部屋を抜けた。
次の部屋は畳に換算して約4畳ほどの、小さな石造りの部屋だった。

……こんな狭い部屋で何をしろと?

は疑問に思い、イルミを見上げた。




















迷走ノスタルジア 09















『さて。次の課題はいたって簡単。キスすれば扉を開けてあげよう』


「……ハァ?!」


思いもよらないその言葉に、は素っ頓狂な叫び声を上げた。
イルミはとは対照的に、それだけでいいの?と首を傾げている。


『それともここでリタイヤするかい?』

「嫌がらせかっ!!!!!」


ぎゃーぎゃーと喚く

確かにイルミはカッコいいし、嫌いというよりむしろ好きってか萌えなんだけど!
それに今はギタラクルじゃなくて素顔だし!むしろ大歓迎なんだけど!!!!!
さすがにそういう関係でもないのにキスなんて……!

はパニックになりながら顔を赤くして頭を抱える。




「何だよイル……ッ?!」


落ち着いたイルミの声に振り向けば、唇に暖かい感触。
そして目の前には、イルミの顔。
さらりと、イルミの長い髪がの肩を撫でて。

は目を見開いたまま、固まった。

固まるをよそに、イルミは角度を変え何度もに口付ける。
の両手はイルミに掴まれ、抵抗する事も出来ない。


「ちょ…ッ!!」


しゃべるの舌を絡め、歯列をなぞり、深く口付けて。
の頬はこれ以上ないくらい赤く染まり、小さく震えながら硬直したままイルミの行為を受け入れた。


「……ご馳走様」


最後にちゅ、と音を立てて唇を離し、の手を離した。
はそのまま床にへたり込む。


「イ、イイイイイイイル……ッ何を…いきなり…ッ」

「何って、キスだけど」


さらりと言ってのけたイルミは、これで開けてくれるんでしょ?とスピーカーに向かって言う。
は真っ赤になった顔を覆い、ぶんぶんと頭を振っていた。


『随分情熱的な……。まぁいい、クリアだ。次に進みな』


ため息混じりに試験官がそう言うと、ただの壁だった部分がせり上がり、廊下が見えた。
イルミは床にへたり込んだままのに視線を向けた。


「…、行くよ」

「……っ立てません…!」


あれくらいで腰抜かしたの?等といいながら、を抱えるイルミ。
俗に言うお姫様抱っこで抱えられて、はこれ以上ないくらい顔を紅くしてうつむいた。







***






『さて。これで君たちの試験は終わりだ。そこの穴から飛び降りればゴールだよ。』


廊下の先には、先ほどよりは広いものの、それでもまだ6畳間程度の広さの石室があった。
真ん中にはぽっかりと穴が開いており、試験官の言葉にイルミはその穴へと足を進めた。


「……これ?」

『そう。ちなみに200mくらいあるからギブアップするならそれでもいいよ』

「たった200mくらいどってことないよね?

「立てないんだってば……!!!!!」


は抱き上げられたまま、顔を覗き込みながら言ったイルミを避けるように、俯いて叫ぶように言った。


「……はぁ。しっかりつかまっててよ、落ちてもオレ知らないから」

「へ?」


言うが早いか、イルミはその穴へ飛び込んだ。



「ッぎゃあぁぁあああぁああああぁぁぁぁあああぁぁぁあああぁああああ!!!!!!!!!」



の絶叫は、石造りの穴によく響いた。
イルミの服をこれでもかというほど強く握り締め、目をきつく閉じたまま
吹き上げる風を頬に感じ、落ちてる落ちてる落ちてる!!!と叫ぶがイルミは平然とした顔をしていて。

1分程落下して、イルミはストン、と音を立てて着地した。



「し、死ぬかと思った……!!!!!!!!」

「あれくらいで?」

「私はついこないだまで一般人だったんだよ!」



『300番、301番3次試験通過第2号!所要時間6時間45分!』



ぎゃーすかとイルミに抱えられたまま叫ぶを、イルミは床に下ろす。

やっと終わった、なんだか最後で生きた心地しなかったけど私生きてる…!
っていうかイルミキス上手すぎ…ッ!!!!!!ファーストキスがあんな激しいので腰抜かすとかどんだけ…!!!!!!!

は床を見つめながらそんなことを思っていた。


「や☆二人ともお疲れ様◇何かあったのかい◆?」

「何かあったもクソも……!!!!!!」


声をかけて来たヒソカはそれはそれは楽しそうな笑顔を浮かべていた。
はさっきの出来事を思い出し、また顔を紅くして拳を握りながらぷるぷると震えていた。
イルミはといえば、顔に鋲を刺し、ギタラクルへと戻っていた。


ってばキスだけで腰抜かしちゃうんだもん」

「……へぇ☆?」

「ッ言うなよ!!!!!!!!!」

「どうして?」

「あーもう信じらんないなんだよお前羞恥心ってないのかよ!!!!!」


「あると思う訳?」


ケロっとしたまま言ってのけたイルミに、は殺意を覚えた。


「〜〜〜〜〜ッもういい!!!!!!」


ぷい、っとそっぽを向いてぶつぶつと一人文句をこぼすに、イルミとヒソカは思わず笑いを漏らした。
の耳には届いていない様子で、は壁際まで半ば這う様に移動し、座り込んだ。



「ズルいなぁ☆」

「課題だったんだからしょうがなくない?」

「腰砕ける程激しいキスが◆?」

「なんとなくからかってみたくならない?って」

「うん、それは判る★」



二人がそんな会話をしているとは気付かないは、それから10時間近くいじけていた。
半日経ってようやくマトモに歩けるようになったが、恥ずかしいのかイルミとは一切会話はなかった。
今の状態なら、多少危険ではあるがヒソカとトランプでもしてた方がマシだ、という考えに行き着いた
イルミから微妙な距離を取りつつ、3人でポーカーや大貧民をして時間を潰した。


(…ガサツだと思ってたけど可愛らしいとこもあるんだ。意外。)


と、自分を露骨に避けるに対してイルミがそう思っていたなんて、到底考え付くはずもなく。















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無理矢理夢らしくした結果、撃沈。





2006/12/01 弖虎