世界は終わる
私の世界はこれで終わり

私のすべて、私にとっての世界が貴方だったから

貴方がいなくて、世界は終わる
私のせかいは、くずれておわる












































私が好きになった人は、ブックマンの見習いだって言っていた。
世界の全てを記録して伝えていく、そんな仕事だと彼は言っていた。
私にはそれが何なのか全く判らなかったけれど、悲しそうに笑う彼を放っておけなかった。
私はただの花屋の娘で、彼はブックマン見習いで
それはつまり、私たちに幸福な未来なんて有り得ないって事を示してて、それでも私たちは惹かれあい愛し合った
決して幸せな恋にならないんだとわかっていて、私は彼を愛したんだ


『---ラビ』

『ん?どしたさ、?』

『んー?しあわせ、だなぁーって、おもったの』


そうだ。ただ何もせず二人だけでいる空間が心地よかった。
あわせた背中越しに伝わる体温と心臓の鼓動だけが響く部屋が心地よかったの。
いつか離れなきゃいけない恋だってわかってたけれど私は確かに彼を愛していたんだ。


『---行っちゃうんだ』

『…俺はブックマンになるから』


ひとつのばしょにとどまることはできないんさ、ってラビは悲しそうに笑って見せた。私は泣いた。
ラビは私の涙を拭ってそれでも悲しい笑顔は消えなくて、私はまた泣いた。
なんでそんな悲しそうな顔をするのねぇやめてよ私はあなたが大好きなのにそんな顔しないで笑ってよ


『……と一緒には、いられないんさ』

『………ラビ………』


涙を拭うラビの指はとても温かくて優しかった もう涙は止まらなかった
だって私が泣き止んだらラビは私の手の届かない遠い遠いところへ行ってしまう気がしたから
ずるいって判ってて私は泣き続けた。ラビはただ困った顔で私の頬を撫でていた


『ラビは、ね、私の、世界の全てだった』

『うん』

『しあわせになんて、なれないって、わかってたの。それでも、私は』

『うん』

『わたしは、あなたを、あいしてるの、ラビ。』


ラビ、ラビ、ラビ、ラビ、ラビ
壊れたみたいに名前を呼ぶ私をラビはただ黙って抱きしめてくれた
肩に落ちた雫はきっと私の気のせい。


『俺、は。』

『……言わないで、ラビ』


離れられなく、なっちゃうから。だからその言葉は言わないで胸に秘めたまま旅立って。
私はきっと貴方を忘れる事なんて出来ないけれど、それでも私は幸せだったから

だから、あなたも、わたしをわすれて

そんな事私にはいえないけれど、それでも私はあなたの幸せだけを祈るから


『……また、会えるさ、きっと』

『そうかな』

『会えるさ。俺が君を見つけるもん』


だからもう泣くなよ、最後くらい笑って俺を見送って?
そう言って笑うラビに釣られて私も笑った。


再会の時を胸に誓って。


それはとても残酷で悲しい再会























『………?』

『……ら、び?』


どうしてラビがここにいるの?確かにあれから時間は経ったけれど、目の前の橙の髪は確かに私が愛した彼のもの
あなたはブックマンなんじゃなかったの?その手にあるものは、その左胸の紋章は、何?
左胸の紋章は今確かに私が殺したエクソシストと同じ物で、それはつまりラビが私の敵だと示してて
震える声も、少し低くかすれてはいるけれど、確かに私が愛した声と同じ物。


『……ノ、ア…なんか?どうして、お前、、だろ?』

『……ラビ、…エクソシスト……?私の、敵?』


ラビの手が伸びる 私はそれを振り払う  だって触れ合っちゃいけないのよ私たち。
だって私はノアで、エクソシストを殺さなくちゃいけなくて、でも貴方がエクソシストなら私は一体どうすれば?
愛した貴方を殺すなんて出来ない、きっとそれは貴方も同じ。貴方の事は良く知ってるから
貴方が優しい人だって、判ってるからなおさら辛い


……何が、あったんさ……』

『……ラビ、は…敵なの?』

『俺は……』


それきり黙りこんだラビの横顔を私はずっと見ていた。
エクソシストは嫌い。人間も嫌い。私から全てをうばったせかいなんて、だいきらい。

でもラビは?

ラビは違う、ラビだけは違う。私を愛してくれて、私も確かに彼を愛した。
知らなかったの、お互いに、敵になる運命だったなんて、これっぽっちも思わなかったの。


『……俺は、を殺すなんて、出来ないさ……』

『……私も…あなたはころせない』


どうしてだろうね?人間なんて、エクソシストなんて大嫌いなのに貴方だけは嫌いになれないの、どうしてだろうね?
そう言ってまた泣いた私にラビは遠いあの日の笑顔を見せた。
あぁ、ラビは変わっていなかった。私も変わってなんていなかった。


『……でもね、ラビ』


でも私がノアでラビがエクソシストである限り、わたしたちは。


『私たちは、もう戻れないんだよ』


あの頃にはもう、戻れない。ただ白と黒の運命に翻弄されて、流されて、殺し合う


『私がノアで』


たとえ私がラビを殺さなくても、彼はいつかきっと死んで逝く。私ではないほかのノアの手にかかって。


『ラビがエクソシストである限り』


それなら、もしラビが他のノアの手にかかって、私の知らないところで死んでしまう運命だというのならば


『私たちは、殺しあわなきゃいけないんだよ』


それなら、私の、この手で。


『………他の誰かの手にかかるくらいなら、私のこの手で貴方を殺させてよ、ラビ』


私のこの手で、貴方のせかいを終わらせて?


『………

『わたしは、あなたを、あいしてるの。いまも、むかしも、これからも、ずっとずっと。』

『…俺も、同じさ』

『だからね、ラビのせかいをおわらせるのは、わたしじゃなきゃだめなのよ』



『おねがいだから、』


おねがいだから、あなたのせかいをわたしにちょうだい。


『………生まれ変われたら、今度は普通の人間同士だったらいいな』

『……そう、だね』

『俺も、も、普通の、幸せな恋人同士になれる世界だったら、』

『らび』

がノアじゃなくて、俺もエクソシストなんかじゃなくて、何も背負わない普通の人間に生まれたら』


そうしたら、俺達、今度は幸せになれるんかな?


『………神なんて私は信じないけど』


そうだったら、しあわせね。

最期は笑って、見送ってって、ラビは言ったわ。
だから私、彼の言うとおり、笑って見送る事にしたの。だって泣いたらラビは悲しむもの。


『………独りで逝かせたりしないから、大丈夫だよ』



『私も、すぐに逝くから………だから、』

、……』

『ら、び……っ』

『待って、っから……な……?泣く、なって……』


あぁ、ほら。最期の最期まで、あなたは。
どうしてそんなに優しい言葉で私を泣かせるの?


『……らび、』


小さく呼んだ貴方の名前と一緒に私は世界を終わらせる。














あなたはわたしにとって せかい でした












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意味不明第二段。ノアヒロインとエクソシストラビ。




2007/04/11 カルア