This star is you, and ephemeral.
       I can't return anymore,
           attaching color to the bloom in the sky....























灰色メランコリア 27


















「いかん……我らより……クロス部隊の心音が弱い…っ」


伯爵の攻撃によって焼け野原と化した江戸の街。
エクソシスト達は辛うじて死は免れたものの、皆重症のようで。
次第に意識を取り戻すも、立ち上がることすら困難な程だった。


「う……リナ…リ……」

『ラビ……』


機械を通したようなリナリーの声がラビの耳に届く。
残る力を振り絞って身を起こせば、視界の端に入るリナリーのイノセンス。
それは船上で見た物と同じで、リナリーの体を守っていた。


「!!また……っ」

「おい…何だこれは……?!」


『神田……ラビ……みん…な……皆…皆…っ!!』


リナリーのイノセンスが強い光を放つ。
伯爵がそれに気付かないはずもなく、伯爵は上空で疑問の声を上げていた。


「リナリー・リーの声なのか……?!こんな音は…聞いた事がない…!」


マリは耳に手を当てて言う。
その耳にティエドールの叫びに近い声が届いた。


『マリ!危ないよ!伯爵がリーを見てる!!』

「危険だぞ神田!!」


その声にハッとして周囲を見渡せば、神田に向かってくる影。
その影に声を張り上げた。
神田は六幻を発動し、近づいてきた影…ティキの攻撃を防いだ。


「もらうよ彼女。もな…」

「チッ!」


ドォン、と土煙が上がる。
ラビは神田に気を取られて気付かなかった。
自分にもノアが近づいていた事に。


「甘いのは好きか?」


ふっと自分の前に現れた影に、ラビは反射的に槌を構えてスキンの拳を防ぐ。
先ほどと同じように攻撃の態勢に入った巨大アクマを見て、ティエドールはイノセンスをその手に取った。


「楽園ノ彫刻、発動……この世の美しさを知りなさい。」


ティエドールのイノセンスは巨大な彫刻に使うノミの様になる。
それを地面に突き刺すと、もう片方の手に現れた十字架でその杭を地面に勢い良く打ち込んだ。


「アート!!」


ティエドールのイノセンスを中心に、マネキンのような人形が現れた。
その人形は巨大アクマと並ぶほどの大きさで、巨大アクマをいとも容易く地に伏せた。


「く……っ」


スキンの力に押され気味だったラビの目に、リナリーに近づく伯爵の姿が映る。
ラビは目を見開きリナリーの名を叫ぶが、伯爵の両手には既に黒いエネルギーが集中していた。


「いやぁあああ!!!!」


その瞬間、空が割れた。
そこに現れた方舟から現れたのは、アレン。
アレンは伯爵の攻撃を防ぐと彼を見据えた。


「……こんばんワvまたお会いしましたネv
 アァ〜レン・ウォォ〜カァァアァv」


アレンは伯爵を睨んだままその手を掴むとリナリーから離れた。
伯爵は手にエネルギーを集めアレンに攻撃するがそれはいとも簡単に防がれた。
手にしていたレロが剣へと姿を変え、その剣で攻撃を加えるもアレンは左手で防ぐ。


