やぁね得体の知れないとか失礼な事言わないでよこれおばあちゃんから貰った大事な糠床なのよ。もう70年も使ってるからいつも食べてるジャパニーズピクルスおいしいでしょう?」

70年っておまえそれ腐ってんだろ。
そう言えばはヌカドコに突っ込んでた手であろう事かオレの髪の毛をぐっちゃぐちゃにしてくれた。そりゃ寝起きだから寝癖は酷いけどさ、何もそこに悪臭までプラスしなくてもいいんじゃないかなぁちゃん。

「失礼なこと言わないで!いい?糠床っていうのはね、年数が経てば経つほどおいしいジャパニーズピクルスが出来るのよ!それをあんたね、いつも旨い旨いって食ってるくせに言うに事欠いて腐ってるですって?!」
「ああああお前なんてことすんだよ臭い取れなかったらどうしてくれんだよオレ今日仕事でブローカーに会わなきゃいけないのに!」
「ティキが悪いのよ!糠床って生き物だから朝晩かき混ぜてやらないと腐っちゃうの!」

はそう言いながら精一杯背伸びしてヌカドコに突っ込んでた手でオレの襟首を掴んでがくがくと揺さぶる。あああお前服にまで臭いつくだろやめろよばか!

「っ日本の文化ばかにすんなよ!」

がヌカドコから悪臭を放つ茶色い物体を掴んでオレの顔に投げつけたもんだからオレは悪臭に耐え切れずその場にうずくまった。いくらなんでも酷すぎるだろ、

「く、臭ぇ…!おまえな何もこんなもの投げつけなくたっていいだろ!」
「ふん。いいわよティキにはもうさんお手製のジャパニーズピクルス食わせてやらないんだから」
「えええ、あれ旨いのに!」
「腐ってるんでしょ?別にいいわよ無理に食べてくれなくても。千年公は美味しいですネvって食べてくれるもの。ジャスデビもロードもスキンくんでさえ食べてくれるのにあんたってひとは!」
「いや、あの、ごめん
「今更謝ったって遅いわよばーか!」

べちゃ。
そんな嫌な音を立ててもう一回オレの顔を茶色い物体が直撃して今度こそオレは異臭に意識を失いかけた。





える


(どんな酷い仕打ちをされたってオレはキミを愛してるんだ、ケリード・アモーレ!)





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携帯サイトさよならマーメイド夏休み企画第一弾。
最近の若いコは糠床ってあんまりなじみがないんじゃないかなあ。私は毎日漬けてます。結婚するときにばーちゃんに分けてもらった糠床は今日も元気においしい糠付けを作ってくれてます。実家の八百屋で売ってるばーちゃんの糠漬けは店に出して2時間経たずに売り切れます。きゅうりとかぶとだいこんとキャベツ、それぞれ50個仕込んで2時間で完売ってすごいよなあ。