えっと、此処って一体何の部屋?
ていうか、そもそも何で私って此処にいるの?
そして何故私は、キキョウさんの着せ替え人形になってるの?!
はキキョウにあれもこれもと差し出される服を見ながら、パニックに陥っていた。
迷走ノスタルジア 02
「キ、キキョウさん…こんなに渡されても着れませんって…」
「ママって呼んで頂戴!あぁ、こっちも似合いそうだわ!」
相変わらずのマイペースぶりを発揮するキキョウに、流石のもついていけなくなっていた。
の格好といえば、ジーンズにシンプルなカットソーにコート。化粧はしているものの、ナチュラルメイクだ。
そして目の前のキキョウは、の世界でいうゴスロリ服を手に目(というか機械)を輝かせていた。
「……着る、んですか?」
「えぇ!」
「(マジかよー…)……はぁ」
これ以上何を言っても無駄だろうという結論に行き着いたは
キキョウから渡された服を手に衝立の裏へ力なく歩いていった。
しぶしぶ手渡された服に袖を通す。なぜかサイズはぴったりだった。
(男しかいないのに何でこんな服があるんだゾル家)
その疑問は口に出したらまたキキョウのマシンガントークの餌食になるだろうとは聞かないでおこうと決めた。
結局、黒地に白レースのゴスロリ服に身を包み、ヘッドドレスまで着けて衝立の裏からおずおずと出て行った。
「まあぁぁああ!!!!似合うわ!素敵よちゃん!!!」
「……はぁ(もうどうでもいいや…)」
そのの姿に目を輝かせ、化粧からヘアメイクまで全てをやり遂げたキキョウの顔は、とても晴れ晴れとしていた。
は 暫く遊ばれそうだな と、何度目かも判らない溜息を吐いた。
「さ、そろそろ夕食の時間だわ!行きましょう!」
「え、このままですか?!」
「当然よ!」
もうどうにでもしてくれ。
は嬉々として歩くキキョウの後姿に小さく溜息を吐いて、歩き出した。
***
「………(毒入り、だよな)」
目の前に並ぶ、高級レストラン顔負けの豪華料理を見る。
それは見た目はとても美味しそうなのだが、しかし此処はゾルディック家。
おそらく、致死量以上の毒物が入っているに違いない。
は未だ、フォークとナイフを手に硬直していた。
「…毒は入ってないわ、安心して食べて」
「入ってないんですか」
そんなに、苦笑いを零しながら優しく言うキキョウ。
はその言葉に安堵の溜息を吐き、食事を始めた。
「一応、おぬしは客人だしの」
ま、いずれ慣れてもらうがの、と続けて言ったゼノは、それは楽しそうに笑った。
はただ乾いた笑いを零す事しか出来ず、黙々と料理を食べ続けた。
その間も、ミルキとカルトからは何か言いたげな視線を投げられた。
ミルキは流石に毒物に抗体が出来ているようで、平然と食事を続けていたが
まだ幼いカルトは時々唸りながら、食事をしていた。
その様子から察するに、食事中は会話をしない事、という決まりになっているようだ。
もそれ以上は喋らず、出された全ての料理を完食した。
***
「……で、兄貴。こいつ誰だよ」
食事を終え、広いリビングに移動した達。
カップ片手のミルキがイルミに訝しげに声を掛ける。
イルミは表情は崩さないまま、ちらりとを見た。
ミルキの隣に座り緑茶を飲むカルトも、興味深そうにに視線を投げている。
「あぁ、」
「いや、判んないから」
「です。=。どういう経緯か判りませんが、気付いたらイルミさんの部屋にいました」
そう言ったの言葉にミルキは驚き、まじまじとを見つめる。
は思わず、イルミの後ろに隠れた。
イルミは平然としたまま、の首根っこを掴んでミルキの前に差出した。
「兄貴の部屋?お前よく生きてられたな」
「あはは……」
「ま、いいや。オレ、ミルキ。こっちのちっこいのがカルト」
「ミルキにカルト君?」
カルトは怯えていたようだったが、しゃがみこみ視線を合わせてよろしくね、というに笑みを漏らした。
そしてのスカートの裾を摘み、俯いたまま小声で言った。
「ねぇさま……」
「(か…ッ可愛い……ッ!!!!!!)」
カルトの表情とその声に、は思わず眩暈を覚えた。
カルト君がいるなら私平気かも…!
俯いたままガッツポーズをしたに、イルミとミルキは「変な女」と揃って呟いた。
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うん、やっぱゾル家も好きだ
2006/11/29 弖虎