最初にその姿を見たときにオレは心を奪われてたのかもしれない。

東洋人のはずなのに肌はとても白くて顔立ちは西洋の彫刻の様に整っていて
風に靡く髪は金糸のように細く綺麗で陽の光を受けて輝いていた。

オレの中の本能が この子が欲しい と告げていた。



「……この子、っすか」

「えェv、日本人。19歳のエクソシストでスv」


ティキと伯爵は薄暗い部屋の中映し出されている映像に見入っている。
それは伯爵が先日アクマに命じて記録させたというある少女の映像だった。


「……で、どうしてオレにこんなん見せるんスか」

「ティキぽんには彼女の捕獲をお願いしたいんでスv」

「捕獲?“削除”じゃなくて?」

「ええv彼女は我々“ノアの一族”の新しい家族になる子ですからネv」

「………へェ」


杖を揮い、アクマを破壊していく彼女の姿。
その姿はとても華麗で、まるでいつか読んだ童話に出てくる魔法使いのようだと思った。
攻撃によって巻き起こる風が、長い彼女の髪を舞い上がらせて
長いコートをはためかせて駆ける姿はとても気高く美しくて。


「…つか千年公、“ノアの遺伝子”引いてる子がどーしてエクソシストなんかに?」

「それはですねェv彼女が“裏切り者の遺伝子を引き継いだ身”でありながら
 “偽りの神に愛されその化身を与えられた偽りの使徒”だからでスv」

「………はぁ」

「この間聞かせてあげたでショv“黒白の天秤”のハナシv」

「じゃー彼女がその“天秤”ってことっすか」

「そうでスv」


ティキはふーん、と声を漏らすとまた映像を見上げた。
いつの間にか戦闘シーンは終わっていた様で、仲間達と談笑しながら歩く姿が映されていた。


(“天秤”ね………)


「そういう訳でティキぽんvイノセンスは壊して構いませんが彼女だけは無傷で連れ帰ってくださいネv」

「……はいはい。千年公の、仰せのままに………」


いずれ“家族”になるというその少女に。
彼女の持つメモリーと、ティキの持つメモリーは本能で惹かれあう。











本能が告げた、ファムファタル







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時期的には神田とが任務中(4,5話)あたりだといい。



2007/04/20 カルア