私がずっとずっと願っていた事。
平凡すぎる日常から離れて冒険してみたいと願ってた。

まさかこんな形で叶うなんて思っていなくて。

少しばかり強引すぎるけど。














灰色メランコリア Ver.P-Type 02
















「………ここ、は?」


光が消えた。
開いた瞳孔が段々と戻り、の視界は次第にクリアになる。
目の前に飛び込んできたのは、うろ覚えではあったが確かにあの漫画の中に存在していた場所。


「……黒の、教団?」


漫画で見るよりも更にリアルで物々しい雰囲気のその建物。
おそらくはゲートの近くであろう場所にはいた。
きょろきょろと辺りを見回せば、監視のゴーレムが何百匹も飛び交っている。

(きっと見つかってるんだろうな…)

そう思いながら、服に着いていた土埃を落とす。
ふと、胸元の辺りに違和感を感じた。


「……なんだろう」


着ていた上着を脱いでみれば、丁度鎖骨の真ん中辺りに皮膚にめり込んだ十字が見える。
なるほど、これが私のイノセンスか。
は納得すると、ゆっくりと薄暗い森の中を歩き始めた。


「…道なりに行けばゲート、かな?」


進む道は暗く、生き物の気配はない。ただ静まり返った中に、ゴーレムの羽音だけが響く。
はその雰囲気に気おされ気味になりながら、足を進めていった。
暫く--5分程だろうか--歩くと、目の前が急に開けた。
そして目の前には、教団の巨大な門。そして、門番。

(アレスティーナ=ドロエ=ギョナサン=P=ルーボーソン=ギア=アマデウス5号…だっけか?)

なんて長い名前なんだ、と思いつつもは門番に向かって口を開く。
記憶力だけは無駄にいいのだ、昔から。一度読んだものは大体記憶してしまう、ある種特異体質に近い記憶力を持っていた。
きっとこの映像も、アレンの時と同じく司令室で皆が見ているに違いないだろうと思いながら。


「すいませーん。と申しますー。教団幹部の方に謁見したいのですが」

「部外者は入れないぜー」

「ですから、私、イノセンスの適合者らしいんです。幹部の方に謁見を」





--- 一方その頃、司令室。 ---





「誰っすかね、このコ」

「適合者、って言ってるけどねー…信憑性に欠けるよねぇ」

「……見せてもらえば話は早いんじゃないっすか」

「そうだね……おーい、そこのキミー」


コーヒー片手のコムイとリーバーが、モニターに映し出される映像を見て会話していた。
ゴーレムから送られてくる無数の映像はの姿を八方から映し出し、その姿を司令室へ送っていた。
は門の上部から聞こえる声に顔を上げた。


『そこのキミー』

「はい」

『イノセンスの適合者だって?』

「…らしいです。お疑いですか?」

『まぁ、ボクら今戦争中だからね…疑ってかかるのは女性に失礼だとは思うけど』

「判りました。私のイノセンス、皆さんにお見せします」


はそう言うと羽織っていた上着を脱いだ。
キャミソールの襟元の上に、皮膚に埋め込まれた薄紫の十字架が映し出される。
それは紛れもない神の化身、彼女がエクソシストであるその証。


「……イノセンス、発動」


のその声に呼応するように、胸元の十字架が淡く光る。
それは次第にの身体を包み込み、の両手は刀剣のような物に姿を変えた。


「……ラジカル・トランス…“クレイモア”!」


はそのまま、目の前の大木を斬り付ける。
その大木は一瞬にして丸太となり、それはさらに細かく切り分けられて薪となった。
は満足げに薪を眺めると、安堵の溜息を吐いて発動を解除した。


『……なるほど。その胸元の十字がキミのイノセンスだね。すばらしい力だ。』

「…信用して頂けましたか?」

『うん。一応、門番から検査を受けてね。規則だから』

「はい」

「レントゲン検査!!アクマか人間か判別!!!!」


ピコ、と音がして、門番の両目から光が放たれる。
はその光に包まれたが、予測していたのでさほど動じる事もなく、その検査を受け入れた。


「人間!!!!セェエエエェェエエフ!!!!!!!!」

『…はい、有難う。入っていいよー』


コムイのその声の直後、大きな音を立てて扉が開いた。
は扉を見据え、大きく一歩を踏み出した。

















***

















「ようこそ黒の教団へ。ボクはコムイ=リー。科学班室長です」

「はじめまして。いきなりの訪問、失礼しました。と申します」

「まぁまぁ、そんなに畏まらなくてもいいよー。キミは日本人だね?」

「はい」


門を抜け、大きなエントランスホールにはいた。
目の前にはコムイ。そして周りには警備兵の姿。


「それでね、此処に来た適合者には最初に検査を受けてもらう事になってるんだ。
 まぁ元帥の中の誰に連れられて来た訳でもない、紹介状すらなしに来た適合者は君が初めてだけどね〜」

