「政宗さん、何か騒がしいんだけど……って、何してるんですか?」
「……か」
「……かた、な?」
「戦だ。今日の夕刻、ここを発つ」
「……いくさ」
「…あぁ」

いつも八つ時に茶と和菓子を持って部屋に来る政宗さんが今日は来なかった。どうしたのかと思い部屋に行ってみたら政宗さんは6本の刀を鋭い目で見つめていた(なんだか遠い世界のひとのような、気がした)なんでかと思えば、戦だと言う。そういえば昨日から女中さん達は忙しなく動き回っていた。そうか、戦だったのか。妙に冷静な自分に違和感を覚えた。

「……まさむね、さん」
「……黙ってて悪かった」

言いながら溜め息を吐いて、政宗さんは刀を仕舞った。相変わらず鋭い目つきのまま私に向き合って、政宗さんが頭を下げたものだから私は少しだけ慌てた。あの政宗さんが頭を下げるなんて。

「……俺は、沢山の人を斬る。…殺すんだ。天下取りの為に」
「……はい」
「赦せとは言わねぇ。赦してもらえるとも思ってねぇ。……ただ、否定だけはしないでくれ」
「政宗さん」
「俺の手は何百人斬ったかも判んねぇ…お前から見れば人殺しの手だ。本当なら、戦も知らないお前に触れる事だって出来ねぇような穢れた手だ」

掌を見つめて苦しそうに言う政宗さんを見ていたら、私まで苦しくなった。この人は私の為に心を痛めていると思うのは自惚れじゃないのかもしれない。私を見る事をしないまま、政宗さんは拳を握り締めていた。

「……違う、と思います」
「…What do you think so?」
「天下取り。それはあっちも同じです。命を賭けて戦場に立つんだから、例え斬られても…死んでも、本望だったと思います。私は戦を知らないし、女だから、政宗さん達の気持ちは判りません。でも、そう思うんです。人殺しだなんて言ったら、政宗さんが斬った人たちは、浮かばれません」
「……軽蔑しねぇのか。戦なんてない時代にいたんだ、死なんて非日常だったろ」
「しません。政宗さんは、いつか天下を取るひとです。その為に弱者を蹴落とすのは当たり前です」
「……
「私は、政宗さんが身分の分け隔てなく誰もが笑っていられるせかいを作ってくれると信じています。だから、軽蔑も否定もしません。私だけは」
「……そうか」

顔を上げた。目に入ったの瞳は強い意志を宿していた。戦なんざ知らない、平和な世界で生まれ育ったから見れば俺はただの人殺しだろうに、こいつはそう言わなかった。蹴落とすのは当たり前だと、天下を取れると、強い言葉ではっきりとそう言ったは穏やかな笑みを浮かべていた。

「帰って来てとは言いません。重荷になるのは判っています」

「でも、私はここで、貴方の帰りを待っています」
「……あぁ」

俺の返事を聞いて、はにっこりと笑って頷いた。待ってると言われちまったら帰ってこない訳に行かねぇ。こいつはいつも俺の欲しい言葉をくれて、ただ穏やかに笑っていてくれる。それが心地良いから、俺はこいつの隣にいてぇと思う。異世界にたった一人で放り込まれて、帰りたくない訳がないだろうにいつも気丈に振舞うから、こいつの確たる居場所を作ってやりてぇと思う。だから俺は刀を取る。天下を取る為に、の笑顔の為に。

「武運長久を、お祈りします」
「……俺は負けねぇよ、天下取るその日まで、な」




















盲目溺症候群



(さしての独眼竜も彼女の前では牙を抜かれてしまうらしい。)










つか新年一発目の更新がこれってどうなの私