「なぁ神田ー」
「何だ」
「神田って好きなヤツおるの?」


そいつの無邪気な質問は俺を困らせた。


「……何でイキナリそうなるんだ」
「興味あんねん」
「………いねぇよ。此処は戦の場だ。んな浮ついた事してられっか」

本心は言える訳がない

惚れた相手がまさかだなんて。

自分だって何でこんなヤツに惚れたんだか判らない。
ただ気付いたら目で追っていた。
同じ日本人だからとかそういうのもあったんだろう。
ただ、自分の理想としているタイプからは程遠かった。

「………そーなんやぁ………」
「……そういうお前はどうなんだ。」
「え?う、うちは別に…」
「……フン」

顔を赤くして俯く
しおらしい顔も出来んじゃねぇか
どうせならいつもそうやって大人しくしてりゃいいんだ

「………あ、あんな」
「何だよ」

俯き上目遣いで俺を見上げる
今までに見たことのない彼女の表情に言葉が詰まった。

「……………神田、やねん」

「あ?」
「うちが、好きなん……神田やの」

消え入りそうな声で言って、また俯く。
俺は俺で言葉の意味が理解できなかった。

好き?が?俺を?

「………そうかよ」

こんな事が言いたい訳じゃない
気の利いた言葉も出てこない不器用な自分が情けない。

「……返事、いらんから……言っておきたかっただけやし」

ガタンと椅子が音を立てる。
顔を隠したまま、早足で談話室を出ようとする

「……おい」
「な、に?」

「一度しか言わねぇからよく聞いとけ」










(不器用な俺の精一杯のその言葉)






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神田はツンデ(いい加減にしろ




2006/08/29 カルア