第3次試験通過者、26名(内1名死亡)。
達は結局、残り二日以上をトランプをして過ごした。
3番目に通過したハンゾーは、ヒソカとイルミ(ギタラクル)を見るなり露骨に目を逸らし、達とはかなり離れた場所に座り込んだ。
(あの女、よくあの二人と一緒にいられるな)
ハンゾーがそう思っていたのを、もちろんは知らなかった。
迷走ノスタルジア 10
「諸君、タワー脱出おめでとう。残る試験は4次試験と最終試験のみ」
(あと2つ!)
受験生たちがそう思う中、は未だにイルミをまともに見れないでいた。
それどころか、あれから妙にイルミを意識してしまい、近付く事さえ出来ないでいた訳なのだが。
(う〜…イルミめ…あんな事するから恥ずかしくて話も出来ないじゃないか!)
はヒソカを挟んで、イルミを睨んだ。
そのの視線に気付いているのかいないのか、イルミは飄々として前を見据えている。
「このクジで決定するのは狩る者と狩られる者。
この中には25枚のナンバーカード…すなわち、今残っている諸君らの受験番号が入っている。」
(……私のターゲットって誰になるんだろ)
は思った。
私は本来ならばここにいないはずの人間なのだから、ターゲットが誰であるかなんて想像がつかなかった。
まぁ、なるようになるか、と楽天的に構えられるのは、の長所のひとつであろう。
「それではタワーを脱出した順にクジを引いてもらおう。」
試験官の言葉に、まずヒソカがクジを引き。
イルミ、もそれに続く。
そうして受験生たちがクジを引いていく中、は自分のナンバープレートをポシェットに仕舞った。
(敵は作らないに越したことはない、っと…)
「全員引き終わったね。
今諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかはすべてこの機械に記録されている。
したがって、もうそのカードは各自自由に処分してもらって結構」
は自分が引いたカードを見る。
が、裏にも表にも何も書かれていない、白紙だった。
(……っつーか、私のカードなんだこれ)
悩む間にも説明は進んでいく。
「最終試験に進むために必要な点数は、6点。
ゼビル島での滞在期間中に6点分のナンバープレートを集めること」
(……なんか嫌な予感するんだけど)
はそう思ったが、聞かない事にはターゲットが誰かすらもわからない。
意を決して右手を挙げ、試験官に質問した。
「あの、すいません。質問なんですが」
「なんだい?」
「私のカード、これってどういう意味ですか?」
そう言って試験官に見せるようにカードを出した。
試験官はそのカードを見て、顎に手を当てしゃべりだした。
「ふむ。君が引いたか。
そのカードは特別だ。それ1枚で6点、つまり君は4次試験中プレートを守るだけでいいという事だ。
ただ君のプレートは受験生の誰が獲得しても3点だ」
「はい?!」
「つまり、君のターゲットはここにいる全員の内の誰でもないが、全員から狙われる事になる、ということだね」
マジっすか!!!!!!
は冷や汗をかいた。
「どうしよう……」
「まぁなんとかなるんじゃないの?」
「イ…じゃないギタラクル……」
「死なない程度には守るって言ったでしょ」
「……うん」
っていうかあんな事くらいで避けられても困るんだけど、と言ったイルミに、思わずはローキックを入れた。
が、イルミにそんなものが利く訳もなく。
はイルミ、ヒソカと共に船へと乗り込んだ。
***
「……私、絶対狙われるよぉおおおおおおおお」
「大丈夫だよ」
「…何を根拠に」
「周り見てみなよ。オレとヒソカと一緒にいるから、誰も近付こうとしないでしょ」
そういえば、とも周りを見回す。
訝しげな視線は送られるものの、と視線が合えばそれは露骨に逸らされる。
(…一人にさえなんなきゃオッケー?)
空を見上げながらそう思うも、ふと考え付いたはヒソカとイルミを交互に見て、口を開いた。
「…先に言っとくけど。二人とも、私のこと狙わないでよ」
「くっく★判ってるよ、そんな事◆」
「うん、多分狙わないと思うから安心して」
「(その笑顔が胡散臭いんだっつーの)」
はため息を吐いた。
その間にも、船はゼビル島へ向けて航行を続ける。
(あんな島で一週間とか、確実に肌荒れるよ…)
そう思ったが、ヌメーレ湿原でイルミに言われた事が頭をよぎり、飲み込んだ。
***
「それでは第3次試験の通過時間の早い人から順に下船していただきます!
