Eu o Amo,Meu Querido
「」
「ティキ?どうしたの?」
コンコンと軽快なノックの音が響く。
は扉の向こうから聞こえたその声に立ち上がると扉を開いた。
其処にいたのはやはりティキで、燕尾服に身を包んだティキはに微笑む。
「?どうぞ?」
「お邪魔します」
礼儀正しく--いつもの彼とはどこか違う雰囲気で--言うと、ティキはゆっくりと部屋に入った。
シルクハットを脱ぐと、ティキは椅子に腰掛けた。
「どうしたの?用事、あるんじゃなかった?」
「いや……」
先ほど確かにティキは用事があると言って部屋を出たのだ。
それが15分もしないうちに戻ってきたかと思えば、どこか思いつめたような表情を浮かべている。
は紅茶を淹れ、ティキの前にカップを置いた。
「少し話しをしとこうと思って」
「話?」
「そう。さっきの続き」
ティキは紅茶を一口飲むとを見つめた。
その表情はとても真剣で、は言葉を詰まらせ気まずそうにカップに視線を落とした。
「オレさ、マジ自分でもおかしいと思うくらいに惚れてんの。さっきも言ったけど。」
「……でも、ティキ、さっきも言ったけど私は」
「それでも構わねェよ。待つ、つったろ?」
ティキはの手を優しく包んでそう言う。
は戸惑い、僅かに頬を紅く染めてまた俯いた。
「オレは“快楽”、は“愛”のメモリーを持ってる。それはさっき千年公から聞いただろ?」
「……うん。ロードは“夢”、だって」
「……最初はオレらの中のノアの遺伝子が惹き合ってるモンだと思ってた。
愛の延長に快楽があって愛があるから快楽は強まる。だからそうなんだって言い聞かせてた。
でも。
あの汽車ん中でに会って、話して、今は同じ“家族”としてこうやって近くにいて。
どーもそんな簡単な事で片付けらんねェなって思った。本気なんだ、オレ」
ティキはそういうと額に手を当てた。の手を包んだまま、ゆっくりと。
はどう答えていいか判らずにただ混乱するばかり。
「…だから、正直が惚れてるっつー男を許せねぇ。かといってオレがそいつを手にかけていい理由もねェ。」
ティキはそう言うとの手を離し、頬杖をついた。
は僅かではあったがティキの声に秘められた狂気を感じ取り、ティキを見た。
「……ティキ?」
「……ユウ、っつーんだろ。そいつ」
「っ!」
ティキの口から紡がれた神田の名前に、は絶句し目を見開く。
ティキはやっぱね、と苦笑いを零し、カップを取った。
「安心しなよ、そいつオレのリストにいねーから。」
「な、んで……」
「意識失う寸前さ、お前日本語で何か言ってただろ。ユウ、って言った声が違ったから。」
「あ………」
は肩を震わせティキを見る。ティキは怯えるに苦笑いを零した。
「待つ、つったろ。オレは何もしねェよ。」
「……ティキ、」
「ん?」
は何処か強い意志を秘めた瞳でティキを見る。
ティキはそれに気付いたのか、ゆっくりと瞬きをした。
「…彼と…ユウとお別れ、したら…記憶、消してね?
このまま……エクソシストだった頃の記憶を持ったまま、戦うのは辛いの……」
「なんだ、そんぐらい。お安い御用だぜ、姫?」
「自分勝手だってわかってる。でも私、きっとこのままだと何もできないから」
は涙を流し微笑むと、ティキの手を取った。
ティキは予想外のの行動に一瞬戸惑いを見せたが、すぐに包まれた手に視線を落とした。
「………ティキの気持ち、無視できないから………」
「……おぅ」
ティキは微笑を浮かべるとの髪を優しく撫でた。
はただ俯いて、ティキの手を握っていた。
「……ありがと、ティキ」
ノアの記憶が惹き合うというのならこれもまた一つの運命なのだろう。
の持つ“愛”のメモリーは、“快楽”のメモリーを持つティキに、
の持つ“哀”のメモリーは、愛し合い殺し合うその運命を本能で悟りながらも神田に、
惹かれていたというのなら。
汚れなき愛を貴女に誓いましょう
(だからどうかオレの手を取って、Meu Querido)
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23話の補足、みたいな。
そういえばちゃんのメモリー出し忘れてたのでここで。(ダメすぎる
タイトルはポルトガル語で「愛しのマイディアー」
2007/04/14 カルア