「(ヘブラスカか…)はい」

「最初はちょっとびっくりするかもしれないけど。まぁとにかくボクについてきて」


コムイに続いて歩く。教団の城内は思っていたよりずっと広く、把握しきれない内は迷子になりそうだとは思った。
いくつかの回廊を抜け、吹き抜けを下り、ヘブラスカのいる広間へと向かう。
その間に、人々から色々な思惑の篭った視線を投げられ、は少し不機嫌だったが。


「キミと同じ日本人のエクソシストもいるんだけどねー…」

「(神田の事、かな?)…そうなんですか?」

「うん。でも気難しいコでねー……」

「はぁ…大変そうですね……」


は『自分がこれから起こる事をそれなりに知っている』と悟られない様に返答していた。
それがバレてしまえば後々面倒だと思ったし、何より疑われる事がイヤだったからだ。
キールに取り立てて注意はされなかったものの、面倒は避けておくに越した事はない。


「さ、乗って」

「はい」


そして吹き抜けに設置されたエレベーターにコムイと乗り込むと、エレベーターは下降を始めた。
この下にヘブラスカがいるんだ、とは漠然と考え、流れていく景色をただ見つめた。
暫くして、小さな音を立ててエレベーターが止まる。
そこは薄暗く、辺りの景色はかすんで見えない。


『それは神のイノセンス……全知全能の力なり』


上の方から声が聞こえたと思えば、灯される光。
5つの椅子と、それに座る人影が5つ。


『また一つ…我らは神を手に入れた…』


「ボクらのボス、大元帥の方々だよ、ちゃん」


コムイはを見つめながら言う。
はただ目の前に広がる非現実的な光景についていけずにいた。
漫画で読むのと、実際に目にするのでは大違いだったからだ。


「……大、元帥……」

「さぁ、キミの価値をあの方々にお見せするんだ」

「……はい……」


コムイの優しいその声に深呼吸し、精神統一を図ると、小さくつぶやいた。


「…イノセンス、発動…」


の胸元が淡く光ると同時に、ヘブラスカの手がを捉える。


「うっわ?!」

『イ、イノ…セ、ンス……』

「(いやぁぁあああなんか体ん中這い回ってるぅぅぅうううー!)」


最初こそ驚いたものの、ヘブラスカだと確信したは結局身を任せた。

 
『…68…75…88…94%!』

「へぇ。すごいじゃないかー。いきなり94%だなんて!」

『これが…今のお前と武器とのシンクロ率の…最高値のようだな…』

「そんな、に……?ってゆか、びっくらこいた…っ」


はヘブラスカから開放され、コムイの隣へ降ろされる。
ヘブラスカはを見据えたまま続けた。


…我らはお前を待っていた……預言の、通り…お前は我らの、前、に、現れた……
 お前に待ち受けるのは…黒白の運命…お前、は…いずれ世界の天秤となるだろう…』

「黒白…(ノアか、教団か……って事?)」

「……さて、少し難しい話をするけどいいかな?」

「…はい」


が思案を巡らせていた所をコムイの声が引き戻す。
そうしてコムイの口から、イノセンスについて語られた。
その間にもは一字一句違わぬ台詞に妙に関心したように聞き入り、時折ヘブラスカを見上げていた。


「ま、そんなところだ。以上で長い説明は終わり」


そう言いながら差し出されたコムイの手をは取る。


「一緒に世界のために頑張りましょう。一銭にもならないけどね」

「………はい」

「ようこそ、黒の教団へ」




















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一応細かい性格は迷走ヒロインとは変えてあるつもりでしたが
実際見てみるとあまり大差ないっていうダメっぷり



2007/04/04 
2007/04/30 カルア