一人が上陸してから2分後に次の人がスタートする方式をとります!
滞在期間はちょうど1週間!!その間に6点分のプレートを集めて、またこの場所に戻ってきてください。
それでは1番の方スタート!!」
「お先に★」
ヒソカは歩いて森に入って行った。
次はとイルミの番だったが、はイルミに抱えられてゴールした為、イルミが先にスタートすることになった。
「(スタートしたらあそこに見える高い木の上来て)」
イルミはそういい残し、森へ消えた。
そして2分後、も森へと入って行った。
「(……んー……あ、いた)」
高い木の上で、イルミの居場所を探す。
は木から木へと飛び移りながら、イルミの許へ向かった。
「お待たせ、ギタラクル」
「今周りに誰もいないしイルミでいいよ。」
「そう?」
「うん。とりあえずオレ適当に狩るけど。どうする?」
「私も適当に、って言いたいんだけど……念は使えない上武器がこれじゃあ…」
ごそごそとウェストポーチをあさり、一本のナイフを取り出す。
これは出発前にキキョウが護身用にと渡したナイフだったが
「……ベンズナイフ?しかも猛毒だよねこれ」
「キキョウさんが持ってきなさいって……」
奇抜な形のナイフを見つめ、は「やりすぎだよキキョウさん」とため息交じりに言った。
イルミは「まぁ護身用って言うより暗殺向きだよね」と言いながら、ナイフを眺めていた。
「暗殺って…」
「まぁ、使う状況にならない事を祈ってなよ。多分平気だとは思うけど」
「そうする…」
とりあえず、寝る場所の確保しなきゃ。
のその一言で、イルミとは大木から降り適当な場所を探し始めた。
結局、湖(というよりは池)の畔に生えた大木の大きなうろを拠点にする事に決めた。
「……とりあえず…汗流したい」
「水浴びしてくれば?」
「……覗くなよ?」
「そんな貧相な体に興味ないから安心して」
「あっはっは。刺すぞこのやろう」
「ごめん冗談」
乾いた笑い声を上げながら左腕をナイフに変えるを見て、イルミは謝る。
結局、オレターゲット探してくるからゆっくり浴びてなよ、と言い残して走って行ったイルミを見送って、は水浴びする事にした。
危なかったら念使ってもかまわないからね、というイルミの言葉に、深く溜息を吐きながら。
(誰も来ない事を祈ろう……)
今まで着ていた服を軽く洗い、目立たないように干して
は水着の上にTシャツを着た姿でゆっくりと湖へ入って行った。
***
「はー…生き返るー……」
池は思ったよりも深く、少し歩いただけでの腰あたりまで水位があった。
はとりあえず体についた埃や汗を流すように、肩まで浸かった。
「……1週間サバイバル生活か……」
帰ったら気合入れて肌の手入れだ、そうしないと荒れて大変な事になる。
は溜息を吐いた。
「…おなか空いたなー…魚でも捕って食べよ」
そういえばここ湖じゃん、そう思いついたは、とぷんと静かに水音を立てて潜っていった。
(わー…水キレー……)
どうせなら、と足を魚に…まるで人魚のような外見に…変えて、はどんどん潜っていく。
太陽の光が梯子の様に、澄んだ水に差し込む。
その間を縫って、魚の群れが泳いでいく。
(すっご……)
人の手が入っていない自然のままの湖を楽しみながら、はしばらく泳いでいた。
もちろん、食料である魚を捕る事も忘れずに。
***
「ッぷはっ!…ってあれ?イルミ、おかえり」
「あぁ、潜ってたんだ。どこ行ったのかと思った」
水面に顔を出したの目に、変装を解いたイルミの姿が映る。
は声を掛けながら湖から上がり、カバンからタオルを取り出して体を拭き始めた。
「いやー、綺麗でさぁ」
「っていうかその下水着?随分準備いいんだね」
「備えあれば憂いナシ、って言うでしょ」
「まぁね。それにしても10時間も息継ぎナシで潜るとかさ、もバケモノだね」
……はい?
