私は貴方が好きだけど
貴方には忘れられない人がいる
そんなの判ってて勝手に惚れただけ
ただ隣にいたいだけ
それだけで ただそれだけでよかった
「……エリアーデ」
今日もクロウリーは独りで夜空を見上げている
エリアーデというひとに私は会った事がない。
アクマだけれどとても綺麗な人だった、とラビは言っていたけれど。
そして、クロウリーの想い人だったという事も。
初めて会ったのは、人寂しい汽車のプラットホーム。
ラビとアレンに連れられて、クロウリーは私の前に現れた。
「……です。よろしく、クロウリー」
「こちらこそ、である……」
えらくおどおどとした様子で差し出した手に視線を落としながら彼は言った。
ラビに小突かれてやっと私の手を取った。
握手も知らないのかと思ったが、聞けば生まれてこの方城から出たことがないという。
それならば仕方がないかとひとりごちた。
「……クロウリーは寄生型だったよね。私と同じだ」
「そうなんであるか?」
「そう。この髪の毛がイノセンスなんだ」
不思議そうに私の髪を見つめるクロウリー
5つ歳が離れているのに、不思議と年齢差を感じさせない人だった。
年齢差を感じさせないというよりは、年下のような。
「はチェスできるであるか?」
「西洋将棋?できるけど」
「ならお手合わせ願いたいである」
「いいよ」
駒を動かす手がとても綺麗だと思った。
真剣そのものの表情も、白く細い綺麗な指先も。
「ええい小賢しい!さっさと片付けてしまえ!」
「言われなくても……っ!!!!!」
「アクマ共!血を吸わせろ!!!!!」
普段は気弱で引っ込み思案
イノセンスを発動すると、挑戦的で攻撃的。
そのギャップも私が惹かれた原因なのかもしれない。
でも彼には忘れられない人がいる
私なんかでは到底叶わないと判っている
だって彼はこうして毎晩夜空を見上げて思い出している
叶わぬ想いに縋る自分が酷く惨めだった。
「敵わないか……あの人には」
ただそれでも傍にいたい
共に戦っていたい
それは私のエゴでしかないけれど 叶うのならば。
もしも、叶うのならば
わたしだけを愛して
(それは決して叶わない叫びとなって消えていく)
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クロちゃん悲恋しか書いてなくないか……
2006/08/24 カルア