一緒にいたいと思う。
私は貴方が死ぬほど愛しいから。

貴方もそう思ってくれていればいいなんて。

















「刺青?」

「うん。フェイタン、彫れる?」


情事の痕が残るベッドの上。
全裸でシーツに包まり、お互いの体温を感じあう二人。
ふとが「刺青は彫れるか」とフェイタンに聞いた。
フェイタンは何を唐突に、と言った表情でを見た。


「まぁ…彫れない事もないが、いきなりどうしたね?」

「ん……笑わないで聞いてくれる?」


そう言いながらシーツに顔を埋める
フェイタンはふっと口角を吊り上げ、言った。


「聞いてやらない事もないね。どうした?」

「ん……此処にさ、蝶々の刺青入れて欲しいな…って思って」


そう言ってが指を這わしたのは、右太ももの内側。
フェイタンはまた何を言い出すのかと目を見開いた。


「どうしてまたそんな所に」


「ん……あの、さ。
 フェイタンの蜘蛛……左の太ももでしょ……?
 でも私は左胸だから……その……」


歯切れの悪いの口調に、フェイタンはふと考える。

(ワタシの蜘蛛は左足。が入れて欲しい蝶は右足……あぁ、なんだそんなことか。)

の意図を汲み取ったフェイタンだが、それは言わずに彼女の口から聞き出そうと思い沈黙した。
もしそうなのであれば、これ程嬉しい事はないと思ったからだ。


「此処に彫れば…さ……
 私の蝶は……その……私がフェイタンに抱かれるたびに…フェイタンの蜘蛛に捕まるな、って……
 そしたら……ずっと…離れないで傍にいられるかな、なんて思って……」


最後は半ば消え入るように言い、は枕を抱えて顔を埋めた。
きっとその頬は見たことも無いくらい紅潮しているんだろう。
フェイタンは自分の予想通りの彼女の答えに、小さく笑い声を零した。


「ハハ…は考える事がいつも唐突だな。
 そんなもの彫らなくても、ワタシはオマエを手放す気なんてないんだがな。
 ……まぁ、がそれを望むなら、形にしてやるよ」


を見つめ、口角を上げながらそう言えば、はまた枕に顔を埋めた。


「……じゃあ……形に、して……くれる……?」

「……あぁ、してやる。そしたらはもうワタシだけの女よ」

「うん……だから、お願い……」


枕から僅かに目だけを浮かせ、フェイタンを見つめるの視線は
何処か盲目的な情熱を秘めた目だった。
フェイタンはただ薄い笑みを浮かべたまま、ちょと待てろ、と言いシーツを纏ってベッドを出て行った。






***





「……ッ」

「あぁ、動くなよ…ずれる」

「って…痛…ッ」


上半身裸のまま、レザーパンツだけを履き、下着姿のに刺青を施していくフェイタン。
は針の刺さる鋭い小さな痛みに眉を顰めていた。
フェイタンはちらりとに視線を投げる。
彼女はシーツを握り締めたまま、何処か情事を思わせる表情でその苦痛に耐えていた。

(あぁ、やはり自分はこの女に狂っている)

そんな事を思いながら、フェイタンはの白い肌に一針一針、蝶の文様を施していった。


「……ッフェイ…」

「…何ね」

「……離さない、よね……?」

「さきも言たね、離してやる気はないよ」

「そ、っか……ふふ……」


痛みに力の入らない体をシーツに起こし、熱に浮かされる様に、うわ言の様にそう言った
離してやる気はない、と言うフェイタンの返答に、やわらかい笑みを浮かべてまたシーツに沈む。
フェイタンは普段からは想像もつかないのそんな姿に笑みを浮かべた。


「もうちょとだから…我慢してろよ…」

「ん…平気……」


ちくりちくりと刺すように走るその痛みは、愛したその男から与えられる束縛と絆。
その先に見える蝶は、フェイタンとの誓いの証。
黒い羽を羽ばたかせ、紫色の斑を闇に躍らせる、妖艶な蝶
捕らえるのは、12本の足を持った黒い蜘蛛










***










「……できた。見てみるか?」

「ん……」


鋭く刺すような痛みは消えた。
ただ、彫られた蝶は熱を以って私の脳髄を沸騰させる。
発熱したのだろうか
ぼんやりと、はそう考えながら、差し出された鏡に視線を投げた。


「……綺麗」


その鏡に映ったのは、掌ほどの大きさの黒蝶だった。
フェイタンはその出来に満足そうな笑みを浮かべると、すっと指でその蝶をなぞった。


「ひぅ…ッ」


その冷たい指の感触に思わず嬌声を上げたは、頬を紅くしてシーツで顔を隠した。
フェイタンはそんな彼女の行動に愛しさを感じ、ゆっくりと口を開いた。


「……これはがワタシの女だていう印…他の誰にも見せては駄目ね…」

「……見せる訳、ないよ……」


「この蝶を捕らえていいのはワタシだけよ」


視線が絡む。
フェイタンは口角を吊り上げ、の顎にその細い指を這わせた。


「この痛みをよく覚えておく事ね…
 『蜘蛛』に囚われた蝶は、もう自由には翔べない…」


「判ってる……判ってるよ、フェイタン……」




どちらともなく、瞳を閉じる





「我爱你………」








そうして交わした口付けは、永久に離れる事のない、蜘蛛と蝶の契り。
















君を離さない


(互いに刻んだ永久の誓い)








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まだ表でセーフ、だよな……うん、セーフだ(自己完結)






2006/11/20 テトラ