黒の教団。
新入りエクソシスト、。
これが現在の私の肩書き。
そしてこの世界で生きていく為の、私の立場になった。
灰色メランコリア 03
「って日本人なんだ」
「うん。コムイさんから聞いたんだけど、日本人のエクソシストいるんだってね?」
「神田の事ね……神田は気難しいから…大変かも」
「同じ事言ってる…」
教団へ来て3日目。現在はリナリーと食堂で少し遅めの朝食を取っていた。
神田はどうやら任務へ出ているらしく、あと1週間は戻らないとの事。
任務へはまだ向かう事はなく、リナリーに教団の案内をしてもらったり、一人で修練したりして過ごしていた。
が身に纏うのはエクソシストの団服ではあったが、リナリーのものとは多少デザインが異なる。
上着は足首まであるコートだが、腰から下--つまりは足の部分--は動きやすいように開いている。
リナリーのスカートとは違い、ホットパンツにオーバーニーのブーツカバー。
左足にはイノセンスを仕舞うためのホルダーが着いている。
「……ねぇ、のイノセンス、後で見せてほしいな」
「別にいいよ?リナリーのも見せてね」
「ええ、もちろん。じゃあ食べたら修練場に行きましょう」
その後は話をしながらゆっくりと食事を続けた。
リナリーもも、歳が近く女性のエクソシストの友人が出来た事が嬉しいらしい。
出会って3日目とは思えない程親しい様子だった。
そんな二人を、周りの人間はほほえましく見守るのだった。
***
「……じゃあ、発動するね」
「うん。」
「……イノセンス、発動」
は左足につけたホルダーから杖を取り出し、発動する。
光に包まれたと思えばその杖は巨大化し、の背に並ぶほどの大きさになった。
その杖は先日までとは違い、銀色に輝き先端には紅い宝石が輝いている。
科学班の面々がにあわせ改良したのだ。
「それがのイノセンス?」
「うん。【賢者の知恵(クレヴァー・ハイブロウ)】っていうの」
「すごいね…キレイな杖……」
「見てて。
…地の底より生まれし灼熱の火炎よ、全てを灰と帰す矢に成りて我が杖に宿れ!!!!ファイアーヴォルト!!!!」
杖の先から放たれた無数の炎の矢が置かれた木箱を一瞬にして灰と帰した。
リナリーはその光景にただ言葉を失い、風に舞うの金糸のような髪を見つめていた。
「……凄い……」
「…こんな感じ。これだけじゃないんだけどね」
「そうなの?」
「うん。まだ色々あるよ。」
「へぇー……ねぇ、全部見せてっていったら怒る?」
「んー別に怒らないよ。私も修練したいと思ってたし。」
リナリーは関心したようにのイノセンスを見つめていた。
はこの際だから修練もかねて、とリナリーに今現在自分が使える限りの能力を見せる事にした。
「……高き山を吹き抜ける風よ…大気を凍て付かす風よ…我が杖に宿りて氷と成せ!!!!アイシクルヴォルト!!!!!!」
杖の先を白い空気が取り巻いたかと思えば、空気中の水分を一瞬にして凍らせ、大きな氷の矢が出来上がる。
それは一瞬の内に杖から放たれ、壁を凍りつかせた。
凍りついた壁の周辺だけ氷点下の空気が取り囲んだ。
「のイノセンスって…それ、第一開放、よね?」
「…?うん、多分ね」
「それなのにこんな能力があるなんて…凄いね」
「そうなのかな?私、まだよく判らないや」
そう返しながら、は杖を降ろした。
本当は詠唱など必要ないが、あったほうがそれらしいしかっこいい、というのがの弁である。
彼女がRPGやファンタジーといった小説を好むからであろう。
「ちょっと疲れたなー…休憩しよっか」
「うん」
リナリーとは二人並んで修練室の端へ腰を降ろす。
のイノセンスはすでに元の姿に戻り、左足へ仕舞われていた。
30分程話し込んで時計に目を遣れば既に午後6時を回っていた。
「ありゃ、リナリー、もうすぐ夕飯の時間だよ」
「え?あ、本当だわ…案外長い時間此処にいたね」
「だね…そういえばおなかすいたかも。食堂行こっか。リナリーのは今度見せて」
「そうね。」
早く行かないと席がなくなる、というに急かされ、何時もより少しばかり早足で二人は食堂へ向かった。
***
「ハロー、ジェリーちゃん」
「あらん!ちゃんにリナリーちゃんじゃないの!」
「おなかすいちゃって…ライスに味噌スープと鮭の塩焼きと納豆と玄米茶、お願いできる?」
