「………部屋がないぃ?」
素っ頓狂な彼女の叫びがロビーに響いた。
「一部屋しか空いてないそうである」
困ったであるな、とクロウリーは頭を掻いた。
いくら同僚とはいえ、年頃の女性と同じ部屋というのはよろしくない。
彼女は気にしない様子ではあるが。
「どうにかならんの?」
「申し訳ありません……」
捜索部隊の2人は、私たちは野宿で構いませんので…と既に旅館を後にしている。
私だけならば野宿でも構わないが流石に女性に野宿させる訳には…
クロウリーは一人頭を抱えた。
「なークロちゃん。うちと同じ部屋でもええ?」
「え、いや…わ、私は野宿でも構わないであるよ?」
「あかんて」
な? と小首を傾げながらも有無を言わせぬ瞳で見据えるに
クロウリーはその首を縦に振ることしかできなかった。
「おー、意外にベッド広いんやなぁ」
「……そ、そうであるな」
部屋に入ってからそわそわと落ち着く様子もないクロウリー。
ただ部屋の中を落ち着きなく歩き回り、が跳ね回るベッドの隅に腰を下ろしたのがつい2分前の事。
……彼女はどうも思っていないのだろうか
クロウリーはちらりとを見た。
「ん?どしたんクロちゃん?」
「い、いや…」
「あぁ、寝床ならうちソファでええし、クロちゃんベッド使うとええよ」
クロウリーは呆気に取られた。
いつもの傍若無人な彼女を知っているから、当然自分がソファで眠るものだと覚悟していたからだ。
「いいんであるか?」
「やってクロちゃんタッパあるし、ソファやと窮屈やろ。」
「そ、それはそうであるが…は女性だし…その……」
「うちならチビっこいからソファで十分やし。な?」
そう言ってベッドから飛び降りたが、クロウリーの前に立つ。
「うちかてわがままばかり言ってるわけとちゃうんやで」
そう言ってクロウリーを見つめる彼女の目は何処か寂しそうだった。
クロウリーは少し考えた後、大きな掌で彼女の髪を撫でた。
「……クロちゃん?」
「寂しければいつでも相手になるであるよ」
「………おおきに…」
俯いた彼女の頬が赤かったのは見て見ぬフリをした。
ずっとずっと友達
(そうやって言い聞かせて押し殺す淡い恋心)
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クロちゃんはきっとフェミニストだと思う
だって男爵だし!(黙れ
2006/08/28 カルア