「さ、先ほどは失礼仕った。某は真田源二郎幸村と申す」 「いえ、あの、お気になさらず…です、以後お見知りおきを」 そんなこんなで、破廉恥である破廉恥である!とやかましい幸村を政宗がぶっ飛ばして事態は収拾。面倒臭ぇから着物に着替えろとため息を吐きながら政宗に促されたは現在淡い水色の着物を着ているので、漸く幸村も落ち着いたようだった。 「殿、ですな」 「えぇ。」 「某、甲斐の武田信玄公にお仕えする者。堅苦しい言葉遣いでなくて結構」 「……えと、源二郎さん?の方が堅苦しいんじゃ…」 「幸村と呼んでくだされ、殿。某のこれは生来ゆえ」 「え、あ、はい。判りました。」 見合いかボケ共っつーか幸村テメェ顔真っ赤にしてんじゃねーよCherryが! そんな二人のやり取りを見ていた政宗は正直心中穏やかではなかったが、下座に座る小十郎の視線が余りにも痛すぎたので、大人しくしていた(小十郎はお説教モードに入ると長いのだ) 「…用が済んだらとっとと帰れ。勝負はお預けだ」 「えええ、甲斐って遠いじゃん。とっとと帰れって、政宗さんそれちょっと酷い…」 「は黙ってろいつもの事だ」 「そうでござるよー某、奥州名物のずんだもちを楽しみにして奥州まで参ったのに!」 「Ah?知るかよ。Bounce Hurry!」 「ばうんす…はーりぃ?」 「遠路はるばるご苦労なこったな、ずんだもちくらい作ってやっからゆっくりしてけ、ですよ幸村さん」 「What?!俺はんな事言ってねぇ!とっとと帰れつったんだ!」 ちょっとした悪戯心を出したが、政宗が言った英語の意味を理解できていない幸村に満面の笑顔で言うと、政宗は予想通りの事を言う。思わず噴出したはそのまま腹を抱えて笑い出した。 「ははははははは!予想通りだ政宗さんGoodJob!」 「何がだ!どこがGoodJobだふざけんな!」 「……政宗殿、楽しそうであるなあ」 「幸村殿にもそう見えますか。」 「あぁ。殿は不思議なお人だな」 「えぇ。殿が来られてから城内は明るくなりました」 「Dambshit!shut a fuck up!」 「ハァ?!what do you think you are!」 「HA!聞くまでもねぇだろ!俺様何様政宗様だ!」 「うっわ最低!自分で様とか言ってるこの人!」 「………殿は聡明であるのだな、政宗殿の異国語を見事理解しておられる」 「えぇ。とても聡明で活発なお方ですよ、見ての通り」 と、のんきに茶をすする虎の若子と竜の右目を尻目に、と政宗はそれから半刻ほどぎゃーぎゃーと言い争いを続けていた(城内の人間が皆揃って聞こえてくるその声に笑みを浮かべていた事はまた別の話だ) 「ところで殿はどちらのご出身でおられるのだ?」 「あー……えーとですね、あのぅ…」 結局、口で言い負かされた政宗は不貞腐れつつも小十郎に促されてずんだ餅を作りに厨へ向かった(いくら好敵手とは言え、甲斐からはるばるやってきた幸村をもてなさないというのは彼のポリシーに反するからだ)。ずんだ餅が出てくるまでのつなぎに、と小十郎が出した茶を今は3人で飲んでいる。そんな和みまくりな3人の空気を一気に変えたのは幸村の一言だ。知らぬ事とはいえ、真実をいえる訳もない。今は敵対していないとしても、未来を知るの素性を武田の人間に話す事はいくら幸村とて危険な事だ。そう考えた小十郎はとっさに助け舟を出した。 「殿は少々複雑な身の上でな。殿の為を思うのであればあまり詮索はしないで頂きたい」 「…む。そうか…」 「すいません、幸村さん。お家騒動に敗れて逃げてきた、とだけしか言えないんです」 「!そ、それは大変でござった…すまぬ、某、失礼な事を」 小十郎の助け舟に見事乗ったの「お家騒動に敗れて奥州まで逃げてきた」という言葉に幸村は俯き、心底申し訳なさそうにに謝罪した。