「勿論よ!リナリーちゃんは?」
「私はBセットでいいわ」
「はぁーい。すぐできるから待っててねん!」
ジェリーはそう言うと素早く厨房へ姿を消した。
とリナリーは食事を待つ間会話をしていた。
それを暖かい目で見守るのは食堂にいる教団の男性陣達だ。
日本人でありながら金糸の髪を持つキレイな子が入団した、と。
物珍しさも手伝って、の噂は男所帯と言って差し支えない黒の教団に忽ちの内に浸透したのだ。
の髪が金色なのは彼女が髪を脱色しているからなのだが、この時代ではそういう習慣はまずないだろう。
透ける様な白い肌に琥珀色の瞳、そして金糸の髪。どこから見ても日本人とは程遠い外見だった。
の生きていた21世紀ではさほど珍しくはなかったのだが。
「おっまたせー!」
「ありがと、ジェリーちゃん」
「ごゆっくりんv」
語尾にハートマークをつけて食事を手渡すジェリーに礼を言い、二人は向かい合ってテーブルに着いた。
それから暫く--30分程--かけて二人は食事を終え、紅茶片手に雑談していた所に声がかけられた。
「おーいたいた。ー!室長が呼んでんぞー!!!!」
「リーバーさんだ…任務かなぁ?」
「そうじゃない?、初任務だね」
「うん。ごめんね、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
にっこりと笑って手を振るリナリーにも笑顔で答え、大きな声で返事をしながらリーバーに駆け寄った。
用事はやはり任務だったようで、は少し早足で室長室へと向かっていった。
***
「済まないね、ちゃん」
「いえいえ。で、任務ですか?」
相変わらず書類が散乱する室長室。は赤いベルベット地のソファに腰掛けていた。
目の前には資料片手のコムイの姿。
…もしかして一人で任務とか?
は最初からそれは勘弁して欲しいと願っていた。
「うん。ちょっとね、ドイツの方へ行って欲しいんだよね」
「ドイツですか。」
「西ドイツの小さな街でね、最近ちょっとおかしな事があるらしいんだ」
「おかしな事?」
「古い城があるらしいんだけどね。その城をイバラが取り囲んで誰も近づけないらしい」
「イバラ…?」
「そう。そして何故か、イバラに隠れたその城は朽ちる事もなく存在してるってさ」
まるで眠り姫みたいだ、とは思った。
それなら城の奥にはお姫様が眠っているのだろうか、と。
「そりゃ怪しいですねぇ」
「だろう?だから、キミと神田くんとで行って欲しいんだ」
「……神田と?」
「うん」
「…会った事ないんですけど」
「そうだね」
そうだね、ってオイ。
は心の中で恨みを込めてツッコミを入れた。
「……で、その肝心の神田は」
「もうすぐ来るよ。その間これ読んでてね」
仲良く出来るか、よりも斬られないようにしないと。
はそう硬く決心した。
何せあのとっつきにくい性格だけは頂けない。自分とはほぼ正反対だからだ。
そう考えながら、コムイから手渡された資料に目を通していく。
確かに、童話で読んだ眠り姫の物語と酷似している部分がいくつかあった。
もしかしてこの話を聞いて書いたのかな、なんて突拍子もない事を考えてみたり。
「……やぁ、来たね神田くん」
ドアの開く音と、コムイのその声での意識は現実へと引き戻される。
顔を上げてみれば視界の端にコートが映る。
横を向くと、相変わらず仏頂面の神田がいた。
「……コイツとか?」
「そう。3日前に入ったちゃん。キミと同じ日本人で19歳」
「……です。よろしく」
「…フン」
差し出した手は見事に無視された。
一発シバいてやろうかとも思ったが、下手したら六幻を発動されかねない勢いだったのでやめておいた。
神田はを睨むような視線で見たあと、口を開いた。
「…足手まといになりやがったら容赦なく見捨てんぞ」
「………はーい」
そんな言い方はないだろう。やっぱり私はコイツとは合わない!
は拳を握り締め、心の中でそう言うのだった。
もちろん拒否権等あるわけもなく、結局はその日の内に神田と数人の探索部隊とドイツへ向かう事になるのだった。
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タイムラインは原作よりも少し前。
2007/04/07 カルア