Today,I closed my eyes alone,
I think you in the heart, which isn't dirty.



























灰色メランコリア 25






















「ノア様…私ハ行かなくてはなりませン…」

「……そうね……」

「私の背ニ、掴まっテいて下サい。せめテ上空まデ、」

「………ありがとう」


が背を預けていたアクマはそう言うと、既に集まり始めている仲間達の許へ飛び上がった。
の姿は無数のアクマに隠されラビ達には見えていなかったようで、は安堵の溜息を吐いた。


「お気ヲつけて」

「うん、ありがとう」


アクマはを融合した巨大アクマの首--うなじの部分--に下ろしてそう言うと、巨大なアクマと融合した。
はアクマに背を預けたまま座り込み、未だ混乱する思考回路を断ち切るように空を見上げていた。











***








「………っ!!!」


ティキと対峙しているラビの目にもその巨大なアクマは映る。
驚いた顔でアクマを見上げるラビに、ティキは容赦なく攻撃を加えた。


「余所見してる場合じゃねェぞ」


ラビがその攻撃を槌で受ければ、その衝撃で右手を吊っていた布は剥がれとんだ。
そんなのに構っていられない、とラビは槌を両手で握り、ティキは何処か楽しそうな声でラビに言う。


「おっ。右腕動かせんじゃねェか」

「ちくしょ……こりゃ痛ェとか言ってらんねェな……っ」


ラビは右手の感覚を取り戻すように強く柄を握り、判を使う体制に入る。
ティキは始めてみるそれに思わず飛びのき、ラビは冷や汗を流したままティキに言う。


「あんた何でも通過する能力があるみたいだけどイノセンスは別だったりして。
 あの時…アレンの左手に一発くらってたさ。
 お前らノアもアクマ同様、イノセンスが弱点なんじゃねーの?」


ラビは素早くティキに向かい攻撃を仕掛ける。
ティキはそれをティーズを盾にし防ぎながら、楽しそうに声を上げた。


「ティーズ、デカい獲物だぜ。祭りだ、祭り♪」


ティキのその言葉の直後、巨大なアクマの周囲が光に包まれる。


『悪星ギーター……』

「!来るぞっ!」


ノイズ交じりのアクマの声の直後、無数の光線が江戸の町に降り注いだ。


「刻盤発動!!
 この建物の周りを停止化した時間の壁で包囲!時間が流れなければ攻撃も起こりません!
 時間停止!!」


ミランダのイノセンスの力によって、リナリーたちがいる建物には何の異変も怒らなかった。


「おおっ!やるな、女!」

「でもこれ長時間はだめなんです……あのアクマをなんとかしてください……」

「判った!」


ミランダはへたり込みながら弱弱しい声で言う。
恐らく体力の消耗が激しいのだろう。ここ数日、ずっとイノセンスを発動し続けていたのだから無理もないが。


「私も……っ!」

「リナ嬢はここに!その足で戦うのは危険じゃ!」

「あのアクマは頭上から攻撃するしかないわ!私の靴じゃなきゃ……っ!」

「おぬしには“ハート”の可能性がある!最後まで戦うな!」

「でもブックマン!!」


「オイラが奴の脳天まで運んでやるっちょ!」


今にも飛び出していきそうなリナリーに、ちょめ助が言う。


「オイラも…そう長くお前達といられないんだちょ…。
 実は改造されても殺人衝動は抑え切れねェんちょよ…
 じきオイラはお前たちを襲いだす……ここまで我慢できたオイラ拍手モンっちょ…
 最期ついでに手伝ってやる……」


震える声でいうちょめ助の体の震えが強くなる。
ちょめ助はふわりと浮き上がると、ブックマンがちょめ助に聞いた。


「殺人衝動が起こったらどうなるのだ?」

「マリアンが自爆するようセットしてくれてる」

「それが改造アクマの末路か……」


アクマに転換したちょめ助の腕に、クロウリーとブックマンが乗る。
しっかり掴まってろ!と言うと、ちょめ助は屋根を勢い良く蹴って飛び上がった。












***














「いいじゃねーの♪ボクらも行くか?」

「ドキドキ!」


攻撃を止めることのないアクマのうなじから下を見下ろすジャスデビ。
恐らくは下に下りてエクソシスト相手に暴れようと思っていたのだろう。


「ジャスデビv」


が、それを知ってか知らずか、伯爵がレロを片手にふよふよと近づいてきた。
ジャスデビは伯爵を見上げながら少々間の抜けた声で返事を返し、はちらりと伯爵を見た。


「今すぐクロス・マリアンの元へ飛びなさイv奴の動向が気になって来ましタv
 奴らの江戸襲撃…クロスが仕組んでいる気がしまスv
 あの男…狙いはノアの方舟かもしれませんよ〜v」

「クロスの目的が方舟ォォォ?」

「なんで?つかだったら早く新しい方舟で江戸出たほうがいんじゃねーの?」


デビットが伯爵を見上げて言う。


「新しい方舟は今の方舟のプログラムをダウンロードしないと起動しませンv今ロードがやってるところでスv」

「それってボクらも手伝えねーの?」

「できん」


スキンがすっぱりとデビットの言葉を切り捨てる。


「ノアの方舟の“奏者”の資格があるのは千年公と長子のロードのみ!お前らには無理だ!」

「うっせーよハゲぶっ殺すぞ」

「ねっ社長!どうして今の方舟は江戸から離れられないの?」


ジャスデロのその疑問に、伯爵は少々躊躇ってから口を開いた。


「……お前たちがまだ生まれてくる前の話ですヨvノアにはもう一人“奏者”がいた事があったのでスv
 そいつが裏切って箱舟を狂わせたのですヨv」

「「ノアがぁ?!」」

「殺しましたけどネvそいつは“奏者”の資格をどっかの誰かに与えてしまったのでスv
 それから方舟は江戸との接触を解除できなくなり、その誰かしか場所を移せなくなったのでスv
 ……だから我輩は新しい方舟を作りましタv穢れた人間の手に堕ちる方舟などもはや我らの舟ではなーイv
 ティキぽんに暗殺を頼んだのはその裏切りノアの関係者でスv……ここまで言えば判りますネv?」


ジャスデビは考える。今の伯爵の言葉をよく反芻して。
ピーーーン、という音とともにひらめいた二人は甲高い声で叫ぶ様に言った。


「「クロスだってそれクロスだぁって!!あいつティキのリスト入ってたもん!超強ぇーし!!超エラソーだし!!
  持ってるよ千年公!!あいつ絶対“奏者”の資格持ってるって!!!!!!」」


ギャーギャーと叫びながら言うジャスデビの余りの声量には眉をしかめて耳をふさいだ。
伯爵は半ば呆れた表情で--もう言うのも面倒くさいからさっさと行け的な--言葉を二人に投げた。


「だからそれを確かめてきなさいっテ……言ってるんでス……」
















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短いけど一回切る。
ちゃん、混乱しすぎて頭がついてってないんです。きっと。




2007/04/14 カルア