「……ねぇ団長、あの子どうするの?」
「どう、とは?」
「あの子見た感じ一般人でしょ?怪我が治ったとして、オレらと一緒にいたら危なくない?」
「そうだな」
「そうだなって…」
団長は何を考えてるんだろう。確かにあの子はなんだか不思議なオーラを持っているし、団長があの子を気にするのもわかるけど。だからと言って、オレらみたいな賞金首と一緒にいたら危ない気がするんだけどなあ。
「オレがを気に入った」
「……は?」
団長、いきなり何を言い出すんだろう。確かにを連れて帰るって言い出したのは団長だし、何処から来たのか判らないにしろあんな大怪我をしてたから、オレはてっきり団長のいつもの気紛れだとばかり思ってたのに…気に入った、って。
シャルナークは呆れながらクロロを見るが、クロロは至って真面目な顔をして言葉を続けた。
「それにな、シャル」
「ん?」
「は念能力者の資質があると思うんだ」
「……え?」
「あの時の周りに微かだがオーラが見えた。…今までに見たことの無い、不思議な感じがするオーラだった」
「じゃあ…」
「伸ばせば蜘蛛にとっても有益な存在になるだろうな」
そういう意味での気に入った、か。確かに団長がそう言うんならそうなんだろう。…ただ話の順番ってものをよく考えて発言して欲しいよ、全く。てっきり団長がに一目惚れ、とかそういう類の話だと思ったじゃないか。
シャルナークは心の中で悪態をついてため息を吐いた。
「…じゃああの子を蜘蛛に…?」
「いずれはな。今は治療に専念させる」
「…そうだね」
確かにあの怪我じゃ、動く事も儘成らないだろうし…何より念能力者じゃないなら念での治療は危険だもんなぁ。
「調子はどうだ?」
「…クロロさん…」
コンコンとノックの音がして、ドアを開けたのはトレイ片手のクロロだった。
クロロはベッド近くのコンクリートの塊の上にトレイを置くと、ベッドサイドに置かれたイスに腰掛けた。
「痛むか?」
「…少しだけ…だいぶよくなりました」
「そうか」
「…あの、ご迷惑おかけしてすいません…」
「…?何がだ?」
「だって、私、空からって」
「…気にするな。今は怪我を治す事だけ考えていればいい。」
「……有難う御座います」
クロロさんって不思議な人だなぁ、とは思っていた。
根拠はないが、纏う雰囲気が普通の人と全然違う感じがしたからだ。
……クロロさんって、何してる人なんだろう。
は頭に浮かんだその疑問をためらう事なく口に出した。
「…クロロさんって、何してる人なんですか?」
「…オレか?」
「さっき、シャルナークさんが団長、って」
「あぁ……」
クロロは困ったような顔でを見る。
…聞いたらまずい事だったんだろうか。
は一瞬後悔し、恐る恐るクロロに声を掛けたが、帰ってきたのは優しいクロロの声だった。
「……クロロ、さん?」
「すまない。今はまだ言う事は出来ないが…オレ達は君に危害を加えるつもりはない」
「…そう…ですか…すいません、変な事聞いて」
「いや、構わないさ。当然の疑問だろう。」
いつか話してくれるならその時まで待つべきだろう。
無理に聞き出すような事でもない。
…私を殺すつもりなら、わざわざ傷の手当てなんて、しないだろうし。
は小さく安堵のため息を吐く。
「それより…は何処に住んでいたんだ?」
「…日本の、東京…品川区、ってとこですけど…?」
「…やはりな…」
「え?」
「日本という国は知っているが、トウキョウ、シナガワクという地名は聞いた事がない。…オレの考えはどうやら的中らしいな…」
「……異世界、っていう事、ですか」
「あぁ。」
異世界トリップ、だなんて小説とか漫画の中でだけの話だと思ってた。まさか自分が体験するハメになるなんて思ってもみなくて、第一言葉はきちんと通じるから未だに信じられないっていうのが本音なんだけど、クロロさんの表情はとても嘘を吐いているように見えなかったから、信じるしかないのかと諦めた。深く考えるよりも、今は怪我を治す事を考えたい。
「…ねぇクロロさん」
「…何だ?」
「…ここは、何処なんですか?」
「ここか?ここは流星街と言う街だ。」
「りゅうせい、がい……」
「あぁ、言っておくが動けるようになっても外には出るなよ」
「…どうして?」
「この街は空気の毒素が濃すぎるんだ。」
どういう街なんだろう、と素直な疑問がの頭を掠めたが、聞かないでおいた。
なんとなく、流星街という場所がどういう場所かは想像が付いたからだ。
恐らくは東京で言う夢の島のような場所の近くなんだろう。
「…判りました。」
「動けるようになったら、オレらの仲間を紹介しよう。それまではゆっくり休め。」
「……はい」
クロロはそう言ってゆっくりと部屋を出た。
……深く考え込む事は辞めよう。これが現実なら受け入れるしかない。元の世界に戻れるっていう保障がない以上、この世界で生きていくって事も考えなきゃいけないんだから。
はそう心の中で呟くと、真っ白なシーツに身を沈めた。
(きみとであって、うごきだしたせかい)