私は花になりたいんだ。
たった一時美しく咲いて散っていく花に。
そう言って笑う彼女に、私は見惚れた。
「花、であるか?」
「そう、花」
「それはまた、どうして」
いつ死ぬか判らない毎日を過ごすよりはね
私はたった一瞬美しく咲いて散る花になりたい。
でもそれは叶わないんだけどね。
だって私はエクソシストだから。
「成る程。だが私はそのままのでもいいと思うであるよ?」
「……なんで?」
「今のままでも十分、花の様に綺麗だから」
「やだアレイスター、なんかその台詞似合わない」
「……そうであるか?」
そんな会話を交わしたのはいつだっただろう
あの時言った言葉は間違いなく本心なのだ。
向日葵のように、綺麗で明るい笑顔が印象的だった。
だから私は彼女に惹かれた。
確かに、忘れ得ぬ人がいる事は事実なのだが。
「」
「あぁ、アレイスター……はは。ドジっちゃった」
「待ってろ、今助けを…!」
「いい、いらない…どうせもう駄目だ」
目の前にいる彼女の銀糸の髪は疎らに紅く染まっていた。
抱きとめた手が紅に染まっていく
荒い吐息の間に紡がれるかすれた声
冷たくなっていく彼女の体。
お前まで私から離れていくのか。
……エリアーデと同じように、お前まで。
「弱気になるな」
「違う。自分の体は…自分が一番よく判るんだ……
だってほら、血が止まらない……目も、もう」
「…っ」
「アレイスター……」
く、っと服を掴む手に微かに力が篭った。
もう、彼女に残された時は残りわずかだろう。
ただ彼女を抱き締めてやることしか出来ない自分の無力さを呪った。
「こんなときに…言うのは反則かも知れないけど……っ
私は………貴方、が………」
その先は紡がれる事はなく、彼女の時は終わりを告げた。
ただ冷たくなった彼女を抱いて、私は静かに泣いた。
「……」
君は望んだ姿になれただろうか
美しくありたいと願った、その姿に。
ただ私の記憶の中の君は
大輪の向日葵の様な笑顔を浮かべている。
花に成った君
(美しく咲き誇る艶やかな、)
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自分の配布お題から流用
2006/08/13 カルア