「に、しても…どういう風の吹き回しだろうね?」
「例のあの子よね?クルタの村で空から落ちてきた…」
「だと思うけど?」
「また団長の気紛れじゃない?…空から落ちてきた、なんて珍しいし」

マチとパクノダは廃墟群の中を歩いていた。
クロロから「アジトに来てほしい」と呼び出しを受けた為だったが、その理由は何も聞かされていなかった。
ただ、先日クルタ族の村を襲った時に空から落ちてきたあの少女が関係してるだろうという事は、漠然とではあるが予想が付いた。









「団長」
「あぁ、来たか」
「何です?いきなり呼び出して」
「いや…クルタの村で拾った少女のことでな」
「やっぱり」

マチとパクノダは目を見合わせた。
大方の予想はついていたものの、また団長の悪い癖が出た、と揃ってため息を吐く。
クロロはそんな二人の様子に多少の疑問を持ちつつ、口を開いた。

「着替えや身の回りの物を用意するのを手伝ってやってくれ。女同士の方が気兼ねしなくて済むだろう」
「あぁ、そういう事」
「出来ればどちらか一人でも構わないからアジトにいてくれないか?」
「えぇ、それは別に構いませんけど」
「そうか、助かる」

クロロは安堵のため息を吐きながらそう言うと立ち上がった。
そうして二人に着いて来いと言うと、広間を出てが居る部屋へ向かい歩き始めた。

「それにしても団長、一体どういう風の吹き回し?」
「何がだ?」
「あの子、ここにいさせるんですか?」
「あぁ、それは後で話す」

肝心な所を話さないクロロに多少じれったさを感じたマチは不機嫌そうに小さく舌打ちをした。
仮に、あの少女の怪我が治ったとして、戦闘経験もなければ念も使えない一般人が蜘蛛と一緒に居るという事はどういう事か。
下手をすればハンターサイトに顔写真が乗せられ、懸賞金がかけられてしまうかもしれないというのに。
身の回りの物を用意するのを手伝ってやってくれ、と言うのだから彼女の怪我が治った後もここに…蜘蛛のアジトに身を置かせるという事だと見て間違いはないだろう。
物珍しい物が好きだという事は長い付き合いの中で嫌という程知っているが、その対象が人間にまで向くとは。
マチはまたため息を吐いた。




、入るぞ」
「…あ、クロロさん…?あの、後ろのお二人は?」
「あぁ、昨日言っていたオレの仲間だ」

はベッドの上に身を起こして本を読んでいた。
クロロの姿を見て本を閉じ、ベッドサイドの小さなテーブルに本を置くと、はマチとパクノダを不思議そうな目で見つめた。

「えっと…と言います…」
「パクノダよ。よろしくね」
「アタシはマチ。…よろしく」
「パクノダさん、と…マチ、さん……」

はよろしくお願いします、と言うと小さく頭を下げた。
3人のやりとりを見ていたクロロはパクノダの肩を叩くと短く耳打ちをした。
パクノダは一瞬目を見開きクロロを見るが、クロロの表情は変わらぬまま。
何を言っても無駄らしいと悟ったパクノダはの肩に手を置いた。

「?パクノダさん?」
「………驚いた。団長、この子本当に…」
「やはりそうか。」
「??あの、一体何の話を、」

は訳が判らないといった表情でパクノダとクロロを交互に見た。
マチが呆れたようにため息を吐き、クロロはどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。

「…ごめんなさい、貴女の記憶を少し見させて貰ったの」
「?記憶、ですか?」
「えぇ」
「どうやって…?パクノダさんって、超能力者か何かなんですか?」

的外れのの答えに、マチが思わず笑いを漏らした。
は念能力も知らなければパクノダの能力の事も勿論知らないのだから、そういう考えに行き着くのは一般人としては妥当な所だろう。
パクノダは苦笑いを零しながら、違うわとだけ返すとから離れた。

「違うんですか?」
「超能力ではないわよ。…まぁ、近しい物ではあるけど」
「っていうか団長、に念の事教えてないの?」
「教える訳がないだろう。まだ目が覚めて3日目だし怪我だって治っていないんだぞ」

治ったら話そうと思ってたところだ、とクロロは付け足した。
マチはそれもそうだ、と納得し、パクノダはふぅとため息を吐く。
それじゃあ混乱するのも無理はないわね、という言葉は飲み込んで。

「買い物付き合ってやれって言われてもその怪我じゃ無理だよね」
「そうね…怪我が治るまで外出は控えた方がよさそうね」

クロロがを頼むと言葉を残して部屋を出たあと、マチとパクノダはを間に挟むように会話をしていた。
身の回りの物を揃える、と言われても、洋服はサイズがわかればある程度の物は揃うが下着や化粧品と言ったものは個人の嗜好が色濃く表れる物。
当の本人であるが外出困難な怪我を負っている以上、どうしたものかと相談していたのだ。

「電脳ページで揃わない?」
「ある程度は揃うでしょうけど…化粧品はどうするの?」
「……、化粧品はどんなの使ってた?」
「化粧品ですか?普通の、ですけど…」
「普通の、ねぇ…」
「化粧品は置いといて、とりあえず服と下着だけでも用意しないといけないわね」
「そうだね」

結局、の服や下着のサイズを測り、ある程度の物は電脳ページで揃える事にした。
(買ったり競ったりは邪道、というのが蜘蛛としての暗黙の了解ではあったが、流石に一般人であるに盗品をプレゼント、というのはあまりよくないだろうと言うパクノダの配慮だ)

「じゃ、シャルからパソコン借りてくるわ」
「えぇ、お願いね」

マチはそう言って部屋を出た。
暫くして何かが壊れるような音とシャルナークの悲痛な叫び声が聞こえてきた辺り、仕事をしていたシャルナークから無理矢理パソコンを奪ったようだった。
とパクノダはその音と悲鳴に顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。







(地に落ちた真珠星が輝き出した日)