--- 世界が終わるのなら 私は歌おう ---

   --- 終焉を迎える世界で 鎮魂歌を ---

 --- 迷える魂よ 安らかに眠れ ---

  --- 母なる大地の その胸で ---















はいつも歌うんだな」

「ん?」

「アクマ壊す時に、だ」


神田とは現在二人でアクマ殲滅の任務中。
イタリア北部の街にアクマが大量発生したとの報せを受けて二人が派遣されたのだ。
レベル1が50体以上に加えてレベル2が10体。
それでもと神田は大して苦戦せず--二人の息が合っている事もあって--、任務を終えた。
街の人間の殆どがアクマに殺されてしまった事だけが心残りだが。


「……元は私たちと同じ人間だから」


せめて魂が迷わずに光に向かえる様に。
はそう言って空を見上げた。


「……そうかよ」

「悲しい存在だから、なのかもしれないね」


は苦笑いを浮かべてまた歌う。
声楽をやっていたというだけあって、その旋律は透き通る様に空へ流れていった。
神田はその歌声に目を閉じて聞き入っていた。





--- 君の隣にいる事が幸せだと思えた ---

  --- ただ隣に居られたら それだけで ---

 --- 君が居る事 それが私の幸せでした ---






元は楽団で歌を歌っていたといつか聞いた事がある。
それを聞いて、歌の巧さに納得した。
神田はただの歌声に耳を傾け、青々と葉が茂る木に背を預けた。




   --- 君と居る事が幸せでした ---

 --- 君さえ居れば生きていける そう思っていた ---

     --- 幼い愛だと人は笑ったけれど ---






「………でもね、歌の意味判ってくれるのユウだけだよ」

「ま、日本語で歌ってりゃそうだろうな」

「だから歌うの。ユウの前でしか歌ったことないのよ?私」

「………そうかよ」


にっこりと笑って言うに、神田は僅かに顔を紅くしてそっぽを向いた。
はそんな神田に笑みを零すと、神田の隣に腰を降ろした。


「こんな戦争、早く終わるといいね」

「だから戦うんだろーが」

「そーだね」


空を見上げた。
甲高く鳥が鳴き、白い雲がゆっくりと流れていった。












 



(そのうたごえはたからかに)






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声楽はキツいけど面白い
中学の学園祭でハレルヤのソプラノソロを任されたのはいい思い出です





2007/04/16 カルア