は「お家騒動に敗れた」事がどういう事なのかイマイチ理解できなかったのだが、時代劇等で目にする「お家断絶」とかそれ絡みだろうからとりあえず、という軽いノリだったのだから、無知とは恐ろしい。 「いいんですよ、私、幸村さんに何も言っていませんでしたから」 「……かたじけない……某、先ほどから失態ばかりであるな…」 やっべぇ幸村なまら可愛い。わんこみてぇ。 は思わず口に出しそうになったが、茶を飲み必死でその言葉を飲み込んだ。今の幸村は項垂れた耳と尻尾の幻覚が見えるくらい犬っぽい。のそんな考えを微妙に見抜いたのか、小十郎は訝しげな目でを見た(が、幸村なまらめんこーい!萌えー!なには到底判るはずもない) 「初対面ですから仕方ないですよ、幸村さん」 「だ、だが…異国語を理解出来る程聡明な殿に、某はなんと失礼な……!」 「い、いやいやだから気にしないで下さいってば」 「ぅぉお館さむぁぁああ!この真田源二郎幸村、まだまだ精進足りませぬぅぅぅう!」 「Shut a fuck up!うるせぇんだよ幸村ァ!俺の城で騒ぐんじゃねぇぇえええ!」 あぁ、なんかもうカオスだ。第二回戦始まっちゃったよ私のずんだもちが…… 幸村の絶叫と同時に襖を開けた政宗のドロップキックが見事幸村の横顔に決まり、二人はそのまま第二回戦に突入してしまった。は深くため息を吐き、茶をすすった。 「……幸村さんが来た時っていつもこんななんですか?」 「……いえ、今日はまた一段と……あぁ、」 殿がおられるからか。 一人納得した小十郎は達観したような穏やかな笑みを浮かべ茶をすする。その笑顔の意味が理解できないままのは頭上に幾つも疑問符を浮かべながらも、収まるまで待つしかないかと盆に載せられたずんだもちをため息と共に飲み込んだ。 「とっとと帰れ」 「殿、今日は誠に申し訳ない事ばかりで…」 「いえ、是非また遊びに来て下さい。甲斐の甘味も食べてみたいですし」 「おい」 「甘味が好きでござるか?!」 「えぇ」 「幸村」 「そ、それならば某とても美味い団子を持ってまた殿に会いに来るでござる!」 「楽しみにしてます、幸村さん」 「」 「殿は安倍川とみたらしと餡子と、どれがお好きでござるか?」 「んー……全部?」 「承知仕った。」 「ッテメェら俺を無視してんじゃねぇぇええええ!」 日が暮れ出した頃、幸村は甲斐へ戻る事になった。「今日は遅いですしお泊りになって明日出立されてはいかがか」という小十郎の親切心を「お館さまが待っておられる」と申し訳なさそうに幸村が断り、追い討ちをかけるように政宗がとっとと帰りやがれと不機嫌オーラを出し始めた為だ。は大丈夫なのかと不安だったが、「甲斐の馬は皆駿馬であるから大丈夫でござる」と満面の笑顔で言われてしまったので、仕方なく送り出す事にした。 「殿、今度は甲斐にも遊びに来てくだされ。お館様も歓迎して下さるであろう」 「うん、機会があれば是非」 「聞けっつーの!」 「あれ、政宗さんいたんですか」 「テメェぶっ飛ばすぞ!」 和やかなムードのと幸村に対し、不機嫌な政宗。どこからどう見ても、政宗が幸村に妬いているというのは一目瞭然だったが天然かつ超鈍感なは気付かぬまま。ますます機嫌を悪くする政宗を見て小十郎は心中穏やかではなかった。幸村殿の態度を見るに二人とも自覚なしであろうから仕方がない、政宗様がキレてしまったらこの小十郎、殿だけはお守りしなくては。そんな事を考えていた小十郎だったが、実際の所、幸村は確信犯だというのだから手に追えない。思わぬ伏兵は甲斐にいた。 「幸村さんまたねー!」 「さらばでござる殿ぉおおおお!」 「テメェ結局何しに来たんだ幸村ァァアアアア!」 にこにこと満面の笑みで幸村に手を振ると、怒り心頭で幸村に叫ぶ政宗。小十郎はため息を吐いた。 |
奥州クライシス
(お団子楽しみだなー)
筆頭がすげぇ酷い扱いですいません
こんなんでも政宗夢だと言い張ります。