「…さん戻って来ませんね」

「迎えに行くんもなーんか気まずいしなぁ……」

「……どうするであるか?」


汽車の窓から、ティキとのやりとりの一部始終を見てしまった3人は
汽車が出て15分経っても戻ってこないを心配していた。
連れ戻しに行くのは簡単だが、どう言葉をかけていいのかもわからない。


「……戻ってくるの、待つしかないですよね……」

「そうさな……」


呟いたアレンにラビとクロウリーは頷き、窓の外へ視線を投げた。
























灰色メランコリア Ver.P-Type 23




















「……ティキ……っ」


はデッキで、扉にもたれて座り込んだまま涙を流していた。
思いも寄らぬ再会。そして思いも寄らぬ贈り物。
指輪の外見から察するに、かなり高級な物なのだろう。
この指輪を自分に贈る為にティキはどれだけ頑張ったのか。
そう考えればまた涙は流れてくる。


「……っばか……」


は左手の薬指に通した指輪を握り締める様に包んだ。
ひんやりとした銀の感触が指に伝わる。


「……こんなの、より…っ自分の物、買いなさいよ……っ」


そう毒づいて見るが、その口元は嬉しそうに上がっている。
涙も、別離の悲しみから贈り物の喜びへと変わり、の表情はいくらか和らいでいた。


「…戻らなきゃ……」


涙を無理矢理止めて、呼吸を整えるとはアレン達が待つ車両へ戻って行った。
途中、化粧室に寄って顔を洗うと、腰に下げたポーチに入れておいた化粧道具で軽く化粧を整えて。












***











「……ただいま」

「「「(さん)!!!」」」


ひょっこりと顔を出したに3人は驚く。
が、が笑顔を浮かべていたので、とりあえず心配はないようだと安心した。


「ごめん、なんか……その、」

「いーっていーって。気にすんな!」

「……ラビ」


ラビは笑いながらの肩を叩く。
はラビのその行動に笑みを漏らすと、ありがとうと小さく呟いた。


「……?、その指輪は…?」

「………彼に貰ったの。さっき。」


ラビの手を下ろすの左薬指に光っていた指輪。
それを見つけ、遠慮がちに聞いたクロウリーに、は満面の笑顔で返す。
その笑顔はとても幸せそうで、ラビとアレンは顔を見合わせると頷きあった。


「なぁマジであいつの彼氏だったん?」

「?うん、そうだけど」

「意外である」

「え?何が?」

、なんていうか面食いっぽいイメージあったからさ」

「うわ、それってすごい失礼だよっていうかラビにだけは言われたくないなそれは」


は隠す必要がなくなったこともあり、開き直った様に質問に答えていた。
現にリナリーは知っている訳だし、まぁどうなる訳でもないだろうと考えた為だった。


「そうですよラビ。人は外見で判断しちゃいけないんですよ」

「そうであるぞ。きっとにしか判らぬ良い所があるのであろう」

「え、ちょっと待ってなんでふたりしてオレの事軽蔑した目で見てるんさ?」

「事実でしょう。ラビは胸が大きくて美人な人なら誰でもいいってリナリーが言ってましたよ」

「え゛。ちょぉまってそれ大きな誤解さオレどっちかってーと美乳派さ?!
 ちっこくても形がよくて触り心地よくて感度も良好ならいーんさ!
 肝心なのはむしろ大きさじゃなくて感度と形で!
 デカいだけじゃダメな「黙れ変態っ!」ぶっ」


アレンのその一言に昼間からピンクな話題を出したラビをがどつく。
もちろん、木槌に転換した右手で、だ。
アレンとクロウリーはの鬼気迫る表情に冷や汗を流し、ラビはその衝撃で昏倒した。


「………ったくこの変態は」

「…はは……」


アレンとクロウリーは、そんなに苦笑いを零す事しかできなかった。
そんな4人を乗せて、汽車はなおひた走る。
心地良いレール音を響かせて。
























***



















「う゛ー……」

「あ、ラビ起きましたよ」

「そのまま眠ってりゃよかったのにこの変態」

「ま、まぁ落ち着くであるよ


小さく呻いて頭を抱えたラビにアレンが気付く。
は相変わらずの毒舌でそれを切り捨て、クロウリーが冷や汗混じりにを宥めた。


「……あり?オレ……」

「ラビ、発言には気をつけたほうがいいですよ」

「……あ(そうだったオレの木槌でどつかれて…)」


段々と意識がはっきりしてきたラビの耳にアレンの忠告が聞こえた。
ラビは先程の出来事を思い出し、の前では下ネタは厳禁、と心に刻むのだった。


「……、ごめんさぁ」

「別に。ラビが遊び人だってのはよく判ったから。
 頼むから半径3メートル以内に近づかないで変態が遷る」

「………(うわぁーこれ絶対許してくれてないさー……)」


すっぱりと切り捨てたに、ラビは冷や汗を流して硬直した。
は不機嫌そうに窓の外に視線を投げている。


さん、次の駅で食事買って来ましょ?お腹空きません?」

「……そういえば……そーだね、そうしよ」


助け舟を出したアレンのその言葉には笑顔を浮かべた。
ラビはそれに安堵の溜息を漏らすが、その後もはラビと目を合わせようとはしなかった。





















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閑話休題的なアレですね








2007/05/04 カルア