「Trick or Treat!お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」

なぁ今オレの目の前にいる可愛い魔女は何なんだろうな。いや、今日がハロウィンだってのは知ってるけど(ロードがやたら張り切ってたし、今日の夕飯はカボチャ尽くしだったし)、ちゃん今年でいくつだっけ?ドアを開けたら目の前に見えたのはとんがり帽子。ちょっと視線を落したら魔女みたいな格好したホウキ片手のがいた。……うん、可愛いよ?可愛いけどさ。

「……何してんの」
「何って!ティキ今日はハロウィンだよ!」
「いや知ってるけど」
「だーかーらー。お菓子ちょうだい」
「持ってねーよ」

ハタチすぎて何でお前まで参加してんの、と言えばは頬を膨らませてだって面白そうだったんだもん、なんて返す。あぁ、可愛い…ってそうじゃなくてだな。確かにいつもと違ってこういう服着てるは可愛い。むしろイタズラ大歓迎なんだけど、ここでイタズラなんてさせたらオレはどんな酷い目に合う事か。去年は部屋中に飴玉やらチョコやらをぶちまけられたお蔭で暫く匂いが取れなくてオレは部屋に帰れず、一昨年はとロードが屋敷中にトラップを仕掛けたせいでオレらは大変な目にあった。上からタライが降ってくるなんて可愛いイタズラじゃない。降ってくるのはナイフ、落とし穴には槍、ご丁寧に地雷まで設置されてたっけなぁ今年はどんなイタズラを仕掛けてくる気だとか考えるだけで寒気がする。

「えぇえ、お菓子ないのー?」
「ない。…つかな、Trick or Treat?」
「……へ?」

そんな訳で今年こそはしてやられる訳に行かないオレはやり返す事にした。何度言っても聞かない我侭なお姫様にオレを怒らせると怖いって事を教えてやらなきゃいけないしな。ただイタズラといってもロードやが思いつくような可愛いイタズラなんかじゃない。

「だから、Trick or Treat?」
「…何よガキ臭いとかバカにしときながら」
「そうかお菓子ないのか。じゃあイタズラだな」
「……ちょっとティキ何企んでんの何そのすっげぇやらしい笑顔」

オレの思った通りは来てくれた訳だし、ここ最近ご無沙汰だったところでこのチャンス。これを逃したらオレは男として何かが終わる気がしないでもない。目の前にいるはいつもみたいなきっちりとしたキモノ姿じゃなくてミニスカートでノースリーブ、肌の露出がそこそこ多い魔女の格好。こんなうまそうな据え膳、食わなきゃ男が廃るっしょ。

「ん?だからがお菓子くれないんならオレはにイタズラするよって事」
「えぇええ、ちょっと待とうよティキ26歳にもなって!」
だってハタチ超えてんだろ。お互い様だ」
「ま、待って待ってほんと待ってあのさほらちょっと落ち着こう?ね?お菓子なら私の部屋にあるからさ、欲しいなら持って来るし!」
「やだ。オレはお菓子なんかよりがいい」

案の定、はいつもどおり顔を真っ赤に染めてオレから逃げようとする。腕を掴んで引き寄せたらはより一層激しく暴れたけどそんなのオレには何の意味もない。むしろ余計に煽るだけだ。それなりに長い付き合いだから、がオレのどういう行動に弱いかとか何処を触れば力が抜けるかとかそういうのは熟知している。いくら暴れた所で抵抗の意味を成さないっていい加減に学習しようか、ちゃん。

「ティ、ティキ…っ」
「最近ご無沙汰だし?オレもそろそろ限界っていうかさ、」
「ちょ…っ」
「今日はオレ、狼男だから。」
「いやいや意味わかんな…っ」
「今日までの分纏めて愛させてもらうからそのつもりで頑張ってな、
「…っ無理無理無理無理!絶対死ぬ!」
「のこのこ来るが悪いんだぜ?オレが菓子なんて用意してると思う?」
「…そ、れは…」
「ほらなだって期待してたんでしょーに素直じゃねぇなぁ全く」

はぎゃーぎゃー喚いてたけどそんなの今のオレにはただの雑音だ。を姫抱きに抱え上げて問答無用で部屋に連れ込んでベッドに落としてやればはシーツを手繰り寄せてすっぽりと包まる。今度はゴーストか?なんて言えば枕と一緒に飛んでくるばかあほ死ねの罵詈雑言。ツンデレなのにも程があるっつーか、往生際が悪いっつーか。いやそんなとこが可愛いんだけど。とにかく、目の前の据え膳、美味しく頂かせて貰います。

「なぁ、いいもんやろうか」
「な、に…っ」

「菓子なんていらなくなるくらい甘いオレの愛」

耳元でそう言ってやったらは今度こそこれ以上ないってくらい顔を真っ赤に染め上げて固まった。













リカントロープに




ご用心。



(今年はオレの勝ちだね、お姫様)







携帯版さよならマーメイド2007年10月度拍手御礼夢でした。
相変わらず変態臭いティキですいませんほんと