心から大切にしたいと思った。 奥州筆頭でも伊達の当主でもない何も持たないただの男として俺を見てくれた初めての女だった 俺を産んだ実の母にすら疎まれ醜いと言われたこの右目を、正面から見据えて微笑んで 生きた証だと言ってくれた 初めて、愛しいと思ったんだ、という女を、心から。 そうだ、あの時だって 初めてあいつが俺を起こしに来たあの朝だって、あいつは 『政宗さん朝で『見るなっ』 『……まさ、』 『ッGet out!』 『…、…政宗さん、私、きれいだと思います。その右目』 『………Why?』 あいつは俺の眼窩に触れて、痘痕を指で撫でて 『……生きた証、なんでしょう?私は庖痘が根絶した後に生まれたから、それがどんな病気で政宗さんがどれだけ苦しかったかは判らないけど、』 ただ、微笑って 『私は醜いなんて思いません。その右目は…貴方が死の病を生き抜いた証だから』 そう言って俺を見ないように眼帯を差し出した。 何も聞かず、ガキみてぇに哭く俺の頭を撫でながら微笑って、俺が一番欲しかった言葉をくれた。 ただ、その手が優しくて暖かだったのはよく覚えてる 「……」 いつまでも在るもんだと、思ってた。 の存在も、温もりも、俺が望む限りいつまでも。 が未来から来たって忘れた訳じゃない、ただ俺が望むならいつまでだってこの青葉城に、俺の隣に居るもんだと信じてた。 『政宗さーん!見て下さい自分で着れたんです!』 『…oh…随分Crazyな格好だな、なんだそりゃ』 『んー、浴衣ですか?』 『Foolish girl…そりゃ単のうちの一枚だ。判んだろ?十二単とかのな、あれだ。着物の一部だ』 『え゛』 『お前の感覚で言や、下着一枚で歩き回ってるようなモンだ。You See?』 『ッしーげーざーねー!』 『…oh…成実の仕業かよ』 馬鹿で元気でいつも笑ってて、そのくせ何処か脆くて儚げで。 成実があいつは輝夜姫みてぇだっつってたがそれも的を得てると思ったのもつい最近。 が来て1年近く、やっと奥州に慣れて来た矢先だって言うのに。 「……何処行っちまいやがったんだ、テメェは。俺の気持ちも聞かねぇで消えるなんざ赦さねぇからな……」 この俺が初めて心から惚れた女。 今の関係を壊したくなくて告げずにいたらこのザマだ。 情けねぇ。 『………政宗さ…っうぅ…』 『……んな顔すんな。ちっと掠っただけだ、たいした事ねぇよ』 『っだって成実さんが政宗さんが斬られたっていうしそれにいつもなら先頭走ってくる政宗さんがなんでかいないしもしかしたら大怪我したのかなって思って心配で!』 『成実か…あの野郎…』 『………っみぎ…うで、大丈夫なんですか…?』 『Don't worry…普通に動くし、痛みもねぇ。掠り傷だっつったろーが。泣くな、Idiot』 『……っよかったぁ……』 戦に出てんだ、総大将だからって無傷で済む事なんて殆どねぇ。 それに、俺だって命を取るし傷を負わせる。 自分が傷付く事も、討たれる事も覚悟はしてる。 ただ、は戦のない平和な時代にいたんだから俺の覚悟はもちろん戦を知らなくて当たり前で、だからこんな哀しくて苦しい顔で俺を心配して泣いてくれて 『…ほかの、みなさんは…』 『……大事はねぇ。なんなら後で道場に顔出してやれ、お前の心配し通しだったからな』 『……わたし、の?』 『あぁ。姐さんは泣かさねぇ、筆頭は俺らが守るんだってよ』 『……なんで?』 『(…とことん鈍いな相変わらず)…さぁな。テメェで聞けよ』 筆頭、姐さんとの祝言はいつっすか 戦勝祝いの宴の時だったか、(は戦に出ていない私が居るのは不相応だと言って訊かずいなかったが)そう聞かれて不覚にも盛大に酒を吹いてしまった俺を見て成実も小十郎も苦笑いをしながら部下を追い払い、まだ告白すらしてないのに気が早いよね等と言う成実を殴ったのはいつだったか、確かについ最近だったはずなのに。 思い出せないどころか、がいないというただそれだけでこんなに、 「なんで、こんなに一刻が長い…」 が隣にいる ただそれだけで時を惜しむ間もなく1日が終わりまた新しい1日が始まる。 それががいたここ奥州青葉城の日常だった。 「…俺の想いも聞かずに消えてんじゃねぇよ…俺の天下見届けんだろ…」 『……、か?』 『以外に誰がいるんですか』 『…化粧したにしろ…変わりすぎじゃねぇか?』 『現代の化粧品ですから…せっかく政宗さんに綺麗な着物頂いたからどうせならと思って』 『…っ(こいつは…天然にも程があるだろ!?なんだこのさも俺の為にしましたみてぇな言い方は!)』 『?政宗さん?』 『……馬子にも衣装、だな』 『うわ酷っ!自分で見立てたくせに!留袖で良いって言ったのに勝手に袿に仕立てさせたの政宗さんでしょ!?』 真っ白な肌に白粉を叩いて、薄い桃色の紅を引いて 黒目がちな目は薄い灰色でくるりと縁取られていて心なしかいつもより大きく見えた。 もとから長かった睫毛にも何か塗ったのか、艶やかに黒く輝きゆるやかに天を仰ぐ。 頬紅まで叩いているのか、陽に透けるような真白い肌にわずかに赤みがさしていてそれがまたよく似合っていた。 『もーいいです喜多さんに見せてきま『wait』なんですか』 『Ah…何だ、似合ってんぜ。』 『………!有り難う御座います…』 『流石は俺だな。あとはその貧相なBustがもーちょっとデカくな『ッ悪かったな貧乳で!』…ouch…』 こんな微妙な関係でもよかった。 反応を見ればも少なからず俺を想ってくれているんだと判ったから、だから無理に関係を進展させたいとは思わなかった。 この関係を壊したくなかったから、言わなかった…いや、言えなかった。 「……輝夜姫、か……馬鹿馬鹿しい。何処にも行かせねぇ…行かせてたまるかよ。あいつの居場所は俺の隣だ…」 なら、俺がすべき事は一つだけ を捜し出て連れ戻す事 俺だけじゃねぇ、この城の皆がそれを願ってんだ。 「俺が正室に望む女は……お前だけだ…」 だから早く還ってこい。 お前の居場所はここだけなんだ。 龍が抱く宝珠は、逆鱗は ………だけだ。 |
鮟鱇の愛
(融け合ってしまえたら)
(別れの苦しみは)
(なくなる、のに)
鮟鱇の雄は体長が雌の50分の1しかなく
光のない深海でつがいを見つける事は難しい。
鮟鱇の雄は雌を見つけると身体に張り付き交尾をし
受精を済ませるとそのまま雌の身体に取り込まれてひとつになる
次の世代を紡ぐ雌の為、餌の少ない深海で雄は雌の糧となる
らしいです
離れる事なく身も心も魂までもひとつでいられたらいいのに
と思うのは狂気の沙汰でしょうか