ガーガーガーガーガーガー

ガーッガーッガーッガガガガガガガ


、うるさいそれ」

「ギタラクルの足音がしなさすぎ」


走り始めて4時間。
まだ先は見えない。












迷走ノスタルジア 05












「ひー…さすがに6時間もやってるとしんどい…」

「もうヘバったの?」

「私、ギタラクルみたいに超人じゃないもん…」

「試しの門をいきなり5の扉まで開けた女の言う事じゃないような気がするんだけど」

「気にしない…つか、疲れたから引っ張って」


引っ張ってくれるんでしょー? とがイルミに手を伸ばす。
面倒だから走ってよ、と言うイルミの服の裾を掴み、足を止めた。
彼女はイルミに引っ張られ、何をすることもなく進んでいく。


「……服、伸びるんだけど」

「だって引っ張ってくれないんだもん」


はぁ、と溜息を吐き、に何を言っても無駄だと悟ったイルミは走り出す。
は鼻歌を歌いながら、両手でイルミの服を掴んでいた。

周りの受験生達は「あれずるくね?」と思ってはいるものの
何せを引っ張っているのは顔面鋲だらけの怪しい男。
命の危機を感じ、それを言えずにただ押し黙って走り続けていた。

当のはそんなことそ知らぬ顔で、前を走るイルミの背中を見ていた。






***






「……階段なの忘れてた」

「肝心なところで抜けてるよね君って」

「……うー」


そしてそれから更に2時間程が経った頃、の目に見えたのは果てしなく続く階段だった。
仕方ない、とは靴のタイヤをしまい、イルミの後ろについて階段を昇り出した。


「あー重たいこの靴っ!」

「予備の靴持ってこなかったわけ?本当間抜けだよね」

「うるっさい!!!!」


あーもうこんな重たい靴で走っていられるか!
はそう叫んだ後、靴を脱いで両手に持ち、勢い良く階段を登り始めた。
イルミは思いも寄らないのその行動に驚いたものの、面白いヤツだなと思い、どんどん階段を上っていった。


「そうだ。言ってなかったけど、99番の銀髪、あれオレの弟なんだ」

「へー(知ってるけどね)」

「今家出中でさ。母さんにそれとなく様子見てくるようにって言われてるんだよね。
 も極力目立たないで。それから近寄らないで。面倒くさいの嫌いなんだ」

「はーい」


の気の抜けた返事に、イルミは内心大丈夫かな、と思った。
は何を聞く訳でもなく、前を見据えてひたすら階段を昇っていった。


「そういえばって結局どこから来た訳?」

「さぁ?この世界じゃないかもしれないね」

「それってどういう意味?」

「そのままの意味だよ。異世界から来たのかもしれないってこと」

「ふーん……」

「え、なんか反応薄くない?」

「だって本当なんでしょ?」

「ん、まぁそうなんだけど」

「ならいいじゃん。」


もっと驚くかと思って黙ってたんだけどな、とは残念に思った。
まぁイルミだから、それほど大げさな反応は期待できないだろうなとは思っていたのだが。












***










「……ギタラクル、出口だ」

「そうだね」

「やっと終わるー!」


おっしゃぁあああぁあああ、とは叫びながら残りの階段を4段飛ばしで昇って行った。
イルミはの絶叫に耳を塞ぎつつ、3段飛ばしで昇った。


「やっと明るいとこに出た!」

、目立つなって言ったでしょ」

「ごめんごめん。」


階段を昇りきり、大空へ向かって伸びをするにイルミが溜息交じりに声を掛ける。
は笑いながら謝り、大きく深呼吸をして、手に持っていた靴を履いた。


「ヌメーレ湿原、通称“詐欺師の塒”。二次試験会場へは此処を通って行かなければなりません。」


そう説明を始めたサトツの声など耳にも入っていない様子のは、目の前に広がる広大な湿地を見て感想を漏らす。


「なんつーか…湿度高そう…空気悪そう……肌荒れる…」

「気にするほど可愛くないから大丈夫だよ」

「あはははははは。ぶん殴るぞこのヤロウ」


そのイルミの一言に、は絶を解こうとした。
が、イルミに腕を掴まれ、睨まれた。


「念はダメだって言ったよね」

「なら使わせるような事言わないでよ」


そんな言い合いをする内に階段のシャッターが閉められ、試験官であるサトツが説明を始めた。
はキキョウさんの言いつけだからイルミが守ってくれるだろうと楽観的にそれを聞いていた。

マイペース極まりないは、ウェストポーチをごそごそと漁り煙草を取り出して火を点けた。
周りの受験生が「余裕だな」等と嫌味を言うものの、彼女の耳にそれは届かなかった。