「10時間も潜ってた?私」
「オレが戻ってきてからだけどね」
全く、潜ってるなら潜ってるって言っといてよ、無駄に心配したじゃん
イルミは至極不機嫌そうに声を漏らす。
はそんなイルミに苦笑いをしながら
「だってさー水浴びしてんのなんて見られたら格好の餌食にされんじゃん?」
そう言いながらイルミに見えない所でTシャツを脱いでパーカーを羽織り、イルミの隣に腰を降ろした。
水気を拭った髪をポニーテールに結い上げて。
「生身で10時間以上も潜ってた訳?オレでも4時間が限度なんだけど」
「念でちょっと体をいじっただけだよ」
「そんな事も出来るんだ?」
「うん。多分、自分の思ったとおりに体を変えるとかそういう能力だと思うんだ」
その証拠に人魚みたいになれたし、エラ呼吸もできたしね〜 とは言う。
イルミはそんなに感心したように声を漏らした。
「へぇ。便利な能力だね」
「うん、私も思ったわ。ところでターゲット見つかったの?」
「いや。見つかんなかった。まぁまだ時間はあるし気長に探すつもりだけど」
「あ、そ。とりあえず魚でも焼いて食べようよ。お腹すいた」
は捕った魚をイルミに見せる。
そうしてそのまま森へ入り、薪を集めて魚を焼きだした。
魚を焼いている間に、は木のうろの中で水着から着替えた。
「外見グロテスクだけど意外に旨いね」
「うん」
辺りは段々と暗くなり、二人の間でパチパチと薪の爆ぜる音だけが響いていた。
***
「……ねぇイルミ」
「何?」
燃える炎を見つめながら、が口を開く。
イルミはその声にを見ると、二人の視線がかみ合った。
は思わず目を逸らし、呟く様に言う。
「あの時…なんであんな事したの?」
「あの時って……あぁ、トリックタワーのことか」
ぽん、と手を叩き、イルミは立ち上がる。
はその行動に一瞬肩を震わせたが、ただ俯いてイルミの返事を待った。
イルミはそのままの方に歩いて行き、から少しだけ離れた場所に座りなおした。
「気になる?」
「………そりゃ、あんな事されれば…」
「オレがしたかったから」
あっけらかんと言うイルミに、は思わず溜息を吐く。
したかったからってあんな事するのか、と少しばかり毒を吐いて。
「だってしなきゃ進めなかったじゃん」
「……そうだけどさ」
「意識してるんだ?オレの事」
「……」
図星を突かれて、はまた黙り込む。
気まずそうに視線をイルミから外し、空を見上げた。
「ってさ」
「……何」
「普段ガサツだけど可愛い所もあるよね」
「……いきなり何言うの」
「もしかしてファーストキスだったりした?」
「……ッ」
平然と言ってのけたイルミのその言葉に、は顔を真っ赤に染めた。
そんなを見て、イルミはあぁやっぱり、と呟いて。
は思わずイルミを殴ろうとするも、その手は易々と止められた。
「見た目は男慣れしてそうなのにね」
「…ッ離せ馬鹿イルミッ!!!!!」
「オレとしては嬉しいんだけど」
「……は?」
「オレ、多分が好きなんだと思うんだよね。じゃなきゃあんな事しないと思うし。」
女に惚れた事なんてないから判らないけど。と付け足して
無表情のままを見つめて言うイルミに、は紅い頬を更に紅く染めて固まった。
湯気が出そうな程顔を紅くしているに、イルミは更に追い討ちをかける。
「そういう反応するって事は期待していいって事?」
「〜〜〜〜ッ馬鹿!!!!」
「じゃあは今からオレの物」
そう言い、イルミはを抱きしめた。
はただ陸に上がった魚のように、口をぱくぱくしながら硬直している。
緊張のあまり言葉が出てこないようだ。
「ほんとなら今この場で抱きたいんだけど……
試験官っていうか監視してるヤツいるしね。
オレは別にいいんだけどのそんな姿見られたくないし。」
さりげなく爆弾発言をしたイルミの腕の中で、は必死で意識を繋ぎとめていた。
(……ッ告白された?!告られた?!イルミに?!私が?!ありえなーい!!!!!!!)
叫びだしそうになるのを必死で堪えるを横目に、イルミはその感触を楽しんでいた。
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イルにーたまご乱心。
無理矢理感が否めない、というよりイルミ書きづらい!
2006/12/02 弖虎