ゾル家に来てから1週間。
エキセントリックなキキョウさんにも大分慣れて来ました。
趣味の合うミルキとはあっという間に打ち解けました。
カルト君には「姉様」なんて呼ばれて内心凄く嬉しいです。
イルミだけは相変わらず何考えてるんだかわかりませんが。
それより大変ですお母さん。
私、なぜか知らないけれども人のオーラが見えるんです!
迷走ノスタルジア 03
「……あれ?」
「ん?」
元々多少オタクの気があったがミルキと意気投合するまでにそう時間はかからなかった。
一日に一度は必ず、ミルキとゲームで対戦をするのがの日課になりかけていた頃。
イルミとカルトとお茶を飲んでいたら、イルミとカルトの周りにもやが見えた。
見間違いかと思い目をこするも、見える光景は変わらず。
は目ぇおかしくなったかな、と疑問に思った。
そんなに、カルトは首を傾げながら尋ねる。
「どうしたんですか?姉様」
「ん…なんか…イルミとカルト君の周りに…もや?みたいなのが…」
見えるんだけど、と言おうとした時、イルミの声にさえぎられた。
「それってオーラじゃない?」
「あぁなるほど。オーラね………って……えぇええぇええぇぇぇぇええ?!」
ガタン、ガシャパリーン!
が勢い良く立ち上がれば、見た目から高級品であろうティーカップが床に落ち、割れた。
メイド達が割れたカップの片付けをしに、すぐさま近寄ってくる。
お怪我はありませんか、と3人とも尋ねられ、平気だからとカルトが返す。
イルミは暫く何かを考え込むように顎に手を当てていたが、いきなりの腕を掴み歩き出した。
「え、ちょ…イルミ?!」
「いいから黙って着いてきて」
カルトはマイペースな兄に引きずられていくに、小さく手を振った。
も思わず手を振り返すが、カルトの姿は段々と小さくなっていった。
***
「、念って判るよね?」
「え、あ…うん」
イルミに引きずられるようにしてが連れてこられたのは、レンガ造りの広い部屋。
そして1mほどの距離を開け、の前にイルミは立っている。
身長の低いは必然的にイルミを見上げる格好になる。
首、痛いな とは呟いた。
「今に見えてるのはその念。」
「うん」
「見えるって事は使えるって事だから、はいこれ」
手渡されたのは、水見式で使うアレだった。
いや、いきなり渡されても。はそう思い、受け取ったまま硬直した。
「判る?」
「やり方は知ってる…けど…やり方判んない」
「ま、とにかくやってみなよ」
ほら、と床にグラスを置くイルミ。
は床に座り、グラスに両手を翳した。
(練…練…確か…纏で留めたオーラを練る…だっけ?)
ぼんやりと考えながら、体内でオーラを練るイメージを浮かべる。
次第に、彼女の周りのオーラが増えていく。
イルミはそのの様子に、ほぉと感心したように小さく声を漏らした。
「……なんだこれ」
「……特質系」
満たされた水は全て水滴となって弾け飛び、浮かんだ葉からは根が生え、小さな木になった。
は思いも寄らない目の前の光景にしばし絶句し、イルミも顎に手を添えたまま感心していた。
「特質ぅ?!」
「そ。じゃあ次は…発…つまり必殺技みたいな物なんだけど」
「うん」
「どんなのにしたいかとか、そういう漠然とした物ってないの?」
うーん、とは考え込む。
あるといえばあるし、ないといえばない。
どうしようかと考えて、ようやく口を開いた。
「んーあるには、あるんだけど、出来るかどうかは判んない」
「そう。ま、やってみたら?」
「んな無責任な……」
と思いながらも、特質系と出たんだから、他の系統では出来ない事も出来るはず。
どうしようか、どうしようかと考え、は一つの結論へ行き着いた。
「……できるかな」
頭の中で、ナイフをイメージする。そしてそれを手に持つイメージを次に浮かべ、手とナイフが融合するイメージを。
ぐにゃり、との手が、金属のような物に変形していき
「………出来ちゃったよオイ」
まるで鋭いナイフのように、の左手は姿を変えた。
「へぇ……」
イルミはそのの手をまじまじと見つめ、凄いねと言った。
は何度か、手をナイフにしたり戻したりと言った事を繰り返した。
その度にイルミは興味深そうにの手を観察していたが
いきなり何かを思いついたように、胸の前に構えた左の掌を右手で作ったこぶしで軽く叩き
「よし、親父達に見せに行こう」
「へ?!」
うん、そうしよう。
イルミはの返事を聞かぬまま、シルバの自室へとの腕を引っ張り歩き出した。
***
「ほぉ…面白いな」
「特質、かのぉ。」
の目の前にはシルバ、ゼノ、キキョウがいる。
隣に立つイルミに有無を言わさぬ強い口調で「やってみて」といわれ、仕方なしに実演したところ。
三人はナイフになったり戻ったりするの左手を興味深そうに眺め、感想を漏らした。
「まぁああぁぁああ!!!!ちゃんってば凄いわ!!!これならイルのお嫁さんにだって大歓迎よ!!!」
「嫁ぇ?!」
相変わらずすっ飛んだ考えのキキョウの言葉に、は目を見開いて叫んだ。
ね、ね?構わないわよね?! と、夫と義父に詰め寄るキキョウに、シルバとゼノも何も言えなかった。
それほど、サイコマザー・キキョウの勢いは凄かった。
が、当のイルミはそ知らぬ顔で、をまじまじと見つめるばかりだった。
「勝手に話進めないでくれる?それにオレ、弱いヤツって嫌いなんだけど」
「あら、それはママも同じよ。だからイル、貴方今度ハンター試験を受験するんでしょう?」
「そうだけど」
ハンター試験?
じゃあキルアに会えなかったのは家出中だったからか。
は残念、と舌打ちをした。
「ちゃん!」
「はいっ?!」
「貴女、イルと一緒にハンター試験受けていらっしゃい!」
「えぇええぇええぇえぇぇぇええ?!」
ぽん、との肩に手を置き、清々しいまでの笑顔で言い放たれたキキョウのその言葉に、は絶叫した。
イルミが受験するハンター試験といえば、アレである。
何時間も走り続けたり、湿地を必死で抜け、崖から飛び降り、訳の判らんタワーを降り、島でサバイバル生活を1週間……
は無理だと思った。そして全力で否定したものの、「ママ、弱い子は嫌いよ」と勝手に娘扱いされてしまった。
シルバとゼノに視線を投げるも、「何を言っても無駄だ、受けて来い」という意味合いの視線を投げられるだけだった。
キキョウには何を言っても無駄か。は諦めた。
「大丈夫、ちゃんなら合格できるわ!」
「いや、あの」
「さ、そうと決まればイル!ちゃんの分も申し込みしていらっしゃい!」
「オレが面倒見るの?やだなぁ面倒臭い」
「あらそんなこと言わないの。」
「もしもーし?」
「死んでもオレ知らないよ」
「ちゃん死なせたらママ許しませんよ」
「いや、だってこいつ弱いし」
「勝手に話進めないでくれますかぁぁぁぁああぁあぁぁあぁああ?!」
「あら、だって受けるんでしょう?」
「…………もういいです…(泣きたい)」
「ま、死なせないように努力するからさ。母さんこうなったら何言っても無駄だから諦めて」
そんな慰めにもならないイルミの慰めに、は本気で泣きたくなった。
結局、もイルミと共にハンター試験を受ける事になったのだった。
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一般ピープルだったはずのさんなんですが
ゾル家の嫁・キキョウにやたら気に入られ命の危機を脱出しています(笑
2006/11/29 弖虎