そうして遠くを見ながら一服していたの耳に、鳥の鳴き声が聞こえた。
はそれが何かを知っていたので、あえて見る事はしなかった。
極力、ヒソカと接触するのは避けたかったからだ。


(好き好んで見たいモンじゃないし、ね…)


、行くよ」

「あ、うん」


ケロっとして声を掛けてきたイルミを振り返り、煙草をもみ消して走り出す。
出来ればあの変態奇術師とはお近づきになりたくないな、と思いながら。

走り出して暫くすると、案の定濃い霧が辺りを包んだ。
は隣を走るイルミに視線を投げると、その視線はかち合った。


「……掴んでて。」

「うん」


一言だけ言ってまた前を向き走るイルミの服を、は遠慮がちに掴んだ。
そのまま、常人では考えられないほどのペースで走っていくイルミに、もまた常人ではありえないペースでついていった。


「何も見えない」

「離したら死ぬと思ってね」

「……はい」


段々と濃くなった霧の中、はイルミの服を掴んで走っていた。
確かにこの状況では、離せば右も左も判らなくなり野垂れ死ぬだろう。
は服を掴む手に一層力を込め、走った。





***






あれから何時間走ったか。
相変わらず霧は晴れぬまま、は掴んだ服の感触だけを頼りに走っていた。
その内段々と霧が晴れ始め、はようやく安堵の溜息を吐いた。
そうして走るうちに、霧は完全に晴れた。
ふと何かを思いついたように急にイルミが足を止め、走っていたはイルミの背中にぶつかった。


「あ、そうだ。呼んでやらなきゃ」

「って〜……誰?」

「オレの友達」

「(ヒソカか…)」


そうして携帯電話を取り出し、イルミはまた走った。
もそれに続いて走りながら、ヒソカには会いたくないなぁと思った。


「ヒソカ、そろそろ戻ってこいよ。どうやらもうすぐ二次会場に着くみたいだぜ」

『OK。すぐ行く◆』

「(わーイルミの口調が違う…なんか新鮮)」


はどうでもいい事を考えながら走っていた。



「みなさんお疲れ様です。無事、湿原を抜けました。ここビスカ森林公園が二次試験会場となります」


ぴたり、と足を止めたサトツは振り返りながらそう言う。
も足を止め、漫画で見ていたままの光景にしばし感動する。


「……着いたみたい、だけど……凄いねこの音」

「本日正午スタート、って書いてあるけど」

「待つしかないんじゃない?」


あー退屈。私あっちで休んでるわー。と愚痴を零しながら、は近くの木に凭れて座り込んだ。
流石に十時間近く走りっぱなしなので、少し足が疲れていた。


「や◆」

「遅かったね」

「面白いコ達をみつけてね☆」

「そう。」


は聞こえないフリをした。
今移動したら不自然だ。だから私は何も知らない。あの顔面鋲だらけの男なんて私は知らないんだ。
そう言い聞かせて、不自然にならない程度に周りを見回す。


「ねぇキミ、彼と一緒にいたコだろ☆」

「(見つかったアァァァァァアアアアァァァアア?!)」


いきなり声を掛けられたは、思い切り冷や汗をかきヒソカを見上げた。
ヒソカは笑顔だが、その裏に隠されたオーラはとてもどす黒い。
はどうしようどうしようと、ひたすら考え込んだ。


「名前は?」

「えあ……、です……」

「そんな怯えないでよ◇ボクはヒソカ☆」

「ヒソ、カ…さん……?(ひぃぃ笑顔が怖いよ笑顔が!!!!!)」


ヒソカを見上げたまま硬直しているに、イルミが溜息を吐いて声を掛ける。


。そいつの傍にいたら妊娠するよ」


なんてことを言うんだと思ったが、そのイルミの一言には脱兎の如く走り、イルミの背後に隠れた。


「酷いなぁ☆いくらなんでもいきなり初対面で押し倒したりなんかしないって◇」

「ヒソカならやりかねないだろ。」

「くっくっく★珍しいねぇ、キミが他人に執着するなんて◇」

「母さんのお気に入りなんだよね。死なせたら後が怖いから」

「ヘェ………★」


何か言いたげにしていたヒソカだったが、ギギと低い音を立てて開いた扉に遮られた。
は助かった!と思い、開いた扉に目を向けた。

そこにいたのは、盛大に腹を鳴らす恰幅のいい大男と、ソファに座った美女だった。









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若干夢っぽくはなったのかな……
イルミって難しい…






2006/11/30 弖虎