辺りは暗く、目の前すら闇に霞んで見えなくて
ただ肩越しに感じるイルミの体温だけが鮮明で

虫の鳴く小さな声だけが遠くに聞こえた。















迷走ノスタルジア 12











「じゃあは両親いないんだ」

「事故でね…私だけ一人生き残った」

「ふーん……」

「両親がけっこうな遺産残してくれたんだけどさ。
 後見人、とかって名目で親戚が使い込もうとしてて。
 結局、弁護士立てて自立したんだよね。
 マンションは残してくれたし、自立するまでに十分すぎるくらいの遺産はあったし」

「寂しかった?」


首をかしげながら聞くイルミに、は苦笑いを漏らす。
小さく、イルミにしか聞こえないような声で呟いた。


「少しは、ね。
 友達もいなかったし……作ろうともしなかったけど。
 でも本読んでれば時間は潰れたし、学校も通信教育だったし、一人でいる事が多かった。
 学校を卒業してからは…パソコン使って仕事してたよ。
 雑誌の記事を書いたり、イラスト描いたりとか…」

「それで得意だったんだ」

「そ。一応仕事だから資格も取ってあったしね。
 まさかここに来て役立つとは思わなかったけど」


イルミの役に立てたしね、と言えば頭を撫でられる。
は 私子供じゃないんだけど と口を尖らせた。


「ごめん、つい」

「……別にいいけど。
 嬉しかったんだ。何かひとつでも自分で出来て。
 あっちじゃ私を必要としてくれる人なんていなかったから…」

「うん、オレも感謝してるよ」

「ありがと、イルミ」


イルミの手がの髪を梳く。
その感触には一瞬肩を震わせ、闇に霞むイルミを見た。
イルミはただその大きな瞳でを見つめ、黙って髪を撫でていた。


「……イルミ?」

「オレがいるよ?」

「………っ」


今が夜でよかった、とは思う。
顔が熱い
きっと今の自分はこれ以上ないくらい赤面している。
イルミは視力がいいから、きっと顔が赤いのなんてバレバレなんだろうけど。

それでも、イルミの表情は変わらなかった。


「オレがいる」

「……イルミ」

「だからさ、オレの為に生きてよ」

「……うん」


俯くの肩をゆっくりと抱き寄せ、イルミはの頭を撫でる。
頭を撫でる優しい手の感触に、はいつしか眠りに落ちていた。
が眠った後も、イルミはの髪を撫で続けていた。


(オレがここまで執着するなんてね)


呟いて、イルミはを抱き寄せる。
満天の星空に、鋭く欠けた三日月が輝いていた。










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イルにーたまに惚れられた人は大変だと思うんだ。
でも表だからダークに出来ず四苦八苦。





2006/12/03 弖虎