「その姿…!vまるで“愚かな道化”を追い回す“白い道化”のようじゃあないですカv
 滑稽な子供ですねェ……v」


その言葉が紡がれた次の瞬間、二人を中心に爆発が起こる。
アレンは伯爵を追い、爆発によって起こった白煙から飛び出した。


「わっ」


その煙はラビの方へと流れ、何かが目の前に現れた事でラビは槌を盾に身を守る。
それは仮面のようで、一瞬アクマかとも思ったが自分の耳に届いたのは聞き覚えのある声で。


「ラビ?!」


アレンの姿にラビは驚き言葉を失う。


「伯爵がこっちに来ませんでし「まちやがれコラァ!!死ねェ!!」」


アレンの言葉を遮り、斬りかかって来たのは神田。
アレンは反射的に左手でその攻撃を防ぐ。


「神田?!」

「!!?どういう事だ……っ?!」

「僕が聞きたいんですけど」


神田はアレンを睨みながら力を込める。


「俺は天パのノアを追って来たんだ!!おいラビ奴知らねェか!!」

「あれ?そういやオレの相手してたマッチョのおっさんも……」


ラビと神田はあたりを見回す。
其処にノアの姿も伯爵の姿もなく、ラビは放心したように呟いた。


「どうなってんだ……どこにもノアがいねェ……?」



















***

















「面白かったのに。なして引くんスか千年公」


ティキとスキンは伯爵に首根っこをつかまれ引きずられている。


「あのエクソシストの女の子、ハートだったかも知んねェのに」

「重イ…v二人とも大きくなりましたネェv」

「聞いてます?ねェちょっと」


千年公はティキの言葉など何処吹く風でどうでもいい事を言っている。
ティキのツッコミもまぁ頷けるだろう。


「引越しまで四時間切ったんだよ、ティッキ〜〜」

「おっかえりぃ〜☆」


声の方に目を向ければ、窓から身を乗り出すロードと


「アラvロード、作業ご苦労様でシタv」

「飴一年分〜〜ん」

「ハイハイ」


ロードとに気付いたものの、千年公は足を止めずに進んでいく。


「逃がすんスか?」

「まさカv」

「よねー」


ティキはタバコを吹かし視線を逸らしたまま言う。
はゆっくりと空に浮くと伯爵の隣に並んでゆっくりと飛ぶ。


「キミの『お仕事』も戻ってきましたヨv」


ティキはその一言に目を見開き、伯爵を見上げる。


「えっ?!マジすか?生きてた?左腕も?!」

「ピンピンしてましたヨ。見事に邪魔されましたv」

「(あちゃぁ〜)」

「ティキださーい」


ティキが気まずそうに視線を逸らし、はからかうようにティキに言う。
ロードが窓から飛び降り、伯爵の肩にしがみつきながら聞く。


「ね〜何のハナシ〜?」

「ティキぽんの不甲斐ないハナシでスv」

「へぇ〜〜〜〜?」


ロードが何かに気付いたように路地を見やる。
そして伯爵の背中伝いにするすると降り、ティキに言う。


「ティッキー(タバコの)銘柄変えたぁ?」

「何だよいきなり……変えてねェけど?」

「……そぉ…」
















***

















「改造アクマ、生成工場、ノアの方舟ねェ……
 私が日本に来たのは適合者の探索任務の為なんだよ。あの男に協力する気はサラサラ無いんだ」


一方エクソシスト達は川にかかる橋の下にいた。
ミランダが皆の傷の“時間”を刻盤で吸い出している。


「自分以外の人間は道具としてしか見ていないというかさ。
 護衛のキミ達はマリアンと改造アクマの立てた筋書きの囮に使われたんだよ?
 どう考えてもね。判ってる?」

「はい。警告を受けた上で来ましたので、予想はしておりました」


ティエドールのその言葉にブックマンは抑制の無い声で答える。
ティエドールは唸りながら頭を掻くと再び口を開いた。その声は先ほどとは違い感情の篭らない低い声だった。


「…今この世に存在するエクソシストは教団にいるヘブラスカにソカロとクラウド、マリアン、そして……
 ここにいるたった九人しかいなくなってしまったんだよ。
 ならば今は千年伯爵と戦う時じゃないし、キミ達はそれまで生き存えるのも使徒としての指名だと私は考える。
 クロス部隊は即時戦線を離脱するべきじゃないかな」


確かにティエドールの意見は的確であり最善の方法。
だがしかし今此処で引く訳にもいかないのだ。


「リナリー」

「アレン…くん……?」


眠っていたリナリーが目を覚ます。真っ先に視界に飛び込んだのはアレンとラビ。
二人とも優しい微笑を浮かべてリナリーを見下ろしていた。


「はい。すみません…すみませんでした、リナリー」

「どうして謝るの……?スーマンのことなら、アレンくんは救ってくれた…」


リナリーはゆっくりとアレンの頬に手を伸ばす。


「無残に殺されただけじゃないよ……スーマンの心はきっと、アレンくんに救われてた……」


リナリーの手が、アレンの頬に触れる。
アレンはリナリーのその言葉に涙を流し、リナリーもまた涙を浮かべてアレンに言う。


「おかえりなさい、アレンくん」

「……だ…い…ま……ただいま、リナリー」


アレンは頬に触れるリナリーの手に自分の手を重ねて言う。
隣でラビが茶化すようにそんな二人をからかっていた。
安堵感を含んだ空気が流れたかと思えば、リナリーの周囲に五芒星が描かれた魔方陣のようなものが浮かぶ。
リナリーの体は一瞬でそれに吸い込まれ、アレンはリナリーの名を叫ぶ。

皆もそのアレンの叫びに何か異変が起こった事を察知し、アレンの方を見た。
アレンが地面に消えていくリナリーに手を伸ばすと、アレンもその魔方陣に引き込まれていく。


「アレンッ」


ラビが手を伸ばす。ティエドールは声を張り上げ、神田とクロウリーもアレンを止めるべく魔方陣に向かう。
一瞬強い光があたりを包んだと思えば、魔方陣は消えていた。
神田、ラビ、アレン、クロウリー、そしてチャオジーの姿と共に。


「何だあれは?!空から変なものが…!!」


キエが声を張り上げ空を指差す。
その声に橋の下から飛び出して空を見上げてみれば、そこには巨大な立方体が見えた。
周囲の空はまるでジグソーパズルのように欠け落ちている。


『……---…-----…』

「(ブックマン…何か、言ってる…?何処の国の言葉……?)」

『ノアの方舟、出現……5人のエクソシストの行方は、恐らく……』


ミランダはぶつぶつと異国の言葉で呟くブックマンを訝しげな視線で見つめていた。





















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だからちゃんどこいったんだってハナシで。
名前変換少ねェよコンチキショウ!





2007/04/15 カルア