「ラビー!!!!!何処隠れたんや出てこんかぁああああああ!!!!!!!」
あぁ、今日も始まった。
アレンはそんなの叫び声を遠くに聞いてため息を付いた。
夫婦漫才。
「アレン!!!!ラビの阿呆見ぃひんかった?!」
バターン、とすさまじい音を立てて談話室に飛び込んできた。
その手には巨大化したハリセン…彼女のイノセンス…が握り締められていた。
そういえばラビは昨日オフだったなぁ。きっとまたなんかしたんだろうなぁ。
アレンは遠い目をしてお騒がせ者のブックマンを頭に浮かべた。
「いえ、此処には来てませんけど。何かあったんですか?」
「何があったかやって……?ふふ、ふふふ……」
ぶわあっと黒いオーラがを包んだ(様に見えた)
アレンは聞いてはいけない事を聞いてしまったと後悔しながら後ずさった。
「あンの阿呆、うちの目ェ盗んで女と密会してよった」
「(いい加減にしろ…!)」
「珍しく朝もはよから起きとったから何かと思うて後つけてったらな…
あの阿呆、街中で女と抱き合ってよってな………。
よりにもよってあんな頭軽そうなパーチクリンと………!!!!!!!!!!」
ごごごご、と周辺の空気が震えたかと思えば、彼女のイノセンスがまた巨大化する。
寄生型じゃないのにどうして感情に左右されるんだ…! とアレンは口に出さず叫んだ。
「お、落ち着いて……ね?」
「此処におらんのやったら別にえぇねん。見かけたら連絡よろしくな」
「ハ、ハイ」
すさまじいまでのオーラを放ちながらは談話室を後にした。
嵐が去ったとばかりにアレンは安堵のため息をつき、読んでいた本に目を落とした。
「おったー!!!!!!待たんかラビイィィイイイイイ!!!!!!!」
「ごっごめんさー!!!!!!!!」
ドガァアァアアアン
ピシリ、とアレンが凍りつく。
自分の耳がおかしくなっていなければ、あの轟音は間違いなく談話室へ向かっている。
このままここにいたら自分の命も危うい。早く逃げなければ…!
ガシャアァアァアアアアン!
あぁ、遅かった。
アレンは盛大にため息を付くと、完全に崩壊した扉の方を見た。
案の定、巨大化したハリセンを般若のような表情で握り締めると
床にへたり込みに向かって謝罪するラビの姿があった。
「ええ加減往生しぃや!!!!!!」
「ちょ、ま、話を聞くさ!!!!!!!!」
「言い訳なんぞ聞きとうないわ!!!!!命取ったらァアァァアア!!!!!」
「ギャー!!!!アレン、助けてさー!!!!!!」
「僕まで巻き込まないで下さいよ!!!!!!」
アレンの姿を認識したラビがアレンに抱きつく形で突進してくる。
そのすぐ後ろからは、殺気を放つ…既にイノセンスは振り下ろされる直前…がいた。
「アンタなんか死んでまえ阿呆ー!!!!!!!!!」
その叫びと同時に彼女のイノセンスが振り下ろされる。
一瞬の事に反応が遅れ、アレンはラビ共々瓦礫の下敷きになるのだった。
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「……で、どうしてこんなことになったのかな?」
その日の深夜。コムイに呼び出されたアレンとラビとの3人。
アレンはこの状況に どうして僕まで…! とまたも涙を流しそうになった。
「……ラビが浮気しててん」
「ちょっと待って、あれ浮気と違うさ!」
「…抱き合ってたんは事実やろエロウサギ」
ハァ、とコムイが盛大にため息を付いた。
僕だってあきれますよ とアレンは毒づいた。
「……それでちゃんが怒ったんだね?」
「……ん」
「イノセンスを発動して、談話室を半壊させたんだね?」
「……ハイ」
コムイがまたも盛大にため息をつくと、ラビに向き合った。
「…ラビ。今回のことはどう考えても君が悪いね」
「ちょ、どうしてさ!」
「……ちゃんという恋人がいるにも関わらず女性と密会は駄目だよ」
「………」
「そういう訳で」
ニヤリとコムイが質の悪い笑みを浮かべてラビを指差す。
ラビは体を駆け抜ける悪寒と悪い予感に冷や汗を流した。
「ラビ君、罰として1ヶ月風呂掃除ね」
「何でオレだけさ!」
その日から泣きながら大浴場を掃除するラビの姿が見えたとか、見えなかったとか…
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ハリセン振り回す女の子が好きです
2006/08